ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


ベルリンガイドブック
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本書は2009年10月発行「素顔のベルリン」の増補改訂版です。2013年に改めて新規取材を行い、データを更新。レストランやショッピング、コラムなどのページも増量し、より充実したガイドブックに生まれ変わりました。

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豊富なビジュアルとドイツ語フレーズを楽しめる1冊。基本のあいさつ表現から、街にまつわるドイツ語豆知識まで、ガイドブックとともに旅に役立つ会話集です。




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地球の歩き方シリーズ初、待望のベルリンガイドブック誕生!比類なき歴史を抱えつつ、明日へ向かって日々進化し続ける首都ベルリン。「ドイツで最もドイツらしくない」といわれるこの町の知られざる魅力を、現地在住著者が12のエリアにわけて徹底紹介。


現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

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ベルリン・フィル八重奏団の来日公演

今週末からベルリン・フィルの八重奏団が日本で短期間のツアーを行います。原発事故の影響で2人のメンバーが来日をキャンセルし、一時はツアーの開催も危ぶまれたそうなのですが、ヴァイオリンのラティツァ・ホンダ=ローゼンベルクさん(ベルリン芸大教授)とホルンのシュテファン・イェジェルスキさん(ベルリン・フィル)が代役を引き受けて予定通り来日が実現することになったという経緯があります。ご縁があって、私がベルリンを発つ前にこのお2人にインタビューをさせていただく機会がありました。彼らの音楽的なルーツから、震災後日本のためのチャリティーコンサートで感じたこと、今回の日本行きの想いまで、とても印象深いお話を伺うことができました。

シュテファン・イェジェルスキさん(ヴァイオリン)
ラティツァ・ホンダ=ローゼンベルクさん(ホルン)

現在ベルリンを公式訪問中の皇太子殿下が、震災後チャリティーコンサートなどを通してのドイツ側の支援に感謝の気持ちを述べられたというニュースを目にしましたが、来日演奏家のキャンセルが続く中で急遽出演を引き受けたこの2人の音楽家の話と重なるところあったので、ここで紹介させていただきました。27日のオペラシティでのコンサートは私も聴きに行くつもりです(ツアーの詳細はこちらより)。

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by berlinHbf | 2011-06-26 00:48 | ベルリン音楽日記 | Comments(5)

ベルリン・フィルから日本へのメッセージ

クラシック音楽ファンの方はすでにご覧になっているかもしれませんが、昨日ベルリン・フィルがYouTubeを通して被災した日本の皆さんにメッセージを送っています(こちらでご覧になれます)。1人目は流暢な日本語を話すことで知られる第1ヴァイオリンのゼバスティアン・ヘーシュさん、そして2人目が音楽監督のサイモン・ラトルさん。ヘーシュさんによる日本語のメッセージは、ほぼご自分で書いたものだそうで、日本語としては完璧ではないかもしれませんが、とても心に沁み入る内容と語り口だと思います。以下がそのメッセージです。


Skript der Videobotschaft von Sebastian Heesch,
1. Geiger der Berliner Philharmoniker

日本の皆様、こんにちは。ベルリン・フィルの一員として伝えたいことがあります。
1957 年の最初のカラヤン指揮者の日本への演奏旅行から、日本のお客さん、日本の国民と言っていいでしょうか、とベルリン・フィルの友情が出来て、深まって来ました。それ以来、沢山の演奏旅行が行なわれて、数え切れない日本人の観光客と音楽のファンがベルリンにいらして、多くの団員は個人的にも日本とかかわって、私たちに日本人の友達がたくさん出来ました。何十年も前から日本人の団員も何人かいます。あんなに遠いのに、日本は僕たちベルリン・フィルにとって親しい国、そして恋しい二つ目の故郷になりました。
そこで、その日本という、僕たちの世の中の一番誠実な親友は今あんな恐ろしい運命に遭いました。私たちは心から被災者のことを悲しんでいます。そして、生き残った方たち、生き残った日本、どうにか立ち直る力がみつかりますように、お祈りしています。

