ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


ベルリンガイドブック
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本書は2009年10月発行「素顔のベルリン」の増補改訂版です。2013年に改めて新規取材を行い、データを更新。レストランやショッピング、コラムなどのページも増量し、より充実したガイドブックに生まれ変わりました。

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地球の歩き方シリーズ初、待望のベルリンガイドブック誕生!比類なき歴史を抱えつつ、明日へ向かって日々進化し続ける首都ベルリン。「ドイツで最もドイツらしくない」といわれるこの町の知られざる魅力を、現地在住著者が12のエリアにわけて徹底紹介。


現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

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カテゴリ:ベルリン音楽日記( 149 )

ヤノフスキ&ベルリン放送響のベートーヴェン・チクルス

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●昨シーズンの後半に聴いたコンサートの中で、とりわけ強烈な印象が刻まれたのが、マレク・ヤノフスキ指揮ベルリン放送響によるベートーヴェンの交響曲チクルス。5月に5公演が集中して行われ、そのうちの3公演を聴きましたが、ベートーヴェンの音楽に浸れる喜びを心から味わわせてくれるものでした。もう大分時間が経ってしまいましたが、新しいシーズンが始まる前に振り返っておこうと思います。

●プログラムのラインナップを見ても、彼らの強いこだわりが感じられる。まず、演奏頻度が高い第9は敢えて外し(ドイツでは年末に第9を演奏する習慣はないが、このコンビは毎年大晦日に演奏している)、その代わりにというべきか、「ミサ・ソレムニス」を。交響曲のカップリングも、第1番から順番に並べて演奏するのではなく、ヤノフスキの言を借りると「古典的な第1番と革命的なエロイカで一組に。まだ古典的だけれども、より攻撃的なところも併せ持つ第2番は、舞踏的な衝動を備えた第7と。しばしば過小評価されるが、『古典的』という意味では完璧に磨き上げられている第4番は、第5番とのカップリングがふさわしい。リリックな〈田園〉は、ハイドン風という意味で第8と『結婚』」という具合に、明確な意図が感じられるものだった。

●とはいえ、コンセプトが先歩きすることなく、肝心の演奏がまた素晴らしい。ラトル&ベルリン・フィルやバレンボイム&シュッターツカペレに比べると、職人気質のヤノフスキの存在は確かにやや地味ではあるが、その充実ぶりは勝るとも劣らず、RSBとの関係はいままさに円熟期にあるのではないだろうか。〈英雄〉、〈運命〉、第7番は、すべてコントラバスが8本の16型で、しかも倍管という近年ではほとんど見られなくなった大編成。これだけでもすごい迫力だったが、彼の棒にオーケストラは鋭敏に反応し(その姿は献身的でさえあった)、大きな音楽的なうねりと奥行き感が生まれる。〈運命〉の第1楽章は、フェルマータまで取っ払ってしまわれたかのような音楽の推進力が圧倒的。2楽章では、一転して巧みなバランス感覚を見せて、音楽の構造が鮮やかに浮かび上がってくる。ベートーヴェンの音楽に不可欠な構築感があり、かつそこから絶えずはみ出そうとするパトス、即興性とのせめぎ合いが、実にスリリングだった。久々にドイツらしいオーケストラでベートーヴェンを聴いたなという感じ。

●このチクルスでもうひとつユニークだったのが、弦楽四重奏というベートーヴェンのもうひとつ重要なジャンルと組み合わせたことだろう。それぞれの交響曲とゆかりの深い作品が選ばれ、ハーゲン、アルテミスといった名門の他、Apollon-Musagète-Quartett、Belcea-Quartettといった若手の団体がゲストに呼ばれた。最後の日を例に取ると、ベト2の後で休憩、ベト7の後でさらに休憩が入り舞台が片付けられ、カルテットが登場という流れ。フィルハーモニーでフル編成のオケを聴いた後に、同じ場所で最小編成のカルテットを聴くというのも初めてだった。でも、これがまたよかった。ベト7のフィナーレで聴衆が熱狂して、お祭りのような雰囲気になった後、少し間を置いてから、ハーゲンカルテットが登場し、《弦楽四重奏曲 第14番 嬰ハ短調》作品131のあの祈りに似た深いフーガを奏で始める。ホールの空気がまたがらっと変わる。そしてまた、ベト7とは違うベートーヴェンの晩年の心象風景のようなものが、目の前に立ち上がってくる。その時すでに2時間を優に超えていたが、誰もが引き込まれて聴き入っていた。最高のチクルスだった。


