ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


ベルリンガイドブック
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現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

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映画「エーミールと探偵たち」(1931)

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しばらく前にドイツのアマゾンで購入した映画「エーミールと探偵たち」のDVDを観ました。原作はエーリヒ・ケストナーの数ある児童文学作品の中でも一番よく知られ、日本語訳で読んだことのある方も多いと思うので、ストーリーの説明はここでは省きます。ドイツでは過去3回映画化されており(1931年、1954年、2001年)、今回購入したDVDは1931年版と1954年版が1枚に収められているのがミソです。戦前と戦後のベルリンの街並みを比較できるのも興味深そうで、私はまず1931年バージョンから観ました。

ケストナーが、自伝的な要素を交えてこの作品を書いたのが1929年なので、映画はその直後に撮られたということになります(ロケが行われたのは31年の夏だとか)。まずはやはり戦前のベルリンの映像がふんだんに出てくるのが楽しい。

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(www.gedaechtniskirche-berlin.deより)
自分の寝ているスキにお金を奪ったグルントアイス氏を追いかけるため、予想外に動物園駅で降りトラムに飛び乗るエーミール。駅を出てすぐ左手に見えるカイザー・ヴィルヘルム教会は、当然のことながらまだ完全な姿をたたえています。そこからクーダムを抜けて南に向かうわけですが、街には「黄金の20年代」の最後の輝きが漂っており、不安げなエーミールの心境とは裏腹に、観ている側としてはあの時代に突然放り込まれたようで、わくわくしてきます。いとこのポニーとおばあさんが待っているフリードリヒ・シュトラーセの駅は一瞬映るだけですが、駅の外観は今とほとんど変わっていません(ドイツの駅は改札がありませんが、昔は切符を回収する改札員がいたことに新鮮な驚きを感じたりも)。グルントアイス氏が朝食を取るカフェ"Café Josty"は、ケストナーが1929年の夏、ここのテラスに腰掛けて「エーミールと探偵たち」を書いたという伝説的なカフェです。69分というコンパクトな中に、原作のよさはかなりよく描かれているように思いました。

ところで、昨日1月30日は、1933年の同日にヒトラーがドイツで政権を獲得してからちょうど75年という節目で、新聞などでも大きく取り上げられていました。2週間ほど前にはシュピーゲル誌も、「なぜヒトラーに権力を与えてしまったのか」という特集を組んでおり、これはドイツ史が今後もずっと向き合い、検証しなければならないテーマなのかもしれません。1931年版の映画が撮られたのはドイツがまさに暗黒の時代に突入する直前ですが、少なくとも映像を見ている限りではその気配は何も感じられません。悪を憎む精神とでもいうか、「1人1人の力は小さなものだけれど、仲間と力を合わせれば何かが起こるかもしれないよ!」というケストナーのメッセージは今でも強烈に伝わってきます。

ナチスの台頭を目の当たりにし、自分の著作は焚書の対象にされ、それでも敢えてドイツに留まった彼の心境はいかほどのものだったか。近々1954年バージョンを観たら、また感想を書きたいと思います。

参考:
天使の降りた場所(9) - 戦前のポツダム広場を歩く -

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by berlinHbf | 2008-01-31 14:56 | ベルリンを「観る」 | Comments(14)
Commented by しゅり at 2008-02-01 08:06 x
こんにてゃ、マサトさん!
「エーミールと探偵たち」はベルリンが舞台!ということで
読んでいて風景が目に浮かぶという個人的に楽しい本だという事を
抜きにしても、ケストナー文学の質の高さと
ケストナーその人の志がよく感じれる本だと思います。
大好きです。

さて、30日に偶然シュピーゲルのサイトを見ていました。
建物の窓が開き、大勢の兵士と見出しを読んで
何のことかと思っていましたが、30日はヒトラーが政権を
取った日だったのですね。

>1人1人の力は小さなものだけれど、仲間と力を合わせれば何かが起こるかもしれないよ!

本当にそうですよね。
ケストナーはナチスを非難し弾圧を受けたり
焚書されたりしましたが
温かな雰囲気と人間への信頼が行間から感じられ
柔らかさの中に強さが見えてきます。
時代背景を考えるとケストナーの作品一つ一つが
もっと味わい深くなりますね。
ケストナーは全作読んでみたいと思っています。
このDVDも面白そう!
観てみたいものです。
Commented by shio at 2008-02-01 10:07 x
同じ原作の2つの作品が納められたDVD!見てみたいです(^_^)日本でもレンタルあるかしら?
ちょっと前にケストナーの「飛ぶ教室」を読んで、作品の素晴らしさに感動しました。
こんなステキな小説を書く人が、1930年代のベルリンで、こんなにも人間への信頼を奪われずに生きたのかぁ~!ということにも。
「飛ぶ教室」はちょうど1933年の作品でした。
1933年の、前と後の作品も読んでみたいと思っています。
でもまずは、「エーミールと探偵たち」のフィルムにおさめられたベルリンを観たいなぁ☆
Commented by akberlin at 2008-02-01 22:08
おお、ゲデヒトニス・キルヒェに尖塔が!今は広島の原爆ドームのように
平和を願うシンボルとしてクーダムにたたずむこの教会ですが、義兄が
氏子(?)で甥や姪の洗礼式があったり、イースターの礼拝にも何回か
行った思い出深い教会です。エゴン・アイアマンの青い海の底を思わせる礼拝堂も懐かしいなぁ。