Skript der Videobotschaft von Sir Simon Rattle

私たち音楽家は、何かを言いたい時には、普通は音楽そのものに語らせるものです。しかし時には、言葉でしか表現できないこともあります。今ヘーシュさんが言ったように、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団は、団員のひとりひとりが、日本に長く深いつながりを持っています。この数日間、私たちは被災地の状況を目にしましたが、惨状に非常に心を痛めています。近い将来に、より具体的にお力になれるよう、努力してゆくつもりですが、まずここで、「私たちが日本に想いを馳せている」ということを、お伝えさせてください。この厳しい状況において、皆様はひとりではありません。私たちの音楽が、皆様に少しでも慰めを与えますよう、そして今年11月には、日本で再びお会いできますよう、心から祈っております。その日まで、私自身、そして団員全員より、精神的な支援と、深い愛情をお送りいたします。

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なお、昨日から18日までのベルリン・フィルの定期演奏会(ハイティンク指揮)では、日本への追悼の印として、冒頭にルトスワフスキの「弦楽のための葬送音楽」が奏でられるそうです。

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by berlinHbf | 2011-03-17 15:02 | ベルリン音楽日記 | Comments(7)

ベルリン・フィルメンバーのチャリティーコンサート(3/19)

フィルハーモニーで働く知人より、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)主催のチャリティーコンサート(「日本のためのコンサート」)の案内をいただきました。

日時と場所:
3月19日(土)の22時30分からカイザー・ヴィルヘルム記念教会にて。

出演:
アルブレヒト・マイヤー(オーボエ)、ベルリン・フィル12人のチェリストたち、コリヤ・ブラッハー(ヴァイオリン)、コンチェルト・メランテ、ドロテー・ミールズ(ソプラノ)。

曲目:バッハ、ヴェルディ、ラベル、ペルト他。

入場は無料で、チャリティーを募るとのことです。

以下ドイツ語の案内を貼り付けます。最後の„Japanhilfe“の下に書かれているのは、IPPNWの震災募金の口座情報です。

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Mitglieder der Berliner Philharmoniker
Ein Konzert für Japan

Samstag, 19. März 22:30 in der Kaiser-Wilhelm-Gedächtnis-Kirche-Berlin


Begrüßung: Prof. Wolfgang Huber, Bischof aD (angefragt)

Albrecht Mayer, Oboe - Die 12 Cellisten der Berliner Philharmoniker - Kolja Blacher, Violine - Concerto Melante und Dorothee Mields, Sopran

Werke von Bach, Verdi, Ravel, Pärt u.a.

Eine Veranstaltung von IPPNW-Concerts (Internationale Ärzte für die Verhütung des Atomkrieges) und der Gemeinde der Kaiser-Wilhelm-Gedächtnis-Kirche-Berlin

Eintritt frei, Spenden erbeten.

IPPNW
„Japanhilfe“
Kontonummer 222 22 55
BLZ 100 205 00 bei der Bank für Sozialwirtschaft

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by berlinHbf | 2011-03-16 00:06 | ベルリン音楽日記 | Comments(0)

よみがえった1913年録音のニキシュの「運命」

昨年3月、ベルリンで行われた貴志康一の生誕100周年の行事で、東京大学先端科学技術研究センターの村岡輝雄先生と知り合う機会があった。村岡先生は音響工学を専門とされ、武蔵工業大学教授を退任後、現在は東大の研究センターで古いSPレコードのように損傷した音楽のコンピューターによる修復の研究をされている方。

村岡先生と知り合ってからというもの、ご自身が製作されたGHAノイズ・リダクションによる復刻CDを送ってくださるようになった。毎回楽しませていただいているのだが、このラインナップがなかなか興味深い。例えば、アルトゥーロ・ニキシュ指揮ベルリン・フィルのベートーヴェン「運命」(1913年録音)、ジネット・ヌヴーのシベリウスとブラームスのヴァイオリン協奏曲(オケはフィルハーモニア管)、貴志康一がベルリン・フィルを相手に自作を指揮した貴重な録音(1935年)、他にもカザルス、シゲティといった具合だ。

特にニキシュの「運命」は、第一次世界大戦の1年前という時期の録音にも関わらず、かなり普通に鑑賞できるレベルの音質に修復されていた。聴き進むうちに、100年前の「骨董品」に触れているという意識が薄れ、音楽そのものに引き込まれてしまった。ベルリン・フィルのコンサートマスターだった安永徹さんも、この録音の音楽的・歴史的価値は高く評価されたそうだ。