So 09.05.2010 | 20:00 Uhr
Philharmonie Berlin, Großer Saal
MAREK JANOWSKI
Apollon-Musagète-Quartett | Streichquartett
Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin
Beethoven-Zyklus III
Ludwig van Beethoven
Sinfonie Nr. 4 B-Dur op. 60
Ludwig van Beethoven
Sinfonie Nr. 5 c-Moll op. 67
Ludwig van Beethoven
Streichquartett c-Moll op. 18 Nr. 4

So 23.05.2010 | 20:00 Uhr
Philharmonie Berlin, Großer Saal
MAREK JANOWSKI
Artemis-Quartett | Streichquartett
Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin
Beethoven-Zyklus V
Ludwig van Beethoven
Sinfonie Nr. 1 C-Dur op. 21
Ludwig van Beethoven
Sinfonie Nr. 3 Es-Dur op. 55 ("Sinfonia eroica")
Ludwig van Beethoven
Streichquartett f-Moll op. 95

Mo 24.05.2010 | 11:00 Uhr
Philharmonie Berlin, Großer Saal
MAREK JANOWSKI
Hagen-Quartett | Streichquartett
Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin
Beethoven-Zyklus VI
Ludwig van Beethoven
Sinfonie Nr. 2 D-Dur op. 36
Ludwig van Beethoven
Sinfonie Nr. 7 A-Dur op. 92
Ludwig van Beethoven
Streichquartett cis-Moll op. 131

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by berlinHbf | 2010-09-01 17:13 | ベルリン音楽日記 | Comments(2)

よみがえった1913年録音のニキシュの「運命」

昨年3月、ベルリンで行われた貴志康一の生誕100周年の行事で、東京大学先端科学技術研究センターの村岡輝雄先生と知り合う機会があった。村岡先生は音響工学を専門とされ、武蔵工業大学教授を退任後、現在は東大の研究センターで古いSPレコードのように損傷した音楽のコンピューターによる修復の研究をされている方。

村岡先生と知り合ってからというもの、ご自身が製作されたGHAノイズ・リダクションによる復刻CDを送ってくださるようになった。毎回楽しませていただいているのだが、このラインナップがなかなか興味深い。例えば、アルトゥーロ・ニキシュ指揮ベルリン・フィルのベートーヴェン「運命」(1913年録音)、ジネット・ヌヴーのシベリウスとブラームスのヴァイオリン協奏曲(オケはフィルハーモニア管)、貴志康一がベルリン・フィルを相手に自作を指揮した貴重な録音(1935年)、他にもカザルス、シゲティといった具合だ。

特にニキシュの「運命」は、第一次世界大戦の1年前という時期の録音にも関わらず、かなり普通に鑑賞できるレベルの音質に修復されていた。聴き進むうちに、100年前の「骨董品」に触れているという意識が薄れ、音楽そのものに引き込まれてしまった。ベルリン・フィルのコンサートマスターだった安永徹さんも、この録音の音楽的・歴史的価値は高く評価されたそうだ。

先月末、ロンドンでの学会の帰りにベルリンに寄られた村岡先生と、久々にお会いした。ベルリン・フィルの資料室長のヘルゲ・グルーネヴァルトさんと昼食をご一緒し、ベルリン・フィルの地下のアーカイブまで見せていただいたのは、予想外のことで楽しかった。

ブルーノ・ワルターがBBCのオーケストラを指揮したモーツァルトの交響曲の録音は、CDを贈ったBBCから「ぜひ今の楽団員にも聞かせたい」という熱い返事が届いたそうだし、グルーネヴァルトさんも村岡先生の研究に十分興味を持ってくれたようだ。とはいえ、日本でもドイツでも、モノラルの時代の古い録音は、どうしても一般的な関心を集めるのが難しい。「後世のために音楽の世界遺産を作りたい」という村岡先生の熱心な活動を少しでも応援できればと、ここで紹介させていただくことにした。

