ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


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現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

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発掘の散歩術(19) -シャルロッテの夢の館  グリュンダーツァイト博物館-

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グリュンダーツァイト博物館内にある女性の部屋

比較的暖かい冬とはいえ、長時間の散策にはまだ厳しい季節。こんな時は屋内で過ごすに限る。1月のある水曜日、私の中でのとっておきの博物館に行ってみようと思い立った。それが、ベルリンの東の外れ、ヘラースドルフ地区にあるグリュンダーツァイト博物館

1870年から翌年にかけての普仏戦争に勝利したプロイセンは、フランスから膨大な賠償金を獲得し、空前の好景気に湧いた。グリュンダーツァイトとは、「泡沫会社乱立時代」などと日本語で訳される、いわばバブル期である。工業化に伴い、多くの大企業が設立されたのもこの時代で、街にはゴテゴテと装飾豊かな建物が次々に建てられた。1880年から1900年頃までの住居や家具など生活文化をコレクションしたのが、この博物館だ。

緑に囲まれた昔の農場の邸宅が博物館になっていた。受付で「日本のメディアの取材で」と言ったら、館長のモニカ・シュルツ=プッシュさんが直々に案内してくれた。ドアを開けて最初に入ったのがガルテンザールという部屋。高い天井にガス灯のシャンデリア、得もいえぬ風格の漂う掛け時計に細かい彫刻を施された美しい木の戸棚、壁には皇帝ヴィルヘルム1世の肖像画が……。アンティークの家具に特別の関心がなくても、この部屋を満たす豊かな雰囲気には誰もが感じ入るのではないだろうか。博物館といっても、展示物に説明が書かれているわけではなく、すべてが「そのまま」の状態で置かれているので、今も誰かが住んでいるかのような気配さえ感じられる。

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続く寝室では、子ども用の精巧なおままごと用キッチンに、今も昔も変わらない子どもの姿が目に浮かんで微笑ましかったし、化粧台に置かれていた直接火で熱して使うカーラーには、当時の女性の日々の苦労を想った。さらにベルリンの商人が所蔵していた調度品で満たされた書斎、ネオゴシック様式の食事室へと続く。地下に降りて行くと、ミッテのムラック通りにあった伝説的な居酒屋の内装が出現した。雰囲気たっぷりだ。

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エジソンが創案した蓄音機(おそらく1888年の改良型)

グリュンダーツァイト博物館では目だけでなく、耳をも楽しませてくれる。大きな金属の円盤をはめて鳴らすポリフォン社のディスクオルゴール、さまざまな楽器の音色を出す回転式自動楽器「オーケストリオン」、エジソンが発明した蝋管蓄音機。こういうものを1つひとつ聞かせてくれたのだが、電気テクノロジーが台頭する前に生み出されたこれらの機械からは、素朴でやさしい音が聴こえてきた。

それにしても、これだけのコレクションを一体誰がどうやって集めたのだろう。モニカさんが博物館を創設した人物、シャルロッテ・フォン・マールスドルフのことを話してくれた。「シャルロッテは男性でしたが、女性の心を持っていました」。どういうことかというと、彼は異性装者で、1990年代に出版された自伝「アイ・アム・マイ・オウン・ワイフ」が大きな反響を呼び、やがて演劇化され、世界的に知られるようになったのだそうだ。

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この博物館のコレクションは、彼が10代の頃から生涯をかけて集めたもの。時には個人から譲り受け、また時にはがらくたから集めて再び組み立てた。長い白髪にスカートのようなものをはき、首には真珠のネックレスをかけたシャルロッテは、90年代初頭まで自ら訪問客の案内をしていたそうだ。ここに寝泊まりしていた時期もあったそうで、この上なく優美な博物館の中には、いまもシャルロッテがどこかにいるような気がした。
ドイツニュースダイジェスト 2月3日)

関連記事:
(グリュンダーツァイト博物館でエジソン製の蝋管蓄音機を聞かせてもらったばかりだったので、余計感慨深いニュースでした)

