ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


ベルリンガイドブック
「素顔のベルリン」増補改訂版
¥1,680
ダイヤモンド社
(Amazon、全国各書店にて発売中)

本書は2009年10月発行「素顔のベルリン」の増補改訂版です。2013年に改めて新規取材を行い、データを更新。レストランやショッピング、コラムなどのページも増量し、より充実したガイドブックに生まれ変わりました。

Amazonにてネット購入ができます。



『街歩きのドイツ語 』
¥1,575
三修社

豊富なビジュアルとドイツ語フレーズを楽しめる1冊。基本のあいさつ表現から、街にまつわるドイツ語豆知識まで、ガイドブックとともに旅に役立つ会話集です。




『素顔のベルリン 過去と未来が交錯する12のエリアガイド 』
¥1,575
ダイヤモンド社
(2009年発売)

地球の歩き方シリーズ初、待望のベルリンガイドブック誕生!比類なき歴史を抱えつつ、明日へ向かって日々進化し続ける首都ベルリン。「ドイツで最もドイツらしくない」といわれるこの町の知られざる魅力を、現地在住著者が12のエリアにわけて徹底紹介。


現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

ベルリン更新情報
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屋根のつららにご用心

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この寒さで、アパートが結構大変なことになっています。私はアルトバウのアパートの中庭に面して住んでいるのですが、中庭から通りへ出るドアが完全に凍結してしまい、どんなに力を入れて押しても開きません。屋根の上のつららが少しずつ溶けてきて落下し、ドアの把手はご覧の状態。こんなの初めて見ました。

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部屋からアパートの屋根を見上げると、大体こんな感じになっています。

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中でも一際大きいのがこれ。どう見ても1メートルぐらいはありそうな巨大つららです。見た目はなかなかきれいですが、ロマンチックな気分に浸っている場合ではありません。

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恐ろしいことに、この巨大つらら、通りへ出るもう1つのドアのちょうど真上にできているのです。こんなものが突然頭上に落ちてきたらと思うと・・・。完全に凍結したもう1つのドアについては、隣人が大家さんに連絡してくれたそうですが、この時期いつレスキュー隊(?)が来てくれるか全くの不明。これで気温が急に上がったら、あの危険なつららたちは、一気に落下してくることでしょう。外に出る時は毎回ヘルメットでもかぶるか・・・。

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by berlinHbf | 2010-12-29 16:07 | ベルリンあれこれ | Comments(9)

末宗美香子展のオープニング

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少し時間が経ってしまいましたが、先月30日、Hotel Bogotaで行われた、末宗美香子さんの展覧会のオープニングの様子をお伝えしたいと思います。

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18時半から朝食ルームで、独日協会のシュミットさん、Bogotaのオーナーのリスマンさん、日本大使館の菅谷さんが挨拶されました。最後にピアノとヴァイオリンの演奏も。

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その後、来場者は吹き抜けのLichthofがある階に上がり、末宗さんの作品と対面することになります。製作段階からその様子を見てきた者としては、感慨もひとしおでした(製作中の様子はこちらより)。壁に固定されている絵もあれば、屋根からつり下げられている絵もあり、人間のような、動物のような独特なキャラクター。どこかユーモアのあるものから、ちょっとおっかないものまで、全てが渾然一体となってひとつの世界を形作っていました。

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オープニングとしては大盛況だったと思います。ブログの記事を読んで来てくださった方もいて、うれしかったです。末宗さんのご両親や横須賀市在住のお友達も見えていて、面白い出会いもありました。

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天井から吊るされた作品は、風に吹かれてゆっくりと回転します。それがどこか踊っているように見えて、自分まで末宗さんの世界の「住人」になったような気分も楽しみました。

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「Mori wo kakenuke tadoritsuku」と題されたこの絵を見て、思わず「《魔笛》のパパゲーノみたい」と言った人がいたそうです(末宗さんは特にそういう意図はなかったようですが)。絵は春頃まで展示される予定です。ホテル・ボゴタの宿泊客でなくても、日中はいつでも見学可能なので、どうぞお気軽にお立ち寄りください。