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by berlinHbf | 2010-06-27 18:15 | ベルリン音楽日記 | Comments(2)

週末のコンサートから

シーズン終盤のこの時期、毎年ベルリンでは魅力的な公演が続きます。先週末、久々に3日連続でコンサートを聴いたので、その時の印象を簡潔にまとめてみたいと思います。

金曜日は、ギーレン指揮コンツェルトハウス管の演奏会。久々に聴くギーレン。指揮台に向かう足取りは以前よりも(?)ゆっくりだが、ゆったりとした大きな弧を描く独特の指揮ぶりは健在だった。ギーレンは、(リハーサル時)オーケストラには厳しいと何度か聞いたことがあるが、冒頭のシューマンの序曲ではオケ(特に年配のコンマスのリード)とどこかかみ合っていない印象を受けた。でも、後半のシューマンの交響曲第2番では、ふっくらとしながらも透徹した美しさが随所で聴かれ、特に3楽章は絶品といえるものだった。来シーズン、ギーレンはベートーヴェンの「運命」(11月)、マーラーの「巨人」(5月)をメインにしたプログラムを振る予定。

Konzerthausorchester Berlin
Michael Gielen
Melanie Diener, Sopran

Robert Schumann: Ouvertüre zu Schillers Trauerspiel "Die Braut von Messina" op. 100
Alban Berg: "Sieben frühe Lieder" für Sopran und Orchester
Robert Schumann: Sinfonie Nr. 2 C-Dur op. 61

土曜日は、ベルリン・フィルの定期。指揮者はキタエンコ。前半のグリエールのホルン協奏曲は、ソロを務めたラデク・バボラクの独断場。グリエールはプロコフィエフとハチャトリアンの先生だった人だそう。民族色豊かで、親しみやすい音楽である一方、オーケストレーションはかなり派手(シンバルまで登場)。バボラクのホルンは、究極のレガートと呼ぶにふさわしいもので、ただただ感嘆した。かなり長い曲だったのに、ベルリン・フィルのメンバーを背後にさらにアンコールを3曲も吹くなんて、よほどの自信と心臓がなければできないことだろう。メインのスクリャービンの交響曲第3番《神聖なる詩》は、ベルリン・フィルが取り上げるのは87年のムーティ以来だそう。これが予想以上に素晴らしかった。オーケストラに自身の解釈を隅々まで浸透させ、ややもすればキッチュに陥りがちなこの難曲を、格調高く描き上げたキタエンコの手腕はお見事。ベルリン・フィルが客演指揮者に拍手を送る光景を久々に見た。ちなみに、このコンサートを一緒に聴いたうちのお1人は、本職がお坊さんという方で、《神聖なる詩》が生まれるきっかけとなったブラヴァツキーという人の話をしてくださったのだが、それがとても興味深かった。この作品は、思想的背景を抜きにしては語れそうにない。

Berliner Philharmoniker
Dmitrij Kitajenko, Dirigent
Radek Baborak, Horn

Béla Bartók: Bilder aus Ungarn Sz 97
Reinhold Glière: Hornkonzert B-Dur op. 91
Alexander Skrjabin: Symphonie Nr. 3 c-Moll op. 43 »Le divin poème«

日曜日は、「ヤナーチェクと1920年代」というタイトルの、ベルリン放送響の管楽アンサンブルによる演奏会を聴く。会場がちょっと変わっていて、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の在外公館の中にある小さなホール。ガラス張りのモダンな建物で、舞台の向こうに見えるライヒスタークのドームがきれいだった。リゲティの短い曲を挟みながら、メデラッケ、スメターチェク、パヴェル・ハース、ヤナーチェクと年代をさかのぼる順に演奏していったのだが、やはりヤナーチェクの音楽が断然いい。曲想が雄大で、どこか懐かしい気持ちにもさせてくれる。この管楽6重奏曲「青春」という曲は、学生時代に仲間と演奏したことがあって、感慨もひとしおだった。他には、スメターチェクの昆虫の生き様を描いた曲がユニーク。演奏はどちらかというと「堅実さ」を強く感じさせるものだったが、Sung Kwon Youという韓国人の若手のファゴット奏者の腕はずば抜けていた。最近ソロのオーディションに受かったばかりというまだ20代前半の奏者なのだが、今後が楽しみだ。