先月末、ロンドンでの学会の帰りにベルリンに寄られた村岡先生と、久々にお会いした。ベルリン・フィルの資料室長のヘルゲ・グルーネヴァルトさんと昼食をご一緒し、ベルリン・フィルの地下のアーカイブまで見せていただいたのは、予想外のことで楽しかった。

ブルーノ・ワルターがBBCのオーケストラを指揮したモーツァルトの交響曲の録音は、CDを贈ったBBCから「ぜひ今の楽団員にも聞かせたい」という熱い返事が届いたそうだし、グルーネヴァルトさんも村岡先生の研究に十分興味を持ってくれたようだ。とはいえ、日本でもドイツでも、モノラルの時代の古い録音は、どうしても一般的な関心を集めるのが難しい。「後世のために音楽の世界遺産を作りたい」という村岡先生の熱心な活動を少しでも応援できればと、ここで紹介させていただくことにした。

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by berlinHbf | 2010-06-27 18:15 | ベルリン音楽日記 | Comments(2)

週末のコンサートから

シーズン終盤のこの時期、毎年ベルリンでは魅力的な公演が続きます。先週末、久々に3日連続でコンサートを聴いたので、その時の印象を簡潔にまとめてみたいと思います。

金曜日は、ギーレン指揮コンツェルトハウス管の演奏会。久々に聴くギーレン。指揮台に向かう足取りは以前よりも(?)ゆっくりだが、ゆったりとした大きな弧を描く独特の指揮ぶりは健在だった。ギーレンは、(リハーサル時)オーケストラには厳しいと何度か聞いたことがあるが、冒頭のシューマンの序曲ではオケ(特に年配のコンマスのリード)とどこかかみ合っていない印象を受けた。でも、後半のシューマンの交響曲第2番では、ふっくらとしながらも透徹した美しさが随所で聴かれ、特に3楽章は絶品といえるものだった。来シーズン、ギーレンはベートーヴェンの「運命」(11月)、マーラーの「巨人」(5月)をメインにしたプログラムを振る予定。

Konzerthausorchester Berlin
Michael Gielen
Melanie Diener, Sopran

Robert Schumann: Ouvertüre zu Schillers Trauerspiel "Die Braut von Messina" op. 100
Alban Berg: "Sieben frühe Lieder" für Sopran und Orchester
Robert Schumann: Sinfonie Nr. 2 C-Dur op. 61

土曜日は、ベルリン・フィルの定期。指揮者はキタエンコ。前半のグリエールのホルン協奏曲は、ソロを務めたラデク・バボラクの独断場。グリエールはプロコフィエフとハチャトリアンの先生だった人だそう。民族色豊かで、親しみやすい音楽である一方、オーケストレーションはかなり派手(シンバルまで登場)。バボラクのホルンは、究極のレガートと呼ぶにふさわしいもので、ただただ感嘆した。かなり長い曲だったのに、ベルリン・フィルのメンバーを背後にさらにアンコールを3曲も吹くなんて、よほどの自信と心臓がなければできないことだろう。メインのスクリャービンの交響曲第3番《神聖なる詩》は、ベルリン・フィルが取り上げるのは87年のムーティ以来だそう。これが予想以上に素晴らしかった。オーケストラに自身の解釈を隅々まで浸透させ、ややもすればキッチュに陥りがちなこの難曲を、格調高く描き上げたキタエンコの手腕はお見事。ベルリン・フィルが客演指揮者に拍手を送る光景を久々に見た。ちなみに、このコンサートを一緒に聴いたうちのお1人は、本職がお坊さんという方で、《神聖なる詩》が生まれるきっかけとなったブラヴァツキーという人の話をしてくださったのだが、それがとても興味深かった。この作品は、思想的背景を抜きにしては語れそうにない。

Berliner Philharmoniker
Dmitrij Kitajenko, Dirigent
Radek Baborak, Horn

Béla Bartók: Bilder aus Ungarn Sz 97
Reinhold Glière: Hornkonzert B-Dur op. 91
Alexander Skrjabin: Symphonie Nr. 3 c-Moll op. 43 »Le divin poème«