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by berlinHbf | 2010-12-27 23:57 | ベルリン文化生活 | Comments(0)

マルティン・レーアさんの授章式@日本大使館

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4月にインタビューをさせていただいた知人のマルティン・レーアさんが、この度日本政府から勲章を受章された。個人的にもとてもうれしい出来事だったので、ここでご紹介させていただきたいと思う。

関連記事:
マルティン・レーアさんインタビュー(1) (2010-05-08)
マルティン・レーアさんインタビュー(2) (2010-05-09)

日本大使館から授章式招待の電話をいただいたのが11月の末。ただ、レーアさんが一体何を授章されたのか、授章式がどういう内容なのかも詳しくわからないまま、先週月曜日、ティーアガルテンの日本大使館に妻と足を運んだ。(普段の領事窓口の入り口とは違う)正門から中に入ったこと、入り口で名前の書かれた席札を受け取ったことで、本格的なディナー付きの会であるとこの時ようやくわかった。とりあえず、スーツを着てきてよかったと少々安堵(笑)。

大広間に通され、久々に会った知人と立ち話をしたり、東山魁夷の日本画を眺めていたら、やがて神余隆博大使とレーアさんら賓客が現れ、授章式が始まった。最初に大使の挨拶、続いてレーアさんがブランデンブルク州の儀典長だった当時、州首相だったマンフレート・シュトルペ氏の挨拶、そして最後にレーアさんが挨拶。ヨハネス・ラウ元大統領の未亡人クリスティーナさんも見えていて、華やかでなごやかなムードの中、式は進んだ。その後、神余大使から賞状と勲章が授与。今回レーアさんが授章したのは「旭日小綬章」で、 授章理由は「我が国要人の接遇及び日本・ドイツ友好親善に寄与」とのこと。最後に、ベルリンの音楽大学の学生さんによってシューマンのピアノ四重奏曲が奏でられて(その中に友達の顔を偶然見つけてびっくり)、授章式は終了。

その後、シャンデリアのきらめく別室に通されて夕食が始まった。和洋を絶妙に配した食事はどれも美味で、夢のような時間だった。食事の後、コーヒーを飲みながらレーアさんと話していたら、「(日本に縁の深い)両親がこの場にいたら、さぞ喜んでくれただろう」と感慨深そうに語っておられたのが印象的で、私たちも本当にうれしかった。

レーアさんに出会ったのは2003年の2月だったと思う。あるチェリスト宅のパーティーでだった。たまたまそばにいた紳士と立ち話をしたら、それがレーアさんで「今日、ラウ大統領が、ベルリンを訪問中のプーチン大統領と食事をする場に同席しました」と何気なく話されたのでびっくりした。その時は「プロトコール」という彼の仕事の内容はまだわからなかったのだが、その2週間後、ベルビュー宮殿の内部を案内していただき、レーアさんが大統領府の中でどういう要職にあるのかをようやく理解した。ちょうどベルリンでは小津安二郎の生誕100周年の特集が組まれており、ポツダム広場の映画館に『晩春』を一緒に観に行くことになった。上映まで少し時間があったので、夕食をご一緒し、そこで、父親の仕事の関係で幼少期に6年間日本に住んだこと、その体験がその後の自分に少なからず影響を及ぼしたことなどを話してくださった(小津映画の何本かも、50年代当時リアルタイムで観たという)。レーアさんと話していて感じたのは、その物腰の柔らかさ。わかりやすい言葉を選んでゆっくり話し、私のつたないドイツ語にも真摯に耳を傾けてくださる。そして、周囲へのさりげない気配り。育った環境も歳もまるで違うのに、この方とは心を通わせられると感じた。音楽という共通の趣味があったことも大きかったと思う。レーアさんとはいろいろな思い出があるが、いつお会いしても「こういう大人になりたい」と思わせてくれる方である。