Kurt Mederacke: Böhmische Suite für Bläserquintett op. 43
Vacláv Smetácek: "Aus dem Leben der Insekten" - Bläserquintett op. 3
Pavel Haas: Bläserquintett op. 10
György Ligeti: Zehn Stücke für Bläserquintett (daraus: 4 Stücke)
Leos Janácek: "Mladi" - Suite für Bläsersextett

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by berlinHbf | 2010-06-02 16:29 | ベルリン音楽日記 | Comments(2)

佐渡裕指揮コンツェルトハウス管弦楽団で3つの交響曲

●先週末、佐渡裕さん指揮コンツェルトハウス管弦楽団の定期演奏会を聴いた。冒頭のハイドンの交響曲第6番「朝」は、弦楽器による冒頭からすがすがしい気持ちにさせてくれる好演。ソロが多いこの曲、中でもコンミスの日下紗矢子さんの演奏は卓越していた。装飾音を自由に加えた、光に満ち溢れたフルート、3楽章中間部で意表を突くように出現するコンバス、ファゴット、ヴィオラも魅せてくれ、指揮する佐渡さんからも笑みがこぼれる。続くルトスワフスキの交響曲第3番は、一転して巨大編成。同じ交響曲でも両者の間には200年の差があり、冒頭の金管楽器の暴力的な咆哮から何と世界の違うことか。さまざまな要素の散りばめられた難曲だが、最後まで飽きずに聴くことができた。確か、作曲者指揮ベルリン・フィルによる優れた録音が残っているはず。そちらも聴いてみたくなった。

●メインはベートーヴェンの交響曲第2番。佐渡さんらしいダイナミックでパワフルな演奏だったけれど、同時にこの曲の難しさも感じた。佐渡さんが自身のブログで、ベートーヴェンの交響曲を作り上げていく過程をドミノ倒しに例えている。緊密に積み上げてきたものが一瞬にして倒れてゆくのを目撃する快感と高揚感こそがベートーヴェンの醍醐味なのだとしたら、この日の演奏は何かが足りない感じもした。ベートーヴェンの2番というのは結構な難曲なのではないだろうか。最初のハイドンとは明らかに世界が違うし、かといって同じベートーヴェンの5番や7番とアプローチでというわけにもいかない。この曲の理想的な演奏というのはどういうものなのだろう。ともあれ、全体的にはいい演奏会。コンツェルトハウスのお客さんの顔ぶれを見ていると、もっと若い聴衆が来てくれたらなと思う。

●一部メディアの報道によると、佐渡さんは来シーズン、ベルリン・フィルにデビューするそうで、本当に素晴らしいことだ(10月にはベルリン・ドイツ響にも客演)。来シーズンは他にも、大野和士さんがベルリン放送響(来年2月)、大植英次さんがコンツェルトハウス管(来年5月)のそれぞれ定期演奏会を振るほか、山田和樹さんがファミリー向けのコンサート(?)でベルリン放送響にデビューするなど(来年2月)、日本人指揮者の活躍が目立つ。うれしいことだし、後に続く人もさらに出てきてほしい。

Konzerthausorchester Berlin
Yutaka Sado

Joseph Haydn: Sinfonie Nr. 6 D-Dur Hob I:6 ("Le Matin")
Witold Lutoslawski: Sinfonie Nr. 3
Ludwig van Beethoven: Sinfonie Nr. 2 D-Dur op. 36

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by berlinHbf | 2010-05-07 23:57 | ベルリン音楽日記 | Comments(0)

