ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


ベルリンガイドブック
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現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

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レオニダス・カヴァコスが弾くブラームス

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© Daniel Regan

しばらく音楽会から足が遠ざかっていた。先週は体調を崩したり、気持ちにやや余裕がなかったせいもある。机の上で作業しながら、好きな音楽をかけたり、よくかけているKulturradioから流れてくる音楽に耳を傾けるのももちろん楽しい。が、この数週間に聴いた音楽の記憶が吹っ飛んでしまうような2つの実演に接してしまった。記憶の新しいところから10日のベルリン・ドイツ交響楽団の演奏会から書いておきたい。

この演奏会、実はある知人が用事で行けなくなり、私にお声をかけてくださったのだった。ブロックAの前から4列目という、特にヴァイオリンのカヴァコスを聴くには最高の席だった。黒一色のスーツを着たカヴァコスと若手指揮者のダーヴィド・アフカムが登場。カヴァコスは長髪に眼鏡という出で立ちが特徴的だ。ブラームスのヴァイオリン協奏曲は、あの雄大な序章が鳴り始めたときから、心の中が充実感で満たされる思いがする。カヴァコスはオーケストラの方を向いており、表情は伺えないが、彼の内なる緊張感がじわじわ高まり、聴き手にまである種の気が伝わってくるのは、今回の特等席ならでは^^。そこへ、ヴァイオリンのソロが勢いよく切り裂く。

協奏曲の演奏で特に肝心なのは、当然ながら最初にソロが入ってくる部分だろう。ここでオケとソリストの両者がうまくかみ合い、互いを高め合う予感のようなものが生まれれば、聴き手にある一定以上の感動は約束される。その点、この夜のカヴァコスは最初の数分の技巧的なソロで、聴き手を虜にしてしまったといえるかもしれない。少なくとも私は彼の奏でる音楽にずっと釘付けの状態だった。体温のある美しい音色、左手の技術の確かさはもちろんなのだが、彼の場合、よほど弾く姿勢がいいのか(もちろんそればかりではないだろうが)、どんな箇所でも体の芯がぶれず、音楽が求心力を失うことがない。カヴァコスという人は、物事をある形の中に冷静に収めようとする面と、感情を自然な形で表に出そうとするロマンチックな側面とが、高い次元でとてもバランスよく融合しているように感じられるのだ。

長さをまったく感じさせなかった1楽章。2楽章のオーボエのメロディーを受け継いで音楽がゆっくり膨れ上がっていくところも感動的だった。フィナーレではジプシーのリズムが弾ける。冒頭のリズムが繰り返される過程で、カヴァコスはさりげなく遊びの装飾も加え、一段と血沸き肉踊る音楽となってゆく。高校生のときから好きな曲だが、ソリストとオーケストラががっぷりに組んでの、このようなゾクゾクするような時間を体験したことは今までなかった。

私がカヴァコスを初めて聴いたのは、2003年5月の彼のベルリン・フィルとのデビュー公演だった。オール・シベリウスのプログラムで、ヴァイオリン協奏曲のほか、ベルグルントが交響曲の第6と第7番を振ったのだ。録音が残っていたら、改めてじっくり聴き直したい想い出の演奏会である。私は舞台左サイドの階段の踊り場で立って聴いていたのだが、すぐ隣の貴賓席を見たら、往年のベルリン・フィルの名コンサートマスターだったシュヴァルベさんがいらした。カヴァコスの演奏を身を乗り出すように聴き入り、演奏が終わると、歓声を上げて拍手を送っていたのをよく覚えている。私自身、初めてカヴァコスを聴いたこのとき、はっと揺り動かされる瞬間が何度かあった。その後、彼はベルリン・フィルにソリストとして定期的に呼ばれるようになり、数年前はアーティスト・イン・レジデンスも務めた。日本ではまだそれほどの知名度はないようだが、現代最高のヴァイオリニストの一人なのは間違いない。古典、現代問わず、今後も聴き続けていきたい音楽家だ。

長身でなかなかハンサムな若手指揮者アフカムは、ショスタコーヴィチも好演した。もっとも、この夜私にとってはブラームスの印象が強すぎて、他がややかすんでしまった感は否めない。

DAVID AFKHAM
Leonidas Kavakos Violine
Deutsches Symphonie-Orchester Berlin


Anton Webern
Sechs Stücke für Orchester op. 6 (1928) 
Johannes Brahms
Violinkonzert D-Dur 
Dmitri Schostakowitsch
Symphonie Nr. 15 A-Dur

by berlinHbf | 2014-04-12 23:57 | ベルリン音楽日記

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