ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


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現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

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壁とタイムカプセル

e0038811_2033269.jpg
昨日(10月3日)はドイツの統一記念日だったので、今日はそれに関連したお話をひとつ。

先週、情報誌のTipで紹介されていたある写真展に足を運んでみた。ミッテのAckerstraßeにあるGalerie Degenharttで開催されていたこの写真展は、"Als noch Osten war"(まだ東だった頃)というテーマゆえに、ぜひ見ておきたいと思ったのだ。

中に入ると、オーナーのデーゲンハルトさんがこの写真展について丁寧に説明してくれた。

1955年生まれの写真家ウド・ヘッセ(Udo Hesse)は、80年代初頭、写真の勉強のため西ベルリンにやって来た。まだ20代後半だった1981年から83年にかけて、彼は1日ビザでよく東ベルリンを訪れ、ミッテ、プレンツラウアーベルク、ケペニックなどの東の生活風景を撮って回った。その数は20回以上にも及んだという。

1982年の3月、ヘッセは東ベルリンの国境地帯で、「東ベルリン市民の視線で」西ベルリン側の観察台に向かってシャッターを切った。そのとき、東の国境警備隊に見つかり、捕らえられて尋問を受けるはめになる。幸い彼はその日のうちに釈放されたらしいが、フィルムは取り上げられてしまった。

2007年の今年、シュタージの資料を調べていたら、DDRから要注意人物扱いされていたヘッセの書類が見つかり、あのとき取られたフィルムもその中に入っていたという。

e0038811_2034935.jpg
フィルムはヘッセのもとに返された。そして、まさに「タイムカプセルのように」、撮影から25年後に現像した写真がこの1枚である。こういう特異な経緯で返って来た写真を含めて、ヘッセが当時東ベルリンで撮影した写真を紹介するのが今回の展覧会というわけだ。

この話を聞いて、なぜか私はあまり他人事には思えなかった。このブログを通じて東ベルリン体験をされた方々の生々しい話をこれまで何度も伺っていたのと、もし自分があの時代西ベルリンにいたら、ひょっとしたらヘッセさんのように東に写真を撮りに行ったんじゃないかという勝手な親近感を感じたからかもしれない。

展覧会はもう終わってしまったが、同名の写真集で彼の写真を見ることができる。まだ「ほんの」25年前の東ベルリンの素顔に出会えることだろう。最近なにかとちやほやされることが多いプレンツラウアーベルクも、この写真集を介した後だと、また違う街の表情が見えてくるかもしれない。

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by berlinHbf | 2007-10-04 18:51 | ベルリンを「読む」 | Comments(15)
Commented by Til at 2007-10-05 16:02 x
>撮影から25年後に現像した写真
まさにタイムカプセルですね。
そのときに感じとったものが、25年後のどう感じるのか?
25年前には、どう感じたのか?
とても興味深いですね。
Commented by Takora at 2007-10-05 17:00 x
 僕が’88年と’89年に東ベルリンを訪ねた際、
住宅街で多くのベトナム人を見かけました。
 そして’96年にロケでベトナムを訪ねた際、
東ドイツで映画撮影の修行をしてきたベトナム人の映画カメラマンが、そのロケの期間中、監視役としてロケ隊に同行してきました。
ところがこの監視役の方、我がロケ隊がカメラ設置後に
ベトナムのお役人から撮影ストップをかけられ困っていた際、
目と指先で”いいから今のうちにカメラを回してしまえ!”と合図をくれ、
お陰で欲しかったカットを無事に撮る事が出来ました。
 と、今日の話題から、そんな事を想い出してしまいました。
Commented by gramophon at 2007-10-05 20:22 x
 あの頃は東の街中にも監視小屋があって国境警備隊の目が光ってましたから、なにげに西側を向けただけでも捕らえられたのでしょう。どこかからか見られてる、視線を感じるのはすごく薄気味悪かったです。
 Sバーンのフリードリヒシュトラーセ駅上に安全弁を外したまま自動小銃を構える国境警備隊にゾクッとしたものです。格好がこれまた、戦前の軍服を踏襲してたので、ナチスの時代にタイム・スリップした感じでした。
Commented by berlinHbf at 2007-10-06 07:34
>Tilさん
25年間という歳月の間には、その写真家自身にもいろいろな心の変化があったことでしょうね。現在はポートレート写真を中心に活動されているそうで、ひょっとしたらいつかお会いする機会もあるかもしれません。
Commented by berlinHbf at 2007-10-06 07:43
>Takoraさん
ベルリン住むアジア人でもっとも多いのはベトナム人だそうです。中心から外れた東の街を歩くと、急に彼らを目にする機会が増えるような気がします。しかし彼らベトナム人と接する機会はなかなかありません。彼らがここでどういう生活を送っているのか、書いてくださったエピソードを読んで少し興味が湧きました。
Commented by berlinHbf at 2007-10-06 07:50
>gramophonさん
常にどこかで誰かに見張られているという意識は、それは気持ちのいいものではないでしょう。あの駅で自動小銃を構える警備隊を想像するのは、今となってはなかなか容易ではありません。 ナチス時代の軍服を踏襲していたというのも驚きです。
Commented by la_vera_storia at 2007-10-10 20:04 x
東側から壁を撮影するという行為、私の場合正確に言えば東側から壁越しに西側を撮影する行為でしたが、自慢ではありませんが実は私も行いましたが、幸運なことに一度も見つかったことがありません。これには場所を選ぶ必要があるのですが、意外なことにすばらしく撮れたのはライプツィヒ広場近くのVossstr.が当時はOtto-Grotewohlstr.(現在のWilhelmstr.通り)から突き出るように西側方向に入り込んでいたあたりでした。この2つの通りの角、このあたりは通る人も通る車もまったくなかったわけで、どこかで監視されていてもおかしくないはずですが、それもまったく無かったようでした。このあたりから壁越しに見えるフィルハーモニー(の屋根)...これは素晴らしいショットだったわけです。
Commented by la_vera_storia at 2007-10-10 20:05 x
東側に住んでいたベトナム人は、壁崩壊後半年くらいは西ベルリンに来てタバコ(主にマールボロ)を道に並べて売っていました。私もその頃はベルリンで彼らからよくタバコを買いました。今の記憶は定かではありませんが、西ベルリンで通常買うよりも確か4割くらいは安く買えたはずです。彼らはそういうタバコはポーランドから「免税」で持ち込んできたわけです。その後西ベルリンでは当局の取り締まりが強化され、彼らは東ベルリンに戻ってSバーンの駅前などで商売を続けていました。私は彼らを「追いかけて」、SバーンのNoeldnerplatz駅あたりまで行って買いましたね。確かそこが一番安く売っていましたから。今ではもう彼らのタバコを売る姿は旧東側といえども少なくとも駅ではまったく見ることができないはずです。
Commented by la_vera_storia at 2007-10-10 20:05 x
私の親しかったDDR出身の人は、壁崩壊以前からずいぶんとベトナム人には同情的でした。「あの人たちは狭い住居に何人も押し込められたように生活していて、家族に子供でも生まれるとそれはもう生活が大変なのでかわいそうだ。」とよく言っていました。彼らとDDRの一般の人たちとの交流はほとんどなかったようです。東ベルリンの中心から外れたややmarginalな場所の住宅に住んでいたケースが多かったわけです。
Commented by berlinHbf at 2007-10-11 07:17
>la_vera_storiaさん
この写真展に行って思い出したのは、la_vera_storiaさんから何度も伺ってきた壁の体験談でした。
あの2つの通りの角ですか。あそこからフィルハーモニーが望めたなんて、いまとなっては考えられないですね。このあたりについては次回のパノラマ写真でも少し出てきます。現在「テロのトポグラフィー」でヴィルヘルム通りの特別展というのをやっており、昨日見てきたばかりです。