日曜日は、「ヤナーチェクと1920年代」というタイトルの、ベルリン放送響の管楽アンサンブルによる演奏会を聴く。会場がちょっと変わっていて、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の在外公館の中にある小さなホール。ガラス張りのモダンな建物で、舞台の向こうに見えるライヒスタークのドームがきれいだった。リゲティの短い曲を挟みながら、メデラッケ、スメターチェク、パヴェル・ハース、ヤナーチェクと年代をさかのぼる順に演奏していったのだが、やはりヤナーチェクの音楽が断然いい。曲想が雄大で、どこか懐かしい気持ちにもさせてくれる。この管楽6重奏曲「青春」という曲は、学生時代に仲間と演奏したことがあって、感慨もひとしおだった。他には、スメターチェクの昆虫の生き様を描いた曲がユニーク。演奏はどちらかというと「堅実さ」を強く感じさせるものだったが、Sung Kwon Youという韓国人の若手のファゴット奏者の腕はずば抜けていた。最近ソロのオーディションに受かったばかりというまだ20代前半の奏者なのだが、今後が楽しみだ。

Kurt Mederacke: Böhmische Suite für Bläserquintett op. 43
Vacláv Smetácek: "Aus dem Leben der Insekten" - Bläserquintett op. 3
Pavel Haas: Bläserquintett op. 10
György Ligeti: Zehn Stücke für Bläserquintett (daraus: 4 Stücke)
Leos Janácek: "Mladi" - Suite für Bläsersextett

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by berlinHbf | 2010-06-02 16:29 | ベルリン音楽日記 | Comments(2)

フルトヴェングラーの生家

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先日、NHKドイツ語講座の連載「映画で歩くベルリン」の取材でシェーネベルクを歩いていたら、前々から探していたあるものにようやく出会いました。タイトルにある通り、指揮者ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886–1954)の生家です。

Uバーンのノレンドルフ広場(Nollendorfplatz)駅の南側にマーセン通り(Maaßenstraße)という賑やかな通りが続いていますが、この一角にあります。写真右手に見えるのが、ノレンドルフ広場の地上駅、左手のビル内には格安の語学学校Hartnackschuleがありますね(私もベルリンに来て間もない頃お世話になっていました。本館はモッツ通りの5番地)。

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フルトヴェングラーの生家はマーセン通り1番ということは知っていたのですが、どうしてもこの番地が見つからない。で、歩き回ってわかったのは、現在のNollendorfplatzの8-9番地にかぶさっているようでした。駅前のスーパーKaiser'sが目印のモダンなアパートがそれです。

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ドアの上のプレートには、「フルトヴェングラーの生家がここにあった」と確かに書かれていました(生まれたのは1886年1月25日)。「ベルリン・フィルの常任指揮者」の他に、「作曲家」だったとも記載されています。フルトヴェングラーは青春期をミュンヘンで過ごすことになるので、実際ここに住んだのはどのくらいの期間だったのでしょうか。

それにしても、フルトヴェングラーの生家が、こんな身近な場所にあったとは!ちなみに、お墓はハイデルベルクにあるそうなので、いつか訪ねてみたいと思っています。

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by berlinHbf | 2010-03-29 14:28 | ベルリン発掘(西) | Comments(16)

ベルリン・フィルのシベリウス&ベートーヴェンチクルス1

ベルリン・フィルによるシベリウス(交響曲)&ベートーヴェン(ピアノ協奏曲)チクルスの初日を聴いてきました。バラエティーに富んだ、大変充実した内容だったと思います。

冒頭の大オーケストラによるリゲティの「atmosphères」。キーンと張り詰めたピアニッシュモと背筋がぞくっとするようなクレッシェンド、不思議な和音がうごめき合い、何というか生命が存在しない異次元の空間に連れ去られるかのような雰囲気の曲でした。