カフェ・ヨスティは今でもシューネベルクにありますね。何度か立ち寄った
ことがあります。あの近辺の語学学校に通っていた時期があったので
懐かしいところです。そういえば一時、鳴り物入りで登場してすぐにつぶ
れてしまった「大人のためのディスコ(クラブ)」、ゴヤはその後、どうなったのかな・・・。
Commented by kon'no at 2008-02-02 09:35 x
ケストナーの本も、Staatsoperの前の広場で焼かれましたからね。文化の終焉...
Commented by berlinHbf at 2008-02-03 02:23
>しゅりさん
コメントありがとうございます!
しゅりさんのケストナーへの思いがとてもストレートに伝わってきました。私も彼の作品はもっとたくさん読んでみたいと思っています(ドイツ語でなら、いくらでも読める環境にいるわけですが)。
Commented by berlinHbf at 2008-02-03 02:28
>shioさん
このDVDはshioさんにもぜひ見ていただきたいですが、日本で手に入るのはおそらく2001年版だけでしょうね。とりあえず1954年版を観たら、また感想を書きますね。「飛ぶ教室」は実はまだ読んだことがないのですよ。今度読まねば。
Commented by berlinHbf at 2008-02-03 02:32
>akberlinさん
記念教会は今、修復のための資金集めを必死になってやっていますね。

>カフェ・ヨスティは今でもシューネベルクにありますね。
ソニーセンターの中のは知っていますが、シェーネベルクにもあるのですか!それは知りませんでした。やはり歴史あるカフェなのでしょうか?ノレンドルフ広場は「エーミール」にも登場しますよね(31年の映画には出てきませんでしたが)。「ゴヤ」、確かにあれからどうなったのでしょう?最近さっぱり名前を聞きません。
Commented by berlinHbf at 2008-02-03 02:38
>kon'noさん
ケストナーの作品は、まさにあの事件の時に焼かれたのですか。ベーベル広場の警告碑に書かれたハイネの言葉が思い出されます。
Commented by akberlin at 2008-02-04 21:41
マサトさん、大変、失礼しました。Cafe JostyはSchoenebergではありませんでした。(他のカフェと混同していました。)カフェ・ヨスティーがエミールと探偵たちに出てくるのはケストナー自身が常連客であったからだとか?
彼の作品には自分の経験を元にしたものが多いとドレスデンのケストナー記念館を尋ねたときに職員の方が説明してくれました。
Commented by berlinHbf at 2008-02-05 23:30
>akberlinさん
>Cafe JostyはSchoenebergではありませんでした。
あ、そうでしたか。あの辺は素敵なカフェが多いですよね。私が好きなのは例えばBilderbuchというカフェです。

>ケストナー自身が常連客であったから
それはどうやら本当だったようですね。

>ドレスデンのケストナー記念館
2000年に初めてドレスデンに行ったとき、ケストナーの縁の地を訪ねたくてノイ・シュタットの方に行ったことがあります。でも、そのときは記念館はまだできていなかったんですよね。今度行くときはぜひと思っています。
Commented by akberlin at 2008-02-06 07:33
あ、Bilderbuch、私も好きなカフェです。奥が深い(本当に、奥の方に
いい席が・・・)カフェなんですよね。懐かしいなぁ。

ケストナー記念館、こぢんまりしていていいですよ。次回はぜひ。
Commented by berlinHbf at 2008-02-08 19:29
>akberlinさん
Bilderbuchの奥の部屋はいいですよね。グランドピアノなんかも置いてあったりして。あの雰囲気は好きです。
Commented by bach!! at 2008-02-28 01:33 x
昨年、テレビ(CS)で映画「飛ぶ教室」と「エーミールと探偵たち」が放送されました。「エーミール・・・」の方は見逃してしまったのですが、この記事を読んで気になりいろいろ探してみたら、近くの図書館でDVDを見つけることができました。もちろん2001年版でしたが・・・。ツォー駅やカイザーヴィルヘルム教会、テレビ塔など出てきた時、思わず身を乗り出してしまいました(笑)。

最近、急に我が家はケストナーブームです。家内は昔は自称文学少女(笑)だったらしく、ケストナーの作品の読書感想文で賞をもらったそうですが、とても懐かしがって実家の倉庫から本を探し出し、読み直しています。

映画「飛ぶ教室」(2003)もいい作品ですね。原作にはありませんでしたが、映画で描かれていたThomanerchorの子供たちの生活の様子やバッハのクリスマスオラトリオの演奏シーンは、私にはかえって良かったです!(笑)。

Commented by berlinHbf at 2008-02-29 20:31
>bach!!さん
2001年版は僕もまだ観ていないんです。ちびっ子探偵同士のやり取りは携帯電話に変っているのでしょうか(笑)。

ケストナーは私も読み続けていきたいと思っています。読みたい本がいろいろあって、なかなか手が回らないのですが・・・

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