101回目の「サロメ」

●StaatsoperのR.シュトラウス「サロメ」(クプファー演出)は、1998年3月に私が初めてベルリンに来た時に観た演目。その時指揮をしたのが一昨年亡くなったホルスト・シュタインだったので、余計に懐かしい。今シーズンもプログラムに入っていて、アイスランドの火山噴火から2日後の公演を観た。

●開演前にアナウンス。予定の指揮者がスペインからベルリンに飛べないため、Julien Salemkourに急遽交代。歌手の中にはロシアからバスと鉄道を乗り継いで来た人もいたと紹介され、お客さんからは大きな拍手が。何はともあれ、この状況下で公演が実現しただけでもありがたかった。

●舞台の3分の1が見えない8ユーロの席だったけど、充実した公演だった。何といってもタイトルロールのアンゲラ・デノケ!以前観た「バラの騎士」のマルシャリン役の気品ある佇まいが印象に残っているが、役柄的に全くの正反対という以上のサロメも歌うとは。サロメに必要な妖艶さをしっかり出しながら、知的な部分でのコントロールもしっかり取れていて、オケとのバランスも最高だった。「7枚のヴェールの踊り」では本当に脱いでしまい、その体当たりの演技にもびっくり。

●シュターツオーパーは来シーズンから大規模な改修工事に入ってしまうので、この古い演出の「サロメ」を観るのも最後かもしれない(プログラムによると、1979年6月のプレミエからこの日が101回目の公演)。改修後は、10ユーロ以下でオペラが観られる3.Rangの天井桟敷はどうなるのだろう。歩く度にギイギイ鳴る木の床とか、劇場内の独特のにおいとか、空調がないため聴衆の熱気でむんむんしてくるあの空気の悪さとか、劇場がきれいになる代わりにこういったものが失われるのを、少し寂しく思う。

Musikalische Leitung: Julien Salemkour
Inszenierung: Harry Kupfer
Bühnenbild und Kostüme: Wilfried Werz

Herodes: Reiner Goldberg
Herodias: Renate Behle
Salome: Angela Denoke
Jochanaan: James Rutherford
Narraboth: Marcel Reijans
Page: Andrea Bönig

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by berlinHbf | 2010-04-24 20:50 | ベルリン音楽日記 | Comments(4)

モザイク・カルテット演奏会

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●古楽器の弦楽四重奏団のモザイク・カルテットを初めて聴いたのはいつだったか。シューベルトの『ロザムンデ』やハイドンの太陽四重奏曲(第32番)などの繊細にして典雅な響きにすっかり魅了されてしまった。モーツァルトやプレイエルなど、フリードリヒ・ヴィルヘルム2世に捧げらた作品ばかりを演奏したコンサートも、まるで音楽を献呈された側に立ったような、ぜいたくなひと時だった。

●今回は、前半にまずベートーヴェンの作品18の4。冒頭から悲壮感に満ちていて、作品18の中ではある種一番ベートーヴェンらしいこの曲をモザイク・カルテットが弾くと、どこかひんやりとした肌触りで、4つの声部が絶妙のバランス感覚を保ちながら浮かび上がってくる。ただ、こういう繊細な演奏を聴くには、いかんせんホールのキャパが大き過ぎる気も。私はむしろ、Alexandre Pierre François Boëlyという名前も作品も初めて耳にした人の作品の方が、印象に残った。ベートーヴェンより25年遅く生まれたフランス人で、がっちりとした構成、朗々としたメロディーに、ハイドンやベートーヴェンの影響がはっきり感じられる音楽だった。

●メインのシューマンの弦楽四重奏曲第3番。これは文句なしに至福の時間。ふわっと語りかけるように始まる冒頭から、ロマンの香りをたっぷり味わわせてくれた。ビブラートは控えめで、大げさな歌い回しは皆無なのだが、1つ1つの楽器の響きが本当に美しくて、涙が出そうになる。3楽章は、特にヴィオラの内声部の支えが素晴らしい。フィナーレは、舞踏風の軽やかな主題と階段を一段一段上っていくような別の主題とがぶつかりあって、華麗に幕を閉じた。先日のエマーソンもそうだったけど、弦楽四重奏のいいコンサートを聴くと、本当に幸せな気分になるなあ。

