ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


ベルリンガイドブック
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本書は2009年10月発行「素顔のベルリン」の増補改訂版です。2013年に改めて新規取材を行い、データを更新。レストランやショッピング、コラムなどのページも増量し、より充実したガイドブックに生まれ変わりました。

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地球の歩き方シリーズ初、待望のベルリンガイドブック誕生!比類なき歴史を抱えつつ、明日へ向かって日々進化し続ける首都ベルリン。「ドイツで最もドイツらしくない」といわれるこの町の知られざる魅力を、現地在住著者が12のエリアにわけて徹底紹介。


現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

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ベルリンのクリスマス2013

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Domäne Dahlem (2013-12-21)

今年はなかなかクリスマス気分を味わう機会がなかったのですが、本番間近の頃になってようやくいくつかのクリスマスマーケットを巡ることができました。第4アドヴェントの土曜日に訪れたのは、地下鉄U3ダーレム・ドルフ駅近くのドメーネ・ダーレム。ここは以前、農村生活を味わえる場所として紹介したことがありますが、やって来たのは久々でした。

関連記事:
発掘の散歩術(9) -ドメーネ・ダーレムで体感する農村生活- (2011-04-28)

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ドメーネ・ダーレムでは第1から第4アドヴェントまでの週末、クリスマスマーケットが行われていました。入り口で入場料2ユーロを取られますが、ここのマーケットは商業色が薄く、手作りのものやオーガニック食品を扱った屋台が多く並んでいます。

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屋台で買って食べたジャガイモはここで栽培されたものだそうで、小ぶりながら濃い味わいがしました。定番のグリューワインを飲もうと思ったら、果実酒の屋台があったので、試してみることに。コケモモから作られたというホットワイン。今年のクリスマスは幸い比較的温暖で、金管アンサンブルによるクリスマスソングを座って聞いていても寒さが苦になりません。

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こちらは過去に何度かご紹介したポツダム広場のショッピングモールArkaden内の豪華なツリー。久々に行ったら、地下のスーパーKaisersがReweに変わっていたり(!)、出口前の昔よく使っていた写真屋がなくなっていたりといくつかの変化を感じました。

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Arkadenの入り口に置かれていたピラミッド。

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今日25日は、今年再オープンになったベルクグリューン美術館を訪れた後、目の前のシャルロッテンブルク宮殿のマーケットへ。小雨がぱらついていましたが、かなりの人手でした。

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ここでの今年の目玉は、ドイツ人の知人もお勧めのクリッペ(キリスト降誕を情景を描いたうまやの模型)。樹齢200年近くのナラの木から作られた立派なもの。キリストを取り巻く人々も等身大(!)で忠実に描かれており、確かにこれは素晴らしい見物でした。

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食べ物でおいしかったのは、サーモンをグリルにしてサラダと一緒に挟んだパン。やわらなくジューシーなサーモンでした。シャルロッテンブルク地区はロシア系住民も多いので、心なしかスラブ系の言葉を頻繁に耳にした気もします。

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日本ではもうお正月への準備が始まっているのでしょうが、ドイツでは明日26日までがクリスマス休暇です。Frohe Weihnachten!
by berlinHbf | 2013-12-25 22:25 | ベルリンのいま | Comments(0)

小野雅楽会のベルリン公演

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クロイツベルクの受難教会で行われた小野雅楽会の公演

普段海外に住んでいるからこそ、日本の伝統的な文化に接したときに、はっとするような新鮮な感動を受けたという経験をお持ちの方は結構いらっしゃると思います。私自身、振り返ってみて特に印象に残っているのが、2008年の平成中村座の歌舞伎と2011年の金春流能の『船弁慶』の舞台(いずれもベルリンの「世界文化の家」にて)。恥ずかしながら、歌舞伎も能も、私はそれまで生の舞台に接したことがありませんでした。

11月19日にクロイツベルクの受難教会(Passionskirche)で行われた小野雅楽会の公演も、私にとってはそんな貴重な機会でした。小野雅楽会は1887年に創設された、民間では最古の歴史を持つ雅楽演奏団体。今回、ロシア、ドイツ、オーストリアの5都市を巡る演奏ツアーの一環でベルリンを訪れました。