いつの間にか夜も12時近くになっていて、周りの方はもうほとんど帰途についていた。帰り際、神余大使ご夫妻に少しお話しすることができた。ドイツニュースダイジェストに書いている私の記事は折に触れてご覧くださっているそうで、「これからも積極的に日独の交流に務めてくださいね。応援しています」と激励のお言葉までいただき、これにも感激。妻も大変楽しかったようで、行く前は緊張気味だったのだが、「みなさん、おエラい方というか、、、すごい方ばかりの堅いパーティーを想像してたけど、気さくに話したり挨拶を交わしてくださるし、私のつたないドイツ語でもちゃんと聞いて返事をしていただけたのが、うれしかった」と話していた。2010年がそろそろ終わるという時期、来る年に向けても、大きな刺激と活力をもらった一夜でした。

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by berlinHbf | 2010-12-26 16:32 | ベルリンの人々 | Comments(2)

Frohe Weihnachten!

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今年はベルリンのクリスマスの様子をほとんど伝えていなかったので、クリスマス・イブの今夜、ここで何枚かご紹介したいと思います。どうぞご覧ください!

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ミッテのジャンダルメンマルクトのクリスマスマーケット。

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ベルリン中央駅のツリー(スワロフスキー社製作による)。

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第2アドヴェントのノイケルンのクリスマスマーケット。

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ノイケルンのリヒャルト広場。

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今度はウンター・デン・リンデンへ。

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ノイエ・ヴァッヘ前のサンタさん。

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州立歌劇場横のクリスマスマーケット。

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最後はやはりブランデンブルク門へ。

皆さん、どうぞ素敵なクリスマスをお迎えください!

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by berlinHbf | 2010-12-24 17:07 | ベルリンのいま | Comments(0)

NHK「テレビでドイツ語」1月号

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NHK「テレビでドイツ語」2011年1月号のテキストが発売になりました。「映画で歩くベルリン」も大詰めを迎え、今回はあの『ベルリン・天使の詩』を取り上げています。2006〜07年にかけて綴ったこの映画のロケ地をめぐるシリーズ(こちらより)は、いまでも読んでくださる方がいるようで、たまにメールをいただくことがあります。今回久々に映画を観直して、あの時とは少し違う視点から描いてみました。一読いただけるととてもうれしいです。

今月の表紙は、ライヒスターク(連邦議会議事堂)の屋上のドーム。先日のテロ警告騒ぎを機に一旦閉鎖され、最近また見学可能になりましたが、申し込み制になったとのこと(詳細はこちら)。まあ、この寒さの中を長時間待つよりはいいのかもしれませんが、この物騒な状態が早く終わることを願っています。

最新号のトピック(NHK出版のHPより)
今月もベルリンの穴場スポットを紹介。文化の黄金時代、1920年代のエンターテインメントを彷彿とさせるヴァリエテ、現代デザインに大きな影響を与えたバウハウスの展示館、旧東ドイツの生活に触れる博物館を訪れます。新しい助動詞の使い方なども覚えながら、ベルリンを楽しみましょう。

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by berlinHbf | 2010-12-19 21:25 | ドイツ語関連 | Comments(5)

橋口譲二『Hof ベルリンの記憶』とプレンツラウアー・ベルク(2)

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橋口譲二さんが20年前に撮ったプレンツラウアー・ベルク地区の写真を見ながら歩くと、いかにこの地区が変貌したかを今更ながら実感する。その時の橋口さんの感慨は、「ミッテの朽ちたアパートから見えるもの」で書いたことがある。注意して歩くと、きれいに改装されたアパートの一部分に、アパートの壁に戦前の看板文字が残されているのを見つけることがあった。Särge(棺)とかBestattung(埋葬)などの文字が見えるから、葬儀屋の看板に違いない。とはいえ、この周辺はあまりにきれいになってしまい、こういう生々しい形での過去の痕跡は、本当にわずかばかりになってしまった。