鉄血宰相ビスマルクの肉声発見、初めて甦る
【ベルリン=三好範英】19世紀のドイツ統一を導いた鉄血宰相ビスマルク(1815~98年)の肉声を録音した蓄音機のロウ管が米国で発見された。
 再生された声は小さく、しわがれているが、鉄血宰相の肉声が120年余りの時を隔て、初めてよみがえった。
 2日付フランクフルターアルゲマイネ紙などによると、「肉声」が発見されたのは米ニュージャージー州で保存されている発明王エジソン(1847~1931年)の実験棟内で、木箱の中にロウ管が残っていた。
 ビスマルクの肉声録音を巡っては、エジソンの助手が1889年、蓄音機の宣伝のために万博開催中のパリを訪れた際、ドイツにも足を延ばし、同年10月に独北部ハンブルク近郊のビスマルクの自宅で録音したとの記録は残っていた。ただ、録音したロウ管の所在が不明だった。
 今回、発見されたロウ管を調べた研究者が録音内容から「ビスマルクの肉声」と断定した。録音は75秒で、74歳のビスマルクはドイツ語の歌に加え、フランス国歌なども歌っている。現存する唯一の肉声とされ、ビルト紙は「驚きの発見」と伝えた。
(2012年2月3日07時28分 読売新聞)


Information
グリュンダーツァイト博物館
Gründerzeitmuseum


東独時代の1960年、シャルロッテ・フォン・マールスドルフことローター・ベルフェルデによってオープンした博物館。このテーマではヨーロッパ最大級のコレクションを誇る。2002年にシャルロッテが死去した後は、友の会により運営されている。S5のMahlsdorf駅から62番トラムに乗り、Alt-Mahlsdorfで下車。基本はガイド付きによる見学で、 希望により英語対応も可能とのこと。

住所: Hultschiner Damm 333, 12623 Berlin
電話番号:(030)567 83 29
開館:水日10:00~18:00
URL:www.gruenderzeitmuseum.de


シャミッソー広場
Chamissoplatz


グリュンダーツァイトの生きた姿を見たいという方にお勧めしたいのが、クロイツベルクの西側シャミッソー広場周辺だ。戦争の被害を受けなかったため、1890年代に建てられた街並みがほぼそのまま残るベルリンでも希有な場所。堂々たる偉容のアパートから街灯、バルコニーの装飾まで見どころは多く、それ自体が博物館のよう。
住所:Chamissoplatz, 10965 Berlin

関連記事:
「オールド・ベルリン」が残る界隈(2) (2005-12-20)

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by berlinHbf | 2012-02-05 11:54 | ベルリン発掘(東) | Comments(4)
Commented by TM at 2012-02-09 09:31 x
米NJ州といえば正に今私がいる州です。そんなご近所に世紀をまたぐお宝が眠っていたなんて(笑)
シャルロッテさん優しそう。わくわくしながら日々を過ごしていた人のように見えますね。
Commented by berlinHbf at 2012-02-12 18:49
TMさん
エジソンの実験棟がニュージャージーにあったのは私も知りませんでした。そこにビスマルクの肉声の録音が眠っていたなんて・・・結構興奮させられたニュースでした。

私の知人は90年代初頭シャルロッテさんにガイドをしてもらったことがあるそうです。実際はどんな感じの方だったんでしょう。ちょっぴりうらやましく思いました。
Commented by 菊花 at 2012-02-13 00:49 x
グリュンダーツザイト博物館、行きたかったけれど行き損ねた場所です。
演劇「アイ・アム・マイ・オウン・ワイフ」が2010年に日本でも日本の劇団によって上演されました。この舞台を見てシャルロッテのことに興味を持ち、その年の秋にベルリン旅行した際に是非博物館に行こう!と思ったのですが、開館日と旅程の都合がつかず断念したのです。
うわー!やっぱり行きたかった!詳細情報ありがとうございます。 ベルリンを再訪する理由がまた一つ増えちゃいました。
Commented by berlinHbf at 2012-02-21 18:58
菊花さん
コメントありがとうございます。「アイ・アム・マイ・オウン・ワイフ」を日本でご覧になったとは!私も観てみたかったです。この博物館は東のかなり郊外にあることや、週2回のみのオープンなので、旅行者には不利な面はありますが、本当に楽しかったです。博物館の方も親切でした。次回ぜひ訪問されてみてくださいね。

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