キリスト教会で日本の雅楽を聴くということに、最初はやや違和感を抱いていましたが、パイプオルガンとレンガ造りの美しい祭壇の前に設置された雅楽の舞台は、驚くほど見事に溶け合っていました。

前半は、管弦と呼ばれる楽器のみによる演奏。笙(しょう)、篳篥(ひちりき)、龍笛(りゅうてき)の管楽器のほか、楽琵琶(がくびわ)、楽箏(がくそう)という弦楽器、鉦鼓(しょうこ)、鞨鼓(かっこ)などの打楽器から構成されます。篳篥と龍笛の合奏はうねるような力強さがあり、笙の響きは天から降り注ぐ光のように眩しい。最初の音が鳴った瞬間、私は古の時代に連れ去られるかのようでした。

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後半は舞を伴う舞楽。最初の振鉾(えんぶ)では、複数の龍笛がカノンのように掛け合うところが印象的でした。続く『蘭陵王』は唐を経由して伝来した左舞と言われるもので、華麗な1人舞が舞台上で繰り広げられます。それに対し、『延喜楽』は朝鮮半島(高麗)を経由して伝来した右舞と呼ばれ、4人の踊り手が舞を演じます。地元の聴衆は、最後まで静かに聴き入っていました。

終演後、打ち上げに参加する機会を得ました。たまたま私の前に座ったのは、今回のツアーの特別ゲストで、最近まで宮内庁式部職楽部首席楽長を務めた豊英秋(ぶんのひであき)さん。実に1300年以上前から天皇家に仕えてきた楽師の家系の方と知り、仰天しました。雅楽人間国宝でもある豊さんは、大らかな口調でこんなことを話してくださいました。

「雅楽は唐から大きな影響を受けていますが、当時の西安はキリスト教、イスラム教、仏教が混在する国際都市でした。三島由紀夫がこんな言葉を残しています。『雅楽をひもとけば、ローマに通じる』と」。

雅楽がこのように多彩な要素を持つ一方で、これほど長い間、いったいどのようにして芸が伝承され得たのでしょうか。

「世襲の良さというのは『平均』だと思うんですよね。世襲の中には優秀な人もいれば、そうでない人もいますが、それはさほど問題ではありません。伝えることに愚直に専念すれば、結果的に昔とそれほど変わらないものが受け継がれていくと思うんです」。

私自身のルーツにも繋がる「世界最古のオーケストラ」。その生演奏と伝統を今に伝える人々に直に接し、感銘深い夜となりました。
ドイツニュースダイジェスト 12月20日)
by berlinHbf | 2013-12-21 23:45 | ニッポン再発見 | Comments(0)

ホテル・ボゴタ 最後の記録(3)〜静かな朝食

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Hotel Bogota (2013-11-28)

ホテル・ボゴタに泊まって楽しみにしていたのは、朝食の時間だった。部屋を出て階段に向かうと、リヒトホーフからグレゴリオ聖歌がほのかに聞こえてくる。通りから光が差し込み、窓際には大きな古い柱時計が構えている。給仕がコーヒーを持ってきてくれ、まず熱い一杯を喉元に流し込む。どちらかといえば簡素な朝食だが、とてもおいしいのだ。客のひそひそ声、ナイフとフォークの音のほかは、静かで優雅な時間が流れている。自宅から20分ほどの距離だけれど、この時間を味わうだけでも来てよかったと思った。

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このホテルのファンと思われる、おしゃれな服装をした年配のお客さんの姿が目についた。この部屋は奥にピアノがあり、展覧会のオープニングはよくここで行われた。私は結局行く機会はなかったけれど、ジャズのコンサートも最後まで定期的に行われていた。

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ホテルの調度品や絵画の多くはすでに売りに出されてしまったが、この古時計のように、特に価値の高いものは来年2月にネット上のオークションにかけられる(詳しくはこちら)。世界中の人が参加できるそうだ。

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朝食時は食べ物が置かれるPhotoplatz。

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ホテル廃止反対を訴える、ボゴタらしいユーモアにあふれた写真。一番右のカードには、「Weniger Gucchi, mehr Bogota (Less Gucchi, more Bogota)」と書かれている。