それだけに、リゲティの後にベートーヴェンのピアノ協奏曲が鳴り響くと、「ああ、人間の世界に帰ってきたなあ」という何ともほっとした気分にさせられました。それだけ音楽があたたかく、血が通っている。ソロを弾いた内田光子さんがこちらのインタビューでベートーヴェンについて語っていた言葉に強く惹かれました。
しかし、それ以上に記憶に留めて置かなければならないのは、彼がまったく独立した唯一無二の存在だったということです。より正確に言うと、最も偉大であらゆる人間よりも強い存在だったと言えます。彼の音楽は、あたかも宇宙のすべてを体験したかのような、大きな広がりを持っています。彼の精神的な深さ、人間としての強さ、絶望的な状況のなかでも光を見出すことのできるオプティミズム、地獄のなかにあって天国を見ることができる能力! そうした力、大きなヴィジョンは、他のどの作曲家にも見出すことはできません。私はこの偉大な音楽を聴衆の前で弾かせてもらうと、常に幸せな気持ちになります。そして感謝の気持ちで一杯になるのです
内田さんのこの言葉が嘘でないのは、作曲家の精神が乗り移ったかのような弾きぶりに感じられます。確かな造形感と音にみなぎる気品は、もはや偉大な芸術家のそれで、特に2楽章での、弱音の美しさを極めたオケとピアノとのやり取りには陶然とさせられました。終演後のお客さんの反応は文字通り熱狂的といえるもので、一方の内田さんは、頭が足に付くのではという(笑)深々としたお辞儀で応えていました。ベートーヴェンのピアノ協奏曲は、個人的には第3番が一番好きなので、来週のチクルスもできたら聴きたいところです。

後半のリゲティ『死の秘儀』なる曲が始まると、今度は舞台がいきなり場末の怪しげな盛り場に移ったかのよう。これはオペラ「ル・グラン・マカーブル」の3つのアリアを編纂した作品で、コロラトゥーラのソプラノが超絶技巧とカクカクした独特の振り付けで歌い(まことに達者!)、演じまくり、ラトルや団員もちょっかいを出すように参加します。その息もつかせぬスピード感が圧巻でした。

最後に16型の大編成でシベリウスの交響曲第1番。こちらはうってかわってエスプレッシーボが利いた豪快な演奏。今まで少し敬遠していましたが、この第1番、じっくり聴くと本当に魅力的な音楽ですね。今回樫本さんがコンマスに座っていた弦楽器のうねりはすばらしく、牧歌的なホルンとか、木管の美しいソロの数々、特に妖精が動き回るようなフルートのパッセージにシベリウスらしさを感じました。時折チャイコフスキーを思わせるロマン派の影響が濃い音楽が、繊細さを極めた後期の世界にどう変貌していくのか、このチクルスで一望できるのが楽しみです(特に5〜7番を一夜で演奏する5月の最終回!)。ちなみに、第3番は今回ベルリン・フィルでは初演だとか。

Berliner Philharmoniker
Sir Simon Rattle Dirigent
Barbara Hannigan Sopran
Mitsuko Uchida Klavier

György Ligeti
atmosphères
Ludwig van Beethoven
Klavierkonzert Nr. 1 C-Dur op. 15
György Ligeti
Mysteries of the Macabre (Fassung für Koloratursopran und Orchester)
Jean Sibelius
Symphonie Nr. 1 e-Moll op. 39

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by berlinHbf | 2010-02-06 19:27 | ベルリン音楽日記 | Comments(4)

C.アバドのメンデルスゾーン

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メンデルスゾーンが、ライプチヒ通りの家に住んでいた時代に書いた『真夏の夜の夢』序曲は、(確か)高校3年生の時に出会って以来、昔も今も私の大好きな音楽です。特に躍動的な主部に入ってからは、何度聴いても魅了されます。クラリネット(2度目はフルート)のメロディーに誘われて流れる、あのとろけるような第2主題。十分にロマンチックでありながら、少しも厚ぼったくない。同じメロディーメーカーのモーツァルトともシューベルトとも違う、清澄な味わい。16歳にしてこの早熟な音楽を書いたことには、いまさらながら驚かされます。

名盤といわれる録音はたくさんあるのでしょうが、このライプチヒ通りからほど近いフィルハーモニーで録音された演奏を挙げたいと思います。アバド指揮ベルリン・フィルによる1995年のジルベスターコンサートのライブ録音。これは自分が浪人生をやっていた当時、テレビの生中継を観たので、よく覚えています。今年久々に再発売され、懐かしい思いで聴きました。