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続いて遭遇したのがStubbenkammerstr.にあるこのアパート。突き出た円柱のバルコニーと屋根の形。この地区で改修されずに時が流れるまま朽ちているアパートはもはや珍しい。今度こそこれではないかと、私は建物を凝視した。

よく見ると結局これでもなかったのだが、同じプレンツラウアー・ベルク地区内でも共通して見られるアパートの建築スタイルがあるのは、ちょっとした発見だった。ゼーネフェルダー通りをさらに歩くと、次に曲がるのがレーマー通り。その角に差し掛かったところで、私は思わず「あっ」と声を上げ、そのまましばらくぼうっと佇んでいた。

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橋口譲二さん撮影の写真(1990年代初頭)

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Raumerstraße (2010.11)

今度は細部を確認する必要はなかった。一瞬でここだと確信したからだ。通りの店は全て変わっていたが(おそらく大部分の住人も?)、2枚の写真を見比べるといかにオリジナルに忠実に修復したかがよく見て取れる。寒い日の午後だったが、私の気分は高揚していた。橋口さんからの依頼がなかったら、プレンツラウアー・ベルクの普通のアパートに、これほどまでに感動的に「出会う」ことはなかっただろうと思う。

家に戻って早速橋口さんに報告したら、大変喜んでくださり、「このまま中村さんのブログで書かれたらどうでしょう。住所探しとはいえ、ウロウロされることで、中村さん自身が発見をされているからです。ウロウロするのは、僕と中村さんは分野は違えど基本中の基本です」と長年ベルリンを歩いてきた方ならではのことを書いてくださった。実はその後もいくつか似た依頼をいただいたが、そちらの建物は結局どうしても見つからず、とても残念だった。写真集『Hof ベルリンの記憶』の発売予定日は、当初の予定から遅れ、年明けの1月25日になったそうです。ベルリンの1つの文化遺産にもなり得る写真集を、皆さんにもじっくり見ていただきたいと思います。私も非常に楽しみです。

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by berlinHbf | 2010-12-16 12:15 | ベルリンを「読む」 | Comments(7)

橋口譲二『Hof ベルリンの記憶』とプレンツラウアー・ベルク(1)

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11月の半ば頃、写真家の橋口譲二さんからメールをいただいた。橋口さんの新しい写真集『Hof ベルリンの記憶』(岩波書店)の年内の発売が迫り、今回本に掲載されるある写真の現在の住所を調べてもらえないだろうか、という内容だった。メールに添付されていたのが上の写真(発売前にも関わらず掲載許可をくださった橋口さんには感謝申し上げます)。壁崩壊直後の90年代初頭、橋口さんがミッテやプレンツラウアー・ベルクを歩き回って撮影した膨大な写真の中の1枚で、凝った円柱が印象的なアルトバウのアパートが克明に記録されている。

橋口さんによると、シェーンハウザー・アレーのエバースヴァルダー通り駅の近くではないかとのこと。ある日の午後、U2のゼーネフェルダー広場から、シェンハウザー・アレーの左右を注視しながら北に歩いてみた。結局、北端のSバーンのシェーンハウザー・アレー駅まで歩き切ったが、件のアパートはついに見つからなかった。文化財としても価値あるこの古いアパートが取り壊されている可能性は少ないだろう。だが、プレンツラウアー・ベルクといえど広い。正直「これは結構な難題だな」と思った。

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「ひょっとしたらシュターガルダー通りかもしれません。これで見つからなかったら諦めましょう」という橋口さんからのメールを頼りに、その数日後、シェーンハウザー・アレーから東に延びるStargarder Straßeを歩いてみた。なるほど、確かにゲッセマネ教会の周辺など、壮麗なアパートが多く構えている。橋口さんの写真のコピーを見ては建物を見上げ、ということを繰り返しながらゆっくり歩いた。だが、似ている建物にはいくつか出会ったものの、先へ進むにつれ、建物の造りは次第に地味になっていった。

