ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


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現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

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ポツダムで聴くフリードリヒ大王の音色

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Nikolaisaal Potsdam

ベルリンでクラシックのコンサートに行くとなると、どうしてもフィルハーモニーかコンツェルトハウスが中心になる。もちろん教会のコンサートもたくさんあるし、時にはクラブが会場になることもある。でも、考えてみたら、ベルリン広しといえども本格的なコンサートホールとなるとこの2つしかない。大変贅沢な悩みではあるのだが、たまには違う場所で音楽を聴いてみたくなる。そんな時にこんなコンサートを見つけた。カンマーアカデミー・ポツダムのシンフォニーコンサートで、指揮がピノック、フルート独奏がベルリン・フィルのパユというもの。そうだ、ポツダムへ行こう!

ポツダムへはSバーンでも行けるが、30分に1本出ている赤のレギオナールバーンの2階席に乗ると、少しは旅行気分が味わえる。とはいえ、ポツダムへの距離感はなかなか微妙なものがあり、ツォー駅からわずか19分でポツダム中央駅に着いてしまう。1時間ぐらい乗れれば、もう少しゆっくり本を読んだり、寝たりということができるのになあと思うが、わずか20分で全く違う雰囲気の街に来たという実感を持てるのだから、やはりポツダムは魅力的。

中央駅からトラムに乗ってアルター・マルクトへ。当夜の会場であるニコライザールは、この広場の前のニコライ教会のことかと思っていたが、そうではなく、ここから徒歩5分ぐらいのWilhelm-Staab-Str.という通りにある。背の低い古典主義様式の建物が壮麗にずらりと並ぶ中の一角に、コンサートを聴きに来た客が次々に入って行くが、一見してここがコンサートホールとは思えない。中庭を抜けた奥にもう1つ建物が面していて、そこがホワイエになっている。お客さんの年齢層はベルリンに比べるとかなり高めか。ベルが鳴って人の流れに沿ってさらに奥へと行くと、まるでポツダムのアインシュタイン塔の曲線を思い起こさせる、どこか表現主義的な(?)斬新なホールが姿を現した。入り口からこの内装は想像できなかったから、新しいホールとの出会いは面白い。

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この夜はプログラムがまた魅力的。最初と最後にハイドンの序曲と交響曲「オックスフォード」が置かれ、その間にカール・フィリップ・エマヌエル・バッハの短いシンフォニア、そしてベンダとクヴァンツのフルート協奏曲が並ぶ。つまり、フリードリヒ大王のチェンバロ奏者、ヴァイオリンの名手(コンサートマスター)、フルート教師という、大王の側近にいた音楽家の作品を続けて聴けるという趣向。実はほぼ同じプログラムのコンサートがベルリンでもあったのだが、フリードリヒ大王の宮廷文化に憧れを抱く私としては、ぜひともポツダムで聴いてみたかった。

全曲に渡って、ピノックが立ってチェンバロを弾きながら指示を飛ばす室内オケの躍動的な響きが素晴らしい。特に、パユが吹いた2曲のフルート協奏曲は圧巻だった。ベンダのホ短調の協奏曲は冒頭から強い表現意欲を感じる作品で、この時代に生まれたフルート音楽の水準の高さを再認識したし、クヴァンツの協奏曲は上品な中にどこかユーモアも感じられて、大王のくつろいだ姿が見え隠れする。パユのフルートの音の空間の広がり方は今更ながらすごいと思う。極小のピアニッシュモ1つ取っても、その響きの豊かさでオーケストラと完全に渡り合っている感じ。そして彼の楽器を口に付ける時のあの「自然さ」は何なのだろう。少なくとも「楽器を構える」という感じじゃないんだよなあ。ちなみに、ニコライザールの休憩時のチャイムはフリードリヒ大王が創案したあの「音楽の捧げもの」(大バッハ)の冒頭のメロディーで、思わず微笑んでしまった。

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かなり大きなホールだったのに、このユニークな構造ゆえ、どこかの邸宅での私的コンサートを楽しんだかのような錯覚を覚える。通りに出ると、人気のない暗闇の向こうからカッポカッポと馬車の音が聞こえてくるような趣。ベルリンでのコンサートとはまた違う余韻を味わいつつ、ナウエン門の下にある「カフェ・ハイダー」で遅い夕食。たまには違う場所で音楽を聴くのもいいものである。来年はフリードリヒ大王の生誕300周年。ポツダムで「音楽のささげもの」でも聴けたら最高だろうなあ。

Sa, 19.02.2011 19:30 
Nikolaisaal - Potsdam

Joseph Haydn
Ouvertüre zu "Orfeo ed Euridice ossia L'anima del filosofo"
Carl Philipp Emanuel Bach
Sinfonie D-Dur Wq 183 Nr. 1
Franz Benda
Flötenkonzert e-Moll
Johann Joachim Quantz
Flötenkonzert G-Dur
Joseph Haydn
Sinfonie Nr. 92 G-Dur “Oxford”