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ホテル・ボゴタに限らず、クーダム周辺では古くからの商店や映画館などが急速に消えつつあるという。

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最終日の12月1日は全館が開放されオープンデーに。食堂室にはここで使われていた食器が並べられ、蚤の市のような状態になっていた。私たちが泊まった3階のフロアも地元の人々でごった返し、その数日前、最後に過ごした静かな時間がかけがえのないものに思われてきたのだった。

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この日は、大部分の部屋を見て回った。各部屋の絵画の多くには番号が付けられ、欲しいと思ったものの番号と自分が出せる額を用紙に記していく。私は、いくつかの絵と古い地図、泊まった部屋のシャンデリアなどを希望に書いて出したが、何か当たるといいなあ。

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Hotel Bogotaは「良きヨーロッパ」を感じさせてくれる宿だったように思う。夜、サロンの高い天井を見上げ、ミシミシいう床を歩いていると、私はベルリンに来て最初に住んだ築100年のアパートでの時間を思い出した。戦前、戦後問わず連面と流れてきた時間を、旅行者も手頃な値段で味わうことのできたホテルだった。ベルリンの愛すべき存在がなくなるだけでなく、ここから出て行かざるを得なくなったオーナーのリスマンさん一家のことを思うと胸が痛む。

(了)
by berlinHbf | 2013-12-20 12:05 | ベルリン発掘(西) | Comments(6)

ホテル・ボゴタ 最後の記録(2)〜サロンでの時間

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Hotel Bogota (2013-11-27)

ホテル・ボゴタが廃業になって早2週間。一般公開となった最終日(12月1日)は、ホテルの最後の姿を見る地元の人、ホテルの調度品を買い求めたり競売に参加したりする人で溢れかえっていた。私はその後もう一度、オーナーのリスマンさんに用事があってホテルに出向いたのだが、ロビーだった場所には取り外されたランプや椅子などが所狭しと置かれ、「本当に終わってしまったんだなあ」という思いを新たにした。感傷的になってもしょうがないけれど、自分が最後に泊まった11月27日に時計の針を戻して、ホテルの記録の続きを残しておきたいと思う。

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私がボゴタをが好きだったのは、各階ごとにサロン風の自由に使えるスペースがあったことだ。サロンといっても、この奥には客室があり、通り抜け可能な「公共的」な場所であることには変わりないのだが、7月に初めてここに泊まったとき、いろいろな場所で本を読むのが楽しかった。ここは1階(日本でいう2階)のフリースペース。

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こちらは2階のフリースペース。1階のと似ているようで、調度品も色合いも微妙に違うのがいい。

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これは2階の片側の客室へ入る際に通るドア。BOGOTAの後にHoの文字が見える。以前リスマンさんに案内していただいたときに教えてもらったのだが、リスマンさん一家が家族経営でホテル・ボゴタを始める以前、この階にあった別のホテルの入口の名残なのだそうだ。

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上の階に上がるにつれて、末宗美香子さんの描いた絵が姿を現す。この出会いがまた楽しい。

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2階にあるサロンルーム。ここは本格的な「サロン」と呼べる雰囲気を持った部屋だ。1942年、シュリューター通り45番地のこの建物はナチスにより接収され、ナチスの「帝国文化院」(Reichskulturkammer)が置かれた。帝国文化院のトップだったHinkelという人のオフィスは、まさにこの部屋にあったという。

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私たちが泊まった3階にあるフリースペース。第2次世界大戦中、「帝国文化院」は検閲活動などを行い、ここに多くの人事記録が残っていたことから、終戦後は非ナチ化審議の舞台となった。Hotel BogotaのHPの中にあるホテルの歴史を記したページを読んで今知ったのだが、実際に非ナチ化審議が行われたのが、この3階だったという。私が最後にたまたま泊まった3階に、かつて指揮者フルトヴェングラーも現れたのかと思うと、これも何かの縁かと思ってしまったりもする。

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そして4階。吹き抜けのLichthofに面して、愛すべき短い廊下があり、窓からは中庭を見下ろせる。ここを通り抜けずにそのまま横に進むと、一際天井が高いスペースにぶつかる。