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このまままっすぐ歩いてもダメだと思い、右側のゼーネフェルダー通りへと折れてみた。そこですぐに出会ったのがこのアパート。円柱のある出っ張ったバルコニーが、橋口さんの写真のとよく似ている。ひょっとして・・・。が、ネオ・ルネサンス様式(?)の特色ある屋根の形がやはり違う。橋口さんが20年前に撮影したアパートに近づいているような、いやそうでもないような、漠然とした感覚を頼りにうろうろ先へと進んで行った。

(つづく)

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by berlinHbf | 2010-12-14 14:37 | ベルリンを「読む」 | Comments(2)

アンドラーシュ・シフの《ゴルトベルク変奏曲》

アンドラーシュ・シフのベルリンでの人気はすごい。数年前のベートーヴェンのチクルス、今シーズンのバッハ選集のシリーズと、毎回ほぼ例外なくチケットが売り切れてしまう。火曜日の《ゴルトベルク変奏曲》も早々にソールドアウトだったから半ば諦めていたのだが、数日前フィルハーモニーに行ってみたら22時から追加コンサートを行われることを知り狂喜乱舞。しかも、シフ自身の希望により、ハイチ地震のチャリティーコンサートで入場無料になったそうだ。運よくチケットは残っていて、幸運だった。

が、その直前に送迎の仕事でテーゲル空港に行ったところ、飛行機が1時間ちょっと遅れる旨が表示されており、真っ青になった。22時には絶対間に合わない。半分諦めかけたのだが、そこからは思っていたより早く事が進み、ポツダム広場から雪の中を急ぎ足で歩いて行くと、20分遅れで会場に着いた。演奏途中で中に入れるかどうかが心配だったものの、一番上のドアから室内楽ホールに入れてくれた。

シフの「ゴルトベルク」は全ての箇所を繰り返すので、まだ曲の序盤だった。やれやれ。緊張感から解放されて、最初はただ無心に音楽に耳を傾けていた。シフの演奏は、各変奏曲の違いをドラマチックに際立たせるというタイプのものではなく、どちらかというとしみじみ淡々としたものだ。一音で胸を鷲掴みにされたというわけではないものの、聴いているうちにじわじわと心に沁み入ってくる。変奏曲の間に時々長い沈黙が織り込まれるのだが、その沈黙までもが美しいと感じてしまう演奏だった。短調の第21変奏から、ふっと何かが解き放たれたかのように第22変奏に移った時、思わず涙腺が緩んでしまった。全曲で一番長大な第25変奏が終わってから、終曲までの展開も実に素晴らしい。普通なら早いテンポで前へ前へと進む第26変奏も、シフの手にかかると、夢幻のニュアンスをたたえた小品に生まれ変わる。湖上に浮かぶ白鳥を連想してしまう華麗な第28変奏、さすがに技術の高さを垣間見た第29変奏と歓喜で沸き立つ第30変奏。そして冒頭のアリアへの回帰・・・。2度目の繰り返しで、シフはほとんど装飾を外して弾いていた。全曲1時間15分ぐらいだったろうか。この上なく豊穣で、歌に溢れたバッハの世界だった。

最後の一音が消えて、かなり長い沈黙がホールを包み込む。この時間がまた心地よかった。拍手は鳴り止まず、聴衆は総立ちでピアニストを讃える。音楽同様、シフの舞台での振る舞いには飾り気がまったくなく、一晩で「ゴルトベルク」を2回弾き終えて、さすがにほっと安堵しているように見えた。22時開演の追加公演だったが、完全に満員。こういうところはさすがベルリンだと思う。音楽を心から求めて人が集まる空間は素敵だ。帰りは再び雪を踏みしめながらバス停まで歩いたが、心なしか寒さは感じなかった(ちょっと言い過ぎ?)。

Di 7. Dezember 2010 22 Uhr
KAMMERMUSIKSAAL
András Schiff Klavier

Johann Sebastian Bach
Goldberg-Variationen BWV 988

Eintritt frei, Spenden zugunsten von UNICEF und der Hilfe für die Erdbebenopfer in Haiti werden erbeten.

