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ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


by berlinHbf

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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


ベルリンガイドブック
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本書は2009年10月発行「素顔のベルリン」の増補改訂版です。2013年に改めて新規取材を行い、データを更新。レストランやショッピング、コラムなどのページも増量し、より充実したガイドブックに生まれ変わりました。

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現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

ベルリン更新情報
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ウクライナ紀行(3) リヴィウ 光と影

ウクライナ紀行(3) リヴィウ 光と影_e0038811_19352979.jpg
(前回の続き)
リヴィウの町の郊外にあるLychakivsky共同墓地。42ヘクタールの敷地の中に、40万人以上の霊が眠っているというこの広大な共同墓地は、墓地という特殊な場所であるにも関わらず、リヴィウ最大の見どころのひとつである。

ウクライナ紀行(3) リヴィウ 光と影_e0038811_0281663.jpg
今回の旅行に持参したlonely planet社のウクライナ編のガイドブックには、「Lychakivsky共同墓地を訪れることなしに、リヴィウを去ることなかれ」というようなことが書いてあるのだが、実際に訪ねてみて、この言葉は間違いでないことがわかった。

ウクライナ紀行(3) リヴィウ 光と影_e0038811_0291362.jpg
地元の石工職人が腕によりを込めて彫った芸術作品のようなお墓から、非常に簡素なものまで、ここで見られるお墓は多彩を極めていて、歴史の重みに圧倒される思いがする。墓石に彫られている名前を見ると、ウクライナ人、ポーランド人、ドイツ人とこれもさまざま。この多様性は、一体どこに由来するのだろうか。

ウクライナ紀行(3) リヴィウ 光と影_e0038811_030213.jpg
もしご興味があったら、世界地図を開いて、リヴィウがウクライナのどこにあるのか、確認していただきたい。東西に長いウクライナのほぼ一番西側、ポーランド、ハンガリー、スロヴァキアといった中欧諸国に限りなく近い位置にあることがわかる。これは重要なポイントである。

ウクライナ紀行(3) リヴィウ 光と影_e0038811_031485.jpg
リヴィウの町の起源は13世紀に遡るが、中世以来、この町を長く支配していたのはポーランド人だった。1772年、ポーランドが分割されてしまうと、次にここを支配したのは、かのハプスブルク帝国。町の名前はレンベルク(Lemberg)とドイツ語風になり、公用語もドイツ語になる。19世紀の黄金期には、ウィーン、ブダペスト、プラハに次いで、ハプスブルク帝国の中で4番目に大きな町だったというから、当時の栄華のほどがしのばれる。

ウクライナ紀行(3) リヴィウ 光と影_e0038811_0232223.jpg
ウクライナ紀行(3) リヴィウ 光と影_e0038811_0234692.jpg
上の2つはドイツ人のお墓。

ウクライナ紀行(3) リヴィウ 光と影_e0038811_033575.jpg
20世紀に入り、ハプスブルク帝国(オーストリア・ハンガリー帝国)が終焉の時を迎えると、西ウクライナ共和国が独立を果たすものの(1918年)、わずか1年ほどで挫折。ウクライナ人とポーランド人の激しい戦闘の後、再びこの地はポーランドの支配下に入る。

ウクライナ紀行(3) リヴィウ 光と影_e0038811_0345613.jpg
第二次世界大戦後はソ連の一部に組み込まれるわけだが、意外なことに、この時までリヴィウが帝政ロシアの支配下に入ったことは一度もないのである。リヴィウの町を歩いてみるとよくわかるが、典型的なヨーロッパの町並みで、美しいユーゲント様式の建物なども多く見ることができる。つまり、ロシア的要素が薄く、西欧の影響が強い。それは昨年末のいわゆる「オレンジ革命」でも明らかになった。大統領決選投票の際、キエフとリヴィウを中心としたウクライナ西部の人々は、親ロシア派の与党ヤヌコヴィッチを支持した東部に対し、西欧型の民主化を推進しようとする野党のヴィクトル・ユーシェンコをこぞって支持したのである。

ウクライナ紀行(3) リヴィウ 光と影_e0038811_038372.jpg
リヴィウの歴史を語る上で、忘れることができないのがユダヤ人である。この町のあるガリツィア地方を始めとして、ウクライナには中世から多くのユダヤ人が住んでいたのだが、リヴィウの住民を構成していたのも主にユダヤ人とポーランド人だった。町の郊外にはゲットーがあり、迫害の対象となっていた。19世紀末には、ウクライナ全土で約200万人ものユダヤ人が住んでいたという。迫害を避けるため、多くの人々はこの時期新大陸に逃れたが、彼らは現在のユダヤ系アメリカ人の核となっている(余談になるが、ジョージ・ガーシュインやレナード・バーンスタインは、19世紀末このようにアメリカに逃れたウクライナ系ユダヤ人の子孫である。またミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」も、やはりこの時期の南ウクライナのユダヤ人コミュニティーが舞台の話だ)。

ウクライナ紀行(3) リヴィウ 光と影_e0038811_0392390.jpg
ナチス・ドイツのユダヤ人狩りにおいて、リヴィウもまた例外ではなかった。第二次世界大戦中の1941年から1944年までの3年もの間に、リヴィウに住む約35万人ものユダヤ人がナチスによって強制収容所に送られ、殺されたという。この町には別の場所にユダヤ人墓地もあるのだが、今回は時間の関係で訪れることはできなかった。