アバドの指揮するメンデルスゾーンはとてもいいですね。私が実演で接したのは2002年の交響曲第2番『賛歌』ぐらいですが、それも素晴らしかった。このマエストロの音楽的な品の高さが、メンデルスゾーンの音楽を相思相愛の関係で結びつけるのだと思います。このCDのカップリングの交響曲『イタリア』も豊かな歌に溢れています。

アバドの後任のラトルは、対照的にメンデルスゾーンはまったくといっていいほど振らないのではないでしょうか(ヴァイオリン協奏曲の伴奏ぐらいはあるのかもしれませんが)。逆にメンデルスゾーンを振る印象の薄いドイツ人指揮者のC.ティーレマンは、何度かその演奏を耳にしており、特に2002年にベルリン・フィルを指揮した交響曲第5番『宗教改革』は、全ての声部が有機的に絡み合った非常な名演でした。

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by berlinHbf | 2009-11-24 02:03 | ベルリン音楽日記 | Comments(2)

オーバーシュプレー・ケーブル工場でのコンサート

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Kabelwerk Oberspree (2009-9-22)

しばらく音楽の話題から遠ざかっていたので、また折に触れてここ数ヶ月で聴いたり見たりしたものを書いていきたいと思います。

もう2ヶ月近く前になりますが、ラトル指揮ベルリン・フィルのショスタコーヴィチ交響曲第4番の演奏に衝撃を受けたということを書きました(その時の記事はこちら)。その約1週間後、トレプトウ・ケーペニック地区のオーバーシェーネヴァイデ(Oberschöneweide)のケーブル工場で同曲が再び演奏されるというので、チケットを持っていなかったにも関わらず、足を運んでみました。

旧東のSバーンのシェーネヴァイデ(Schöneweide)の駅で降り、トラムに乗ってシュプレー側を渡ると、対岸にオーバーシェーネヴァイデの古い工場群が見えてきます。この場所は19世紀末から20世紀初頭のドイツの工業史と深いかかわりを持っており、現在はそれらの建物の多くが文化財になっているそうです。

ベルリン・フィルは2007年のヨーロッパコンサートをここで行っており、その縁から今回のケペニック800周年記念コンサートがここで開催されることになったのではないかと思います。しかし、このコンサートは数ヶ月前から売り切れで、当日行っても聴けるかどうか定かでなかったのですが、「チケット求む」の札を下げてしばらく立っていたら、運よくチケットを譲ってくれた方がいました。それが、「壁とベルリン」第5回 - WISTAに見る東独の再生例 -でご紹介したヨアヒム・メルケさんです。一緒に行くはずだった奥さんが来れなくなったためとのことですが、私にとってはラッキーな出会いでした。メルケさんにはその後もよくしていただいています。

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1890年以降、オーバーシェーネヴァイデには電気メーカーAEG社の拠点があり、1897年にこのケーブル工場が操業を開始します(当時1800人が働いていたとか)。ナチス時代はここで強制労働も行われていたそうで、フルトヴェングラー指揮の戦時中の工場での演奏もここが舞台だったと聞いたことがありますが、本当なのでしょうか。それはともかく、中に入るとその広さに圧倒されました。

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この奥に舞台があります。当夜は冒頭にベートーヴェンの交響曲第2番が演奏されたのですが、これだけ広い空間にも関わらず、音が明瞭にすっきりと響くのに驚きました。

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演奏自体はフィルハーモニーで聴いた時の方が上だったものの、東独時代は国営のコンビナートだったこの場所で、ショスタコーヴィチの第4を聴くというのは何ともいえない体験でした。

近年、オーバーシェーネヴァイデでは、これらの古い工業施設などを再利用して文化活動が盛んになってきているそうで、ぜひまた訪れたいと思います。

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by berlinHbf | 2009-11-16 01:33 | ベルリン音楽日記 | Comments(20)

ベルリン音楽祭のショスタコーヴィチより

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今年のベルリン音楽祭Musikfestでは、音楽における政治性というテーマからショスタコーヴィチが大きな柱に選ばれていました。これは今年の壁崩壊20周年、すなわち東欧諸国における共産主義支配からの解放という出来事と大きな関わりがあります。いくつか足を運んだ中から、衝撃的なまでに素晴らしいコンサートに2つ出会いました。