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ここはホテル・ボゴタの中でも、特別な空間だ。壁の全面にモノクロの古い写真が飾られている。この4階と5階に、1934年から38年にかけて、女流写真家のYVAがアトリエと住居を構えていた。YVAは芸名で、本名はElse Ernestine Neuländer-Simon。1900年にベルリンに生まれたイヴァは、25歳ですでに最初のアトリエを構え、売れっ子のファッション写真家として彼女の写真は多くの雑誌や新聞に掲載された。

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1936年から2年間、YVAの見習いとしてここで写真の修行を積んだのが、ヘルムート・ノイシュテッター。後にヘルムート・ニュートンの名で世界的に有名になる写真家だ。

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イヴァもニュートンもユダヤ系ドイツ人だった。ナチスの台頭により、ニュートンはドイツを離れたが、イヴァは職業を奪われた後もベルリンのユダヤ病院に勤務し、ドイツに留まった。結果、イヴァと夫は1942年6月、ソビボル強制収容所(現ポーランド)に送られ、そこで殺害されたとされている。

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2002年、ヘルムート・ニュートンは久々にベルリンのかつてのアトリエ、つまりホテル・ボゴタを訪れた。イヴァの元で過ごした2年間を、「自分の人生でもっとも幸福な時代」と彼は後に語ったそうである。

こういった数々の歴史的な場所を、このホテルのオーナーは、愛情を持って彩ってくださっていたように思う。常にどこかで展覧会やコンサートが開かれ、宿泊客以外の客人もホテルはおおらかに受け入れてくれた。人と人とをつなぐ、開かれた文化の場でもあった。この建物が今後どんな形で残るかはまだ決まっていない。

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サロンで静かな時間を過ごした後、自分の部屋に戻る。2002年にヘルムート・ニュートンがここを訪れた際に残した言葉" You are sleeping in holy rooms "を想いながら夢の眠りへ・・・。
(と言いたいところだが、部屋の暖房が十分に効いておらず、寒さに震えながら寝ることになったのだ)

(つづく)
by berlinHbf | 2013-12-15 12:13 | ベルリン発掘(西) | Comments(1)

発掘の散歩術(41) -グライスドライエック公園の誕生!-

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グライスドライエック公園の遊戯場で遊ぶ子どもたち

2000年9月末、私がベルリンにやって来てまだ間もない頃、地下鉄U2に初めて乗ってポツダム広場に向かった。電車は高架の上を走り、グライスドライエック駅の手前で眺望が開ける。その時の眼下の光景に私は驚いた。広大な敷地に赤錆びた線路がずらりと並び、雑草が生い茂っている。廃線になってから優に数十年は経っているはずだ。その奥に望めるポツダム広場の超モダン建築群とあまりに対照的な異観。「何なんだ、この街は!」と驚いたことを、昨日のことのように覚えている。

ポツダム広場の南側の、チョウチョウの羽のような形をした広大な空き地がそれだった。東側は旧アンハルター駅、西側は旧ポツダム駅の、それぞれ貨物駅だった場所だ。この敷地を公園にする案は、すでに1970年代からあったのだが、ようやく着工されたのは2008年になってから。段階的に工事が進められ、今年5月末、ついに東西2つのグライスドライエック公園がオープンした。


関連記事(当ブログで何度もご紹介してきた場所がついに公園として生まれ変わりました!):
天使の降りた場所(12) - 都心の中の無人地帯 - (2006-10-16)
100年の重みに耐えた橋 - 天使の降りた場所(13) - (2006-10-18)
記憶の鉄路をたどる(2) - グライスドライエックの貨物駅跡(上) - (2011-09-10)
記憶の鉄路をたどる(3) - グライスドライエックの貨物駅跡(下) - (2011-09-18)


落葉の季節も終わりに近付いた11月のある日、Sバーンのヨルク通り駅で降りて、公園の東側からじっくり歩いてみることにした。

一言に公園といっても、少し歩いてみると、実によく設計された多彩な要素を持つ公園であることに気付く。芝生がきれいに整備された一帯もあれば、ビオトープとして自然をありのままに生息させている地帯もある。東側の出口近くには、子ども用のアスレチック施設がいくつか設置されており、長いベンチやブランコを含め、木製の手作り感があり、デザインも面白い。使われなくなったレールや信号も、風景にさりげなく溶け込んでいる。