東ベルリンのベトナム人のお話も興味深いです。社会学を勉強している私の知り合いが、ベルリンのベトナム人について論文を書いたそうで、機会があったら読ませてもらいたいと思っています。彼らの実態は、一般にはいまでもそうそう知られていないのではないでしょうか。
Commented by 焼きそうせいじ at 2007-10-21 01:48 x
この写真を見た途端、それが自分自身が20年前に見たアングルであることを思い出しました。場所は十中八九ベルナウアー通りです。私はまず西側の物見台から東を見ておいて、それから検問所を経由して東に入り、この場所に立ちました。東の警官が見張りをしていて、カメラを向けるなどできっこないという雰囲気でした。が、この角度からの情景は目に焼きついています。

88年ごろ、東独はこの壁の向こうの土地を西と交換(あるいはポツダム広場の三角地帯と?)して取得、物見台と慰霊碑が撤去されていました。動物園の動物のように、いつも見物されていた東側住民のストレスを考慮したんじゃないかと推測しています。
Commented by 焼そうせいじ at 2007-10-21 01:55 x
ベトナム人ですが、最近ある変化が起きています。こちらで生まれてドイツの学校に通って大きくなった、流暢なドイツ語を話す世代が、いよいよ大学に入ったりお店に立つようになりました。1989年以前は彼らは数年の滞在で帰っていったので、それ以前に生まれた子供がこちらで成長していることは稀でした。90年以降にドイツに残留した親の子供達、「二世」がいよいよ社会に出てきたわけです。これが彼らのドイツ社会への融合を促進するんじゃないかと期待していますが、どうなりますやら。
Commented by berlinHbf at 2007-10-22 07:00
>焼きそうせいじさん
リアリティーに富んだお話をありがとうございます。この物見台の場所、写真集にも載っていたのですが、確かSchwedter Str.とEberswalder Str.もしくはBernauer Str.が交差する地点だったと記憶しています。ですので、焼きそうせいじさんの記憶とほぼ100%間違いないと思います。まさかこの場所を知る方から直接コメントいただけるとは・・・しかもあの物見台の「その後」も知ることができ、興味深かったです。

ベルリンのベトナム人、なんとなくゲットー化しているイメージがあったのですが、かつてのトルコ人同様、2世が社会に出る時代になったわけですか。機会があれば直接話を聞いてみたいですが、なかなか彼らと知り合うことがないんですよね。
Commented by la_vera_storia at 2008-12-08 14:10 x
マサトさん、「名前」でリンクさせたページを開いてみて下さい。これは89年11月の東ベルリン(DDR)で発行された催物案内書(Wohin in Berlin)です。これを1ページごとに開いていただいて内容を御覧下さい。実に貴重な当時の東ベルリン情報が満載されています。ここに掲載されている施設、その他で現在まで残っているのがどれだけあるか...これは実に興味引かれる話です。たとえば35.jpgの、例のAlt-Marzahnに現在もあるMarzhner Krugは、この時代にもしっかりと掲載されていますね!
Commented by berlinHbf at 2008-12-09 21:20
>la_vera_storiaさん
毎回のことながら、よくぞこんな貴重で面白い資料をネットで見つけてこられるなと感心してしまいます(笑)。ありがとうございました。自宅でのネット接続が復旧したら、じっくり眺めてみるつもりでいます。Marzhner Krugは今度久々に立ち寄る予定があるので、楽しみですね。

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