●明日から数日間、晩年のシューマンが住んでいたデュッセルドルフ方面に行ってきます。それでは。

Quatuor Mosaïques:
Erich Höbarth Violine
Andrea Bischof Violine
Anita Mitterer Viola
Christophe Coin Violoncello

Ludwig van Beethoven
Streichquartett Nr. 4 c-Moll op. 18 Nr. 4
Alexandre Pierre François Boëly
Streichquartett a-Moll op. 27
Robert Schumann
Streichquartett Nr. 3 A-Dur op. 41 Nr. 3

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by berlinHbf | 2010-04-09 23:57 | ベルリン音楽日記 | Comments(2)

ヤナーチェクと私(2) - シンフォニエッタ! -

高校3年生の時、初めて聞いたヤナーチェクの音楽に再び出会ったのは、それから5年後のことだった。大学3年生だった1998年、当時所属していた早稲田大学のオーケストラが、秋期演奏会でヤナーチェクの「シンフォニエッタ」を取り上げることになったのである。このオケは、普段はベートーヴェンやブラームスなどの所謂「ドイツもの」を取り上げることが多かったので、チェコ音楽をやるにしても、「スメタナでもドヴォルザークでもなく、なぜよりによってヤナーチェク?」と私だけでなく他の団員も思ったに違いない。なにせ金管楽器のファンファーレ隊だけで10人ぐらい必要とする曲だ。アマチュアはもちろん、プロのオケでさえ取り上げることはめったにない。それを敢えてワセダの普通の学生が挑もうとしたのは、金管にメンバーが揃っていたのと、翌年ドイツへの演奏旅行を控えていて、その候補曲としての目論見があったからと思われる。

「シンフォニエッタ」はレコード芸術誌の「名曲300選」の類いには入っていたから、存在自体は知っていたけれど、聞く機会はそれまでなかった。自分は乗り番でないし(演奏は4年生中心だった)、当初はあまり興味が持てなかったのだが、練習を聞いているうちにじわじわと惹かれていった気がする。

まず金管のファンファーレがかっこいい。木管楽器のソロも多く、特殊楽器も大活躍する。楽譜を見ればわかるが、変拍子が出てくるなど音楽の構造は相当凝っているのに、聞こえてくるものは素朴で、みずみずしく、作り物めいた感じがまったくしない。同じヤナーチェクでも、後に出会うオペラや弦楽四重奏の世界と違って、ここではどこを取ってもある種「健全な」空気が流れている気がする。冒頭のメロディーを始め東洋的な響きには親しみを感じるし、日本の刑事ドラマの主題歌に使われそうなテーマがいきなり出てきたりして、真面目なのにどこかユーモラス。

「シンフォニエッタ」でもう1つ思い出すことがある。このオケでは夏合宿の最終日に、パートごとに宴会芸を披露するのが恒例となっているのだが(今でもそうなのかな?)、ファゴットパートがこの曲をネタに芸をやったのだった。先輩に1人卓越したコメディアンがいて、彼が振り付けなどを考えたらしい。内容はもうほとんど忘れてしまったが、これが抱腹絶倒で、今でもCDを聞いていてある楽節に差し掛かると、あの時を思い出してニヤリとしてしまう。

そんなこともあって、晩年のヤナーチェクが体育協会のために書いたこの音楽は、襟を正して聞くというよりも、愉快でどこか憎めない友達のような存在になっていた。それは、「シンフォニー」ではなく、「シンフォニエッタ」という響きにも表れている。そして翌年、今度は自分たちがこの曲を演奏する番になった。

(つづく)

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by berlinHbf | 2010-03-27 23:57 | ベルリン音楽日記 | Comments(2)

ヤナーチェクと私(1) – 最初の出会い -

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例えば、バッハやベートーヴェンの音楽を生まれて初めて聞いたのはいつだっただろうかと振り返ってみても、「いつの間にか出会っていた」としか言いようがない(モーツァルトは少し別なのだが、それはまたいつか)。だが、レオシュ・ヤナーチェクの音楽に関して言えば、間違いなくあれが最初の出会いだったと振り返れる日がある。

