ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


ベルリンガイドブック
「素顔のベルリン」増補改訂版
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(Amazon、全国各書店にて発売中)

本書は2009年10月発行「素顔のベルリン」の増補改訂版です。2013年に改めて新規取材を行い、データを更新。レストランやショッピング、コラムなどのページも増量し、より充実したガイドブックに生まれ変わりました。

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¥1,575
ダイヤモンド社
(2009年発売)

地球の歩き方シリーズ初、待望のベルリンガイドブック誕生!比類なき歴史を抱えつつ、明日へ向かって日々進化し続ける首都ベルリン。「ドイツで最もドイツらしくない」といわれるこの町の知られざる魅力を、現地在住著者が12のエリアにわけて徹底紹介。


現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

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山根寿代さんのこと(2) - 祖父山根正次 -

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山根正次は、医師山根孝中(松下村塾門下生)の二男として1857年萩城下東郊の香川津に生まれた。孝中はかの松下村塾に入門し、吉田松陰に師事した人物である。正次は、藩の医学校で蘭学を修め,萩中学校でドイツ人教師ラインホルト・ヒレル(Reinhold Hiller)についてドイツ語を学んだ(おそらく今なら「ヒラー」と表記するところだろう)。日本が開国してまだ間もない頃、長州の萩にドイツ人教師がいたことに驚くが、明治初期に各藩は競うようにして外国人教師を高給で招聘したのだという。
明治初頭に毛利家がベルリンのヒレルを呼んで来たんです。それで、祖父たちが14、5歳のときからドイツ語を習ったわけですが、もう日本語とおんなじね。父がドイツ語で書いたもののコピーを、知り合いのドイツ語の先生にお見せして訳してくださったことがあるのですが、もう完璧なドイツ語だったそうです。明治時代の人にとって、留学というのは国を背負っていますね。意気込みからして違う。物事、やる気があるとないとでは大違いでしょう。そんな祖父なのに子孫は全然ダメ(笑)。
当時の萩については、寿代さんはこう語る。
私は幼年期に10ヶ月ほど関西に住んだことがありますが、それっきり東京です。でも、もともとは山口の萩なので、子供の頃は夏休みなどで何度か遊びに行きました。昨年、私が差し上げた祖父の遺品を集めて、萩の博物館で展覧会が行われたのです。そこで学芸員の方と知り合ったり、そこからどんどん話が広がったりして、もうなんか、死ぬにも死ねないのですけどね(笑)。
萩は空襲に遭っていないから、(古いものが)全部残っているんです。300メートルぐらいの山があり、そこから街が一望できます。川が2本流れていて、その中州が萩の街で、向こうはもう海。そこに立ってみて、とっても不思議に思ったんです。この狭いところに、明治維新のとき、なんであれだけいろいろな人が出たのかと。層が厚いでしょう。一番優秀だった久坂玄随とかは22、3歳で亡くなっているのに、その後の何流かが大臣とか総理大臣になっていますよね。まあ、よしあしもあったでしょうけれど。
そういうわけで、去年は何度も萩に行って、急に萩づいちゃいました(笑)。
山根正次はその後,東大医学部を卒業し,明治15年(1882)長崎医学校一等教諭として赴任。同18, 19年に長崎でコレラが大流行した時に伝染病予防委員に任ぜられ、コレラの病理解剖に取り組み、同20年(1887)、新学説によるコレラの実地研究書としては日本初の『虎列刺病汎論(コレラびょうはんろん)』を刊行。ドイツに留学したのは、1887年10月のことだった。

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長崎行きを命じられたときの、月給百弐拾円と書かれた辞令も残っている。
私が驚いたのは、明治15年の120円というのがどれだけの価値があったのかということ。すごいお金だったと思いますよ。
コレラの猛威がどれだけすごかったか。明治18年から19年にかけて全国で10万人以上が死亡したという事実だけでも、そのすさまじさの一端が伝わってくる。人々は感染するのを恐れて家にこもり、長崎の街は死んだように静まり返ったという。

1884年に、すでにロベルト・コッホがコレラ菌を発見していたが、治療法はまだ確立されていなかった。さらに、外国と不平等条約を結んでいた当時の日本には、検疫に関する法律もまだ存在しなかった(開港検疫法の制定は1899年になってから)。古くからの海外との接点ゆえ、しばしば伝染病の発信地となった長崎で、コレラ患者に直に接し、さらに病理解剖まで行う山根の仕事は、まさに命懸けといっていいものだった。
私の父は明治17年に長崎で生れて居ります。ペストが猛威を振るった時期ですから、祖父を送り出す時は毎日「水盃」の気持ちだったと話してくれたことを納得しました。日々、戦々恐々だったことでしょう。
このときの経験から山根は長崎に上水道を整備する重要性を訴え続け、大きな議論を経た後、明治21年に工事が始まった。近代的な水道が建設されたのは、横浜や函館などに次いで、日本では最初期のことだった。

(つづく)

参考:
萩博ブログ:山根正次と高杉晋作   
長崎新聞@コラム:コレラと水道
山崎光夫「森鴎外と山根正次」(大塚薬報。2008年3月)

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by berlinHbf | 2008-08-23 15:07 | ベルリンの人々 | Comments(3)
Commented by noriko-happylog at 2008-08-23 23:26
こんばんは、1年くらい前からよく見てはいたのですが初めてコメントします。山根正次さんのお話、とても興味深く読ませていただきました。私は長崎に住んでいるのですが、初めて山根さんのことを知りました。当時水道の建設に至ったのも山根さんのお陰だったのですね。寿代さんも素晴らしい方ですね!

私の出身は森鴎外の故郷津和野町でして、その縁でベルリンとの交流が続いており、95年、姉妹都市調印のときにベルリンへ初めて行きました。もちろん鴎外記念館へも行き、かつて鴎外がベルリンで暮らした部屋にいるということがなんだか不思議に思えました。

長くなりましたが、今まで知らなかったベルリンを見ることができ毎回楽しみながら見させて頂いています。また遊びにきますね!
Commented by berlinHbf at 2008-08-24 20:09
>noriko-happylogさん
はじめまして。山根正次ゆかりの長崎の方からのコメント、うれしく拝読しました。しかも、ご出身が津和野とはまた奇遇ですね。ベルリンとは姉妹都市の関係にあるのですか!今日アップした鴎外直筆の手紙もじっくり味わっていただけたらと思います。また遊びに来てくださいね。
Commented by 浦辺登 at 2017-01-17 10:25 x
山根正次のサインが「玄洋社社史編纂芳名帳」にあります。大正5年か6年頃に毛筆で書いたものです。
お知らせまで。

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