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公園東側に残された保存鉄道

ユニークなのは、保存鉄道として2線路が残されていることで、イベント開催時には南側の車庫から北側のドイツ技術博物館まで往年の客車が走る。ちなみにこの公園は、いくつもの鉄道路線に囲まれているので、高速で駆け抜けるICEから、高架をゴトゴトと走る2本の地下鉄まで、あちこちで電車が顔を覗かせて楽しい。

関連記事:
記憶の鉄路をたどる(4) - ドイツ技術博物館の保存鉄道 - (2011-10-28)

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さて、今度は公園の西側に向かってみる。北に向かって奥行きがあるせいか、歩いていてさらに開放感がある。広大な芝生のほか、小菜園(Kleingarten)の区域、大きなビーチバレーコート、スケートボード用のボウル(曲面で囲まれた窪地)などもあり、あらゆる世代の人が楽しめるように工夫されている。公園の設計に、地域住民が積極的に関わった成果だろう。北側の一角ではアパートの建設が進んでいたが、幸いなことに、この広大な公園内で建物が占める割合はわずかに過ぎない。

私の手元に、戦前のグライスドライエックを空から捉えた貴重な写真がある。これを見ると、隙間なく一面にレールが敷き詰められていた当時の様子に改めて驚く。この上を1838年、ベルリン−ポツダム間を結んだプロイセン最初の鉄道が走り、また戦前、「皇帝駅」と呼ばれたアンハルター駅を発つ長距離列車が通っていたわけである。ドイツ史において貴重な産業遺産とでも言うべき場所が、ところどころに「鉄」の香りをとどめながらも、緑に満ち溢れた姿に戻されたことを心から喜びたい。
ドイツニュースダイジェスト 12月6日)


Information
グライスドライエック公園
Park am Gleisdreieck


クロイツベルク地区の西側に位置する26ヘクタールの公園。最寄り駅はS バーンのYorckstr.のほか、U1・2のGleisdreieckなど。バリアフリーの出入り口もいくつか設置されている。公園の中央を通る直線道は、ベルリン − ライプツィヒ間を結ぶ自転車道として整備されるという。かつての貨物駅から公園への再生事業が評価され、2013年のベルリン建築賞を受賞した。自然保護のため、公園内での犬の放し飼いやバーベキューは禁止。
URL: www.gruen-berlin.de


カフェ・オイレ
Café Eule


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グライスドライエック公園の西端、クラインガルテンが並ぶ一角にある小さなカフェ。カフェといっても、オーナーの女性がコンテナハウスを改造して営業している。飲み物のほか、キッシュやスープなどがメニューに並び、野菜や果物、ハーブはこの菜園で収穫されたもの。広大な公園の中で、ほっと一息つける空間だ。

オープン: 月〜日 9:45〜20:00(冬期は金〜日のみの営業)
住所: Kleingartenkolonie auf dem Gleisdreieck
電話番号: 0176-6366 2370
by berlinHbf | 2013-12-11 14:13 | ベルリン発掘(西) | Comments(1)

ホテル・ボゴタ 最後の記録(1)〜重層的な時間を持つ空間

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Hotel Bogota (2013-11-27)

Hotel Bogota、このホテルの名前を最初に知ったのは写真家橋口譲二さんのHPにある「橋口便り」でだったと思う。2004年頃、橋口さんはクーダムから一歩入った通りにあるこのホテルに泊まりながら制作活動をされていた。橋口さんがボゴタについて記している箇所を読んで、私はこのホテルの存在が気になるようになった。当時橋口さんが書かれている日記の中から、少し引用させていただく。
一言でHotel Bogotaのことを語るのは難しいですが、ホテル全体が文化の香りに包まれていて、そこに居るだけで創造する力がこみ上げて来るような空間です。ベルリンに出かける予定のある方は是非一度Hotel Bogotaにも立ち寄ってみて下さい。さまざまな形で表現されたものが廊下やエントランスに掛けてあるというだけではなく、ホテルが公の場だということが良く分かると思います。ベルリンにあるホテルではなく、Hotel Bogotaのあるベルリンです。
(2004年12月21日)
旅の心得ですが、いいホテルの一番安い部屋を利用するのも、一つですよ。なぜならサービスと空間利用は安い部屋でも変わらないからです。アメリカ式高級ホテルには無い品がボゴタにはあります。アメリカ的文化には、これからいくらでも触れる機会があると思いますが、ボゴタみたいなホテルはそんなに探しても見つかるものではないのと、重層的な時間を持った空間はいくら資本を用意しても作れないからです。
(2005年1月5日)
私が初めてこのホテルの中に入ったのは、2009年春『素顔のベルリン』の取材でだったと思う。オーナーのリスマンさんに中を案内していただき、橋口さんが語るところの「重層的な時間を持った空間」に感動した。その年の暮、日独センターでの講演会で橋口さんとお目にかかる機会があり、直後にボゴタの中を案内していただいた。朝食ルームの大きな柱時計と一緒に写真を撮らせていただいたりもした。