1993年の初夏、ベルリン・フィルのコンサートマスターだった安永徹さんが夫人のピアニスト市野あゆみさんと横須賀市の文化会館でデュオリサイタルを開いた。当時高校3年生だった私は、両親と聞きに出かけた。チケットは確か一律1000円だったが、それでもお客さんの入りは6割ぐらいと記憶している。

プログラムは、ベートーヴェン、ヤナーチェク、フランクのヴァイオリンソナタ。いずれも初めて聞く曲だった。ベートーヴェン(確か『春』だったと思う)は、当時すでにベルリン・フィルの大黒柱として活躍されていた安永さんの美しいヴァイオリンの音色にうっとりとさせられた。フランクのヴァイオリンソナタは、第2楽章の情熱的な歌い回しと派手な終わり方がかっこよく、確かプログラムに「曲はここで終わりではないので、うっかり拍手してしまわないように」などと地元のお客さん向けに書かれていた(笑)。それはともかく、フランクのソナタは今でも大好きな音楽で、うまいヴァイオリニストのリサイタルの演目にこの曲が並ぶと、食指が動く。

で、ヤナーチェクなのだが、とにかく不思議な音楽だなあと思った。リズムも節回しも、ベートーヴェンともフランクとも全然違う。(抽象的な言い方だけれど)聞いている間の時間の流れ方さえもが違うように感じられた。中でも印象に残ったのが4楽章。ピアノの旋律をさえぎるかのように何度も出てくるヴァイオリンの鋭い動機は、強く心に刻まれた。全体的に強い緊張感がみなぎっている一方、冒頭のヴァイオリンのむせび泣くようなメロディーなど、どこか東洋的で、なつかしい気持ちにもなった。

初めて聞いたヤナーチェクの音楽、好きとも嫌いとも思わなかったが、私の中で何かが残ったのは確か。とはいえ、それからCDを買ってじっくり聞いてみるようなこともなく、年月が過ぎていった。ヤナーチェクの音楽に再び出会ったのは、その5年後だった。

(つづく)

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by berlinHbf | 2010-03-07 13:51 | ベルリン音楽日記 | Comments(11)

ベルリンのエマーソン弦楽四重奏団

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来週の月曜日(8日)、アメリカのエマーソン弦楽四重奏団が、フィルハーモニーの室内楽ホールでコンサートを開きます(詳細はこちら)。私にとって特別な音楽であるヤナーチェクの2つの弦楽四重奏曲と、ドヴォルザークの《いとすぎ》というタイトルの12曲から成る小品(こちらはまだ未聴)を前後に挿むというプログラムで、半年前から楽しみにしていたコンサートなのです。

で、昨日、イエロー・ラウンジの ニュースレターが届いたのですが、エマーソンはこちらにも登場するのですね。こちらも8日夜なので、おそらくフィルハーモニーのコンサートの後に直行するはず。場所は、クロースター通りのWMF Clubというクラブ。どういうところなんでしょう。こちらでもヤナーチェクを演奏すると思われます。できることなら両方聴きたい!

ちなみに、その前日の11時からは、エマーソン弦楽四重奏団の創設メンバーであるEugene Druckerが、ベルリナー・アンサンブルのホワイエで「Wintersonate」という自作の小説の朗読会をするのだとか。彼の父親(おそらくドイツ人)はナチス政権下の1938年アメリカに亡命しており、その体験をもとにした小説のようです。とにかくいろいろな意味で、来週のコンサートが楽しみになってきました。

関連記事:
クラブで聴くクラシック - Yellow Lounge - (2008-03-01)

Yellow Lounge im WMF
Mo | 08.03.2010

Live Act 1: Horenstein Ensemble
Live Act 2: Emerson String Quartet
DJs: Canisius & Sick Girls
VJs:Pfadfinderei

WMF Club Berlin
Klosterstrasse 44
10179 Berlin
Eintritt: 6 €

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by berlinHbf | 2010-03-03 17:43 | ベルリン音楽日記 | Comments(10)