ウクライナ紀行(3) リヴィウ 光と影_e0038811_19383845.jpg
この英雄的なモニュメントは前回触れたウクライナの国民的作家、イワン・フランコのお墓。入り口の近くということもあって、一際目に付く。

ウクライナ紀行(3) リヴィウ 光と影_e0038811_1936560.jpg
広大な墓地を歩き終えた私たちは、再び中心部に戻り、今度は町を一望できるという展望台に向かった。

ウクライナ紀行(3) リヴィウ 光と影_e0038811_19364279.jpg
ウクライナ紀行(3) リヴィウ 光と影_e0038811_19371416.jpg
ここからの眺めはすばらしかった。郊外には、社会主義時代に建てられたブロック状のアパート群が多く見られる。

ウクライナ紀行(3) リヴィウ 光と影_e0038811_19374724.jpg
明日は列車でいよいよ首都のキエフへと向かう。

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by berlinHbf | 2005-10-21 17:57 | - 2005ウクライナ紀行 | Comments(9)
Commented by こーどー at 2005-10-22 19:27 x
どうも。昨日ようやくベルリンにもどっていました。個人的にはもう一週間ぐらい旅行していたかったけど、しゃーないですね。
キエフのあとは南西ウクライナで数日をすごしたあと、またリヴィウに数日寄って、来た道をプシェミシルまでもどって、ルブリン経由でドイツにもどってきました。東ポーランドも実にいいところでしたよ。
ウクライナにはまだいきたいところが色々ありますね。また出かけていくでしょう。黒海やカルパチア山脈沿いに旅するのも、魅力的でいい。実に思い出深い旅でした。
Commented by berlinHbf at 2005-10-22 21:36
おかえりなさい!思っていたより早かったね。まずは無事に帰って来て何よりです。今度会う時に、その後の旅の話をゆっくり聞かせてください。
Commented by かおる at 2005-10-23 11:11 x
こんにちは。
こちらのブログにはときどき寄らせていただいていたのですが、今日ちょっと久しぶりにお邪魔したら、ウクライナのことが、しかも、リヴィウのことが書いてあって興奮してしまいました。
その上、泊まったホテルもおんなじときています。いいホテルですよね、ジョルジュ・ホテル。あそこのフロントのおばちゃんは、ウクライナでピカ1の親切な人だったんですが、今も現役でいるのでしょうか。。。
Commented by berlinHbf at 2005-10-24 07:45
かおるさん、こんにちは。このブログを読んでくださっている中に、Hotel Georgeに泊まったことのある方がいたとは、こちらこそ興奮気味です(笑)。リヴィウには2日半いましたが、アジア人観光客はほぼ皆無の町でした。Hotel Georgeは私もとても気に入りました。場所も最高ですよね。ホテルのフロントのおばさんは、英語を解してくれる親切な方だったので、同じ人である可能性は高いと思います。かおるさんのウクライナ旅行記も後でゆっくり拝見させていただきます。
Commented by havigo at 2005-10-24 15:43
こんにちは。
毎回「ウクライナ紀行」を楽しみにしています!
今回の「リヴィウ」には惹かれたと言いますか…上手い表現が見付からないのですが、とにかく惹かれました。
ボキャ貧な自分が恨めしい(苦笑)
Commented by berlinHbf at 2005-10-25 10:13
havigoさん、ご感想ありがとうございます。いろいろな文化が重層的に交わっている町というのが私は好きで、リヴィウもそこに惹かれましたね。次回は久々にサッカーのお話です(笑)。
Commented by Yozakura at 2015-09-24 12:26 x
Masatoさま
 未だこちらに書き込める様なので、勝手に、ウクライナの関連サイトを紹介します。
 ポーランドで製造されたお菓子のラベルの表記内容を解説しているサイトがあります。日本国内で発信された旅行記事を、恐らく、欧州在住者でポーランド語に詳しい投稿者「ぴっちゃん」氏が懇切丁寧に解説(2007-08-21)なさっています。
 この女性の投稿末尾に、中央駅氏が10年も前に訪問したウクライナ西部の街・リヴィウが引用され、往時の香料貿易に因る繁栄も言及されています。

> 現在ウクライナ領となっているリヴィウという
> 街などで、ポーランド人、アルメニア人、ユダヤ人
> などの商人がスパイスの取引をやっていて
> とても栄ました。

 そして、投稿全体がポーランドの言語と文化に関するミニ教室となっており、恐らく中央駅氏の関心にも充分に応えるものではないでしょうか?

> 語尾がチュカとなるのは、スラブ語独特の
> 「指小形」という表現で、「~ちゃん」みたい
> な小さくてかわいいものを表します。

 この条は、貴方が愛読して已まない『オリガ・モリソヴナの反語法』に登場する主人公の愛称の解説にもなっています。お役に立てば幸いです。
Commented by Yozakura at 2015-09-24 12:34 x
Masatoさま
 肝腎の「関連サイトの検索要素」の紹介を忘れていました。失礼しました。以下の通りです。

[採集生活、2007ウィーン:ポーランドのクッキー, Ciasteczka z Powidlami]

 参考になれば幸いです。お元気で。
Commented by berlinHbf at 2015-12-25 02:26
Yozakuraさん
興味深いサイトのご案内をしてくださり、どうもありがとうございました。リヴィウの古くからの国際的な雰囲気が感じられる投稿で、大変興味深かったです。私がリヴィウを訪ねてもう10年が経ちましたが、いつか必ず再訪したいです。

お返事がすっかり遅くなり、申し訳ありません。
新しいブログでもまたどうぞよろしくお願いいたします。

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