関連記事:
橋口譲二さんが案内するホテル・ボゴタ (2010-01-27)

こんなご縁から、橋口さんが関わっておられるホテル・ボゴタでの展覧会の準備のお手伝いをさせていただくことになった。「異変」に気付いたのは、今年3月末宗美香子さんでのオープニングでリスマンさんが珍しく長い挨拶をされたときのことだ。ホテルの経営状況がよくないこと、ホテルでのアート活動の将来も不透明であることを話された。その2ヶ月ぐらい後、ホテル・ボゴタ廃業の危機のニュースがTagesspiegel紙を中心に連日賑わすようになった。私もその問題を取り上げたけれど、署名活動などの動きも空しく、ホテルの廃業が決まってしまった(これを書いている本日12月1日は20時までオープンデー。ホテルとして完全な状態で中に入ることのできる最後の機会となる)。

関連記事:
ホテル・ボゴタ終焉の危機 (2013-07-06)

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数日前、自宅から約20分の距離にあるボゴタに泊まりに行った。実は夏にも一度泊まっているのだが、私たちにとってもこれが最後の機会。かつてボゴタに泊まったことがありこのホテルに愛着をお持ちの方や、今回ベルリン行きが都合により叶わなくなった橋口さんのためにも、このホテルの最後の記録をここに残そうと思った。まずは、ドアから入ったところにあるレセプションの様子から。受付を済ませると、大きな鍵を受け取る。

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そこを進むと、ソファが置かれたロビーがある。左側は階段とエレベーター。奥に行ってみよう。

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この部屋はPhotoplatzと呼ばれ、いつも写真が空間を彩っている。ここで定期的に写真展が行われてきた。その奥が朝食ルームとなる。

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ロビーの反対側。大きな鏡の向こうにKabinettと呼ばれる私の好きな部屋がある。

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奥にある、時代がかった電話ボックス。

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ずっしりと重い黒電話を手に取るのはいつ以来だろう。受話器を耳に当ててみたら、「ツー」という音が聞こえてきた。今も現役で使われていたのだ。

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22時を過ぎると、奥のPhotoplatzは照明が落とされる。

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Kabinettはグリーンを貴重とした内装。

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初めてオーナーのリスマンさんにホテルを案内していただいたとき、かつてこの部屋でベニー・グッドマンがクラリネットを演奏したという話を伺った。

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Kabinettではつい最近展示が始まったヌード写真が飾られていた。ここのホテルで撮影されたもののようだ。ホテル・ボゴタのアートを大切にする姿勢は最後まで変わらなかった。

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次回は上の階をご案内します。

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本日12月1日のオープンデーの案内(Hotel BogotaのHPより)
ホテル内の調度品やアート作品は競売に掛けられるそうです。

Am 01.12.2013 wird von 12:00 – 20:00 Uhr ein Tag der offenen Türen stattfinden. Dort können bei Kaffee, Kuchen, Sekt, … die Räume des Hauses begangen werden.
Es findet kein sofortiger Verkauf statt, sondern alle Besucher können sich alles in Ruhe ansehen, niemand muß Angst haben, „ es wäre schon alles verkauft“, wenn er zu spät kommt.
by berlinHbf | 2013-12-01 13:15 | ベルリン発掘(西) | Comments(9)

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