ベルリン・フィルのシベリウス&ベートーヴェンチクルス1

ベルリン・フィルによるシベリウス(交響曲)&ベートーヴェン(ピアノ協奏曲)チクルスの初日を聴いてきました。バラエティーに富んだ、大変充実した内容だったと思います。

冒頭の大オーケストラによるリゲティの「atmosphères」。キーンと張り詰めたピアニッシュモと背筋がぞくっとするようなクレッシェンド、不思議な和音がうごめき合い、何というか生命が存在しない異次元の空間に連れ去られるかのような雰囲気の曲でした。

それだけに、リゲティの後にベートーヴェンのピアノ協奏曲が鳴り響くと、「ああ、人間の世界に帰ってきたなあ」という何ともほっとした気分にさせられました。それだけ音楽があたたかく、血が通っている。ソロを弾いた内田光子さんがこちらのインタビューでベートーヴェンについて語っていた言葉に強く惹かれました。
しかし、それ以上に記憶に留めて置かなければならないのは、彼がまったく独立した唯一無二の存在だったということです。より正確に言うと、最も偉大であらゆる人間よりも強い存在だったと言えます。彼の音楽は、あたかも宇宙のすべてを体験したかのような、大きな広がりを持っています。彼の精神的な深さ、人間としての強さ、絶望的な状況のなかでも光を見出すことのできるオプティミズム、地獄のなかにあって天国を見ることができる能力! そうした力、大きなヴィジョンは、他のどの作曲家にも見出すことはできません。私はこの偉大な音楽を聴衆の前で弾かせてもらうと、常に幸せな気持ちになります。そして感謝の気持ちで一杯になるのです
内田さんのこの言葉が嘘でないのは、作曲家の精神が乗り移ったかのような弾きぶりに感じられます。確かな造形感と音にみなぎる気品は、もはや偉大な芸術家のそれで、特に2楽章での、弱音の美しさを極めたオケとピアノとのやり取りには陶然とさせられました。終演後のお客さんの反応は文字通り熱狂的といえるもので、一方の内田さんは、頭が足に付くのではという(笑)深々としたお辞儀で応えていました。ベートーヴェンのピアノ協奏曲は、個人的には第3番が一番好きなので、来週のチクルスもできたら聴きたいところです。

後半のリゲティ『死の秘儀』なる曲が始まると、今度は舞台がいきなり場末の怪しげな盛り場に移ったかのよう。これはオペラ「ル・グラン・マカーブル」の3つのアリアを編纂した作品で、コロラトゥーラのソプラノが超絶技巧とカクカクした独特の振り付けで歌い(まことに達者!)、演じまくり、ラトルや団員もちょっかいを出すように参加します。その息もつかせぬスピード感が圧巻でした。

最後に16型の大編成でシベリウスの交響曲第1番。こちらはうってかわってエスプレッシーボが利いた豪快な演奏。今まで少し敬遠していましたが、この第1番、じっくり聴くと本当に魅力的な音楽ですね。今回樫本さんがコンマスに座っていた弦楽器のうねりはすばらしく、牧歌的なホルンとか、木管の美しいソロの数々、特に妖精が動き回るようなフルートのパッセージにシベリウスらしさを感じました。時折チャイコフスキーを思わせるロマン派の影響が濃い音楽が、繊細さを極めた後期の世界にどう変貌していくのか、このチクルスで一望できるのが楽しみです(特に5〜7番を一夜で演奏する5月の最終回!)。ちなみに、第3番は今回ベルリン・フィルでは初演だとか。

Berliner Philharmoniker
Sir Simon Rattle Dirigent
Barbara Hannigan Sopran
Mitsuko Uchida Klavier

György Ligeti
atmosphères
Ludwig van Beethoven
Klavierkonzert Nr. 1 C-Dur op. 15
György Ligeti
Mysteries of the Macabre (Fassung für Koloratursopran und Orchester)
Jean Sibelius
Symphonie Nr. 1 e-Moll op. 39

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by berlinHbf | 2010-02-06 19:27 | ベルリン音楽日記 | Comments(4)

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