1つ目はラトル指揮ベルリン・フィルによるショスタコーヴィチの交響曲第4番。
この音楽を生で聴いて、私は心底打ちのめされました。マチネーのコンサートだったにも関わらず、その日はどこか興奮状態で夜もなかなか寝付けなかったほどです(笑)。今までいろいろなシンフォニーを聴いてきましたが、この大曲をこの見事な演奏で聴いたことは私の交響曲体験において1つの「事件」ともいえる出来事でした。

何といってもこんなすごい曲があったのかという驚き。不覚にも私はこの交響曲4番が生まれた背景をほとんど知りませんでした(2003年にゲルギエフの指揮で一度だけ聴いたことがありますが、その時も圧倒されたもののその後CDで聴くことはほとんどなかったんです)。1935年から36年にかけて作曲されたので、ショスタコーヴィチが29歳かそこらで書き上げたということ、そして当局から消されるのを恐れて、完成から1961年の初演まで25年間も「封印」されていたという事実に、まず関心が向います。
ブラームスの1番が「ベートーヴェンの10番」と言われるように、私はショスタコーヴィチのこの交響曲を「マーラーの11番」というように思っています。マーラーの生まれ変わりがロシアに現れて、20歳台で才気溢れる大交響曲を作曲した・・・ しかし、その時、国家はソビエトに変わっていたので、初演が行われないまま、約30年間も演奏が禁止された。
私の親しい知人がこのように語っていましたが、ラトル&ベルリン・フィルの演奏を聴いた後ではそれもむべなるかなと思わされます。2楽章のいかにもマーラー風のレントは、まだ流れがつかみやすいのですが、約30分の長大な両端楽章については、一体どう表現すればいいのか・・・

プログラムの解説によると、ショスタコーヴィチはこの4番を自分の最高のシンフォニーと語っていたのだそう。私は15曲全部をしっかり聴いたわけではないですが、少なくともこの4番以上に思いのたけを音で表現したと感じられる曲に出会ったことがありません。音楽の大胆な展開と激烈なエネルギーに何度ものけぞりそうになりながらも、精緻で詞的な部分においても魅力に事欠きません。3楽章冒頭の悲歌と独自の諧謔味。そして、時おり浮かび上がってくる美しいソロの数々。特にエキストラのメンバーらしかったファゴットの名手を初め、トロンボーンやイングリッシュホルンなど、実にすばらしかった。まあ、フル編成の弦はもちろん、あれだけの数の管打楽器が並ぶ様は壮観で、冒頭からフィナーレの最後に出現する金管の咆哮まで、すごい迫力でした。

今回の4番をベルリン・フィルが取り上げるのは12年ぶりだったとか。生で聴けて幸運でした。今晩ベルリンの東の郊外、ケペニックの元工場で演奏された後、短期間のツアーに持っていかれるそうです。その最後の公演地がワルシャワだそうで、かの地の人々はこの曲をどういう気持ちで聴くのだろうかとふと思いました。

2つ目はネルソンス指揮バーミンガム市響の6番を中心としたプログラムです。2007年にこの指揮者を初めて聴いて以来注目していたのですが、いつの間にバーミンガムのシェフになり、来年はバイロイト・デビューを果たすそうですから、大変な勢いを感じます。この日は、ブリテンの『4つの海の間奏曲』、TurnageのFrom the Wreckageと、ショスタコのジャズ組曲第1番というジャズの影響を濃厚に受けた2曲の後、ショスタコーヴィチの6番の交響曲という、ラトルの時とはうって変わって全体的に明るくカラフルなプログラム。最初から最後までネルソンスの指揮に釘付けでした。この人の棒にかかると、とにかく音楽が生気に富み、響きが立体的になります。決して勢いだけで盛り上げるというわけでもなく、演奏者も聴き手もいつの間にか魔法にかけられていて、心地よくボルテージが上がっていく感じです。バーミンガム市響との相性はとてもよさそうでした。

この秋はショスタコーヴィチをいろいろ聴いてみようと思いました。

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by berlinHbf | 2009-09-22 18:09 | ベルリン音楽日記 | Comments(8)

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