Emmanuel Pahud Flöte
Trevor Pinnock Dirigent
Kammerakademie Potsdam

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by berlinHbf | 2011-02-28 23:54 | ベルリン音楽日記 | Comments(9)
Commented by tsu-bu at 2011-03-01 09:45 x
ずいぶん斬新な作りのホールですね。街の雰囲気も含めて、いつもと趣の違うコンサートを堪能されたようで羨ましい。
ところで、フルート奏者のパユって最近ヘアスタイルを変えたあのイケメンさんですか?ベルリンフィルのツイッターをフォローしていて、毎日短いものですがコンサートの映像を配信してくれるので、メンバーの顔を覚えつつあります。パユさん素敵です。
そうそう、いつか教えていただいたシフのバッハ(12枚組)聴いています。一音一音がとても豊かに沁み入ります。素敵なCDを教えてくださり、ありがとうございました。
Commented by TM at 2011-03-02 02:07 x
こんにちは。こんな素敵な場所で聴く上質の宮廷音楽でも、きっと敷居は低くて日常と非日常が静かに溶け合っているのでしょうね。
「そうだ、~へ行こう!」は、つい言っちゃいますよね(笑)
Commented by bach!! at 2011-03-03 01:22 x
昨年、ベルリンとその近郊のコンサートを調べた時、「Nikolaisaal Potsdam」の情報もあった記憶が・・・。日程が合わなくて残念でしたが、こんなに素敵な外観と斬新な内装(大王もびっくり!!)だったとは・・・。それにしても名手パユとピノックの共演!それは聴きものだったでしょうね。パユ(様)は、ついこの前の華麗な演奏の余韻がまだ残っていますが、ピノックは随分昔の来日公演(チェンバロソロ、当時は古楽界のプリンスって感じだったかな?)が懐かしいです。バッハのソナタを、タイプの全く異なるランパルと録音し、世間をあっと驚かせたことがありますが、数年前にパユ(様)とも録音しているのですね(こちらは未聴ですが)。

>ニコライザールの休憩時のチャイムはフリードリヒ大王が創案したあの「音楽の捧げもの」(大バッハ)の冒頭のメロディー

Good !ちょっと応用して、このメロディーで目覚ましオルゴール、オーダーしたい!

>ポツダムで「音楽のささげもの」でも聴けたら最高だろうなあ。
激しく同意します!(笑)
Commented by CORCOVADO at 2011-03-03 09:34 x
こんにちは。
私も昨年パユとピノックの共演を間近で聴いて、とても感動しました。
パユはピノックを信頼し、尊敬しているように感じました。そして、やはりパユのフルートは絶品ですね。もう楽器が体と一体になっている感じがします。今年も是非聴きに行きたいと思っています。
Commented at 2011-03-06 17:16 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ぽんず at 2011-03-07 20:40 x
初めまして。
中村様の本を拝見して以来、ブログもみてます。
ピノックさんとパユさんはCDで聴いたことがあるのですが、ドイツにいらっしゃるとは知りませんでした。チェンバロは小さめのホールでやると思っていたのですが、こちらのホールはかなり大きいのですね。音響がいいのでしょうか。
今度、4月にウィーンとオーストリアに行きます。ベルリンはあまり滞在時間がないのですが、楽しみたいと思ってます。
では失礼します。
Commented by berlinHbf at 2011-03-08 04:49
tsu-buさん
コメントありがとうございます。
そうそう、パユはあのイケメンです(笑)。20代でベルリン・フィルの首席になった頃は、本当にプリンスのようでしたが、今も若々しさを失っていませんね。次のCDはプロイセンの宮廷音楽でまとめてくれないかなあと密かに期待しています。シフのCDも気に入ってくださったようでうれしいです。

TMさん
お久しぶりです!そういえば、学生時代にNYを訪れた時、カーネギーのワイルホールでパユがソロデビューをするコンサートに出くわして聴いたのを思い出します。

>きっと敷居は低くて日常と非日常が静かに溶け合って
そうですね。でも、ポツダムで音楽を聴くのは初めてだったので、自分たちにはかなり非日常の色が強かったです。なので余計新鮮な体験でした。
Commented by berlinHbf at 2011-03-08 05:59
bach!!さん
コメントをお待ちしておりました!ニコライザールの休憩時のチャイムのことは、ぜひともご報告しなければと思っていました(笑)。今回は演奏者にも恵まれましたが、ポツダムで聴く音楽、これはなかなか至福の体験でした。bach!!さんにもぜひ一度体験していただきたいです。

ところで、
www.musikfestspiele-potsdam.de
という音楽祭が毎年6月にポツダムで開催されるのですが、やはり来年は「フリードリヒ大王、音楽とヨーロッパ」というテーマだそうです。今から楽しみですね。またメールいたします。

CORCOVADOさん
>もう楽器が体と一体になっている感じがします。
まさにそんな感じですよね。あのしなやかでありながら、フルートのイメージをくつがえすような強靭な音楽は、本当に彼独自のものだと思います。ピノックとのデュオも一度聴いてみたいものです。
Commented by berlinHbf at 2011-03-08 06:02
ぽんずさん
初コメントありがとうございます。ノコライザールは、確かに結構大きめのホールでしたが、音響のバランスはちょうどいい感じで楽しめました。4月のベルリン滞在、素敵な時間になりますように!

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