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by berlinHbf | 2010-12-10 16:26 | ベルリン音楽日記 | Comments(13)

発掘の散歩術(5) -晩秋のグルーネヴァルトを歩く-

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11月のある日曜日の朝、グルーネヴァルトの森に行ってみようと思い立った。その昔、狩りを愛好するブランデンブルク選帝侯が建てさせた「狩りの宮殿」が、森の中の湖のほとりにあるという。人里離れた森の中で、狩りに興じる孤独な権力者の姿にはどこか惹かれるものがあり、一度訪ねてみたかったのだ。

115番のバスに乗ってローゼネックに差し掛かる辺りから、周囲の風景が変わってくる。ウィ-ン風のカフェハウス、高級老人ホーム、意匠を凝らした豪邸などが並び、さすがに古くからの高級住宅街だけのことはある。クレイ・アレーとケーニギン・ルイーゼ通りの角のバス停を降り、すがすがしい気分で森の中を歩いて行くと、頻繁に家族連れやジョギングする人とすれ違った。湖のほとりに出ると、ソーセージの屋台まで立っていて賑わっている。11月半ばにしては暖かい日だったにせよ、私の頭の中にあった静寂の中に佇むお城のイメージとは少し違うようだ。

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建設当時はルネサンス様式、後にバロック様式に改造された「狩りの宮殿」

門を抜け、中庭に入ると、真っ白な宮殿が現れた。レミーゼと呼ばれる馬車置き場を囲む建物には鹿の角が均等に並び、ここがかつて狩りの館だったことを偲ばせる。ヤークトシュロスこと「狩りの宮殿」は1542年、選帝侯ヨアヒム2世の命によって造られた。ベルリンに今も残るホーエンツォレルン家の王宮としては最古のものである。宮殿の当初の名前は、入り口の上の碑文に残されている通り、“Zum grünen Wald”(緑の森へ)。それは後に周辺の森「グルーネヴァルト」の名に受け継がれた。ちなみに選帝侯は、ベルリン市内の王宮から西に15キロほど離れたこの狩りの宮殿へと続く道を作らせたが、これは後にベルリン屈指の目抜き通り“Kurfürstendamm”(「選帝侯の道」、通称「クーダム」)へと発展することになる。当時のベルリンは辺境の一地方都市だったとはいえ、選帝侯は時々この離宮を訪れては湖を眺め、しばし日常の雑事を忘れたのだろうか。幸い、狩りの宮殿は戦災を受けることもなく、湖への眺めも当時とほとんど変わっていないはず。私の心もしばし過去へとさすらう・・・・・・。

ところが、グルーネヴァルト湖のほとりの散歩道を歩き始めると、そんな気分は一気に吹き飛んだ。決して広くない歩道にしては、犬を引き連れている人の割合が尋常ではないのだ。あちこちからワンワン、キャンキャンと鳴き声が響き渡り、私の周りでは犬同士の追いかけっこが始まった。しばらく歩くと、岸辺が見えてきて、犬が次々と勢いよく湖に飛び込んでいる。犬嫌いの人が何も知らずにここに散歩に来たら、恐れおののいてしまうかもしれない。が、犬たちはもちろん、それを眺める飼い主たちの楽しそうな表情といったら・・・・・・。自宅に戻り、手元のガイドを読んで納得した。「犬を公に放し飼いできる区域としては、ベルリンで最も人気がある。犬とその飼い主がこれほどはしゃぎ、泳ぎ、遊べる場所は、首都の中ではほかにない」。

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犬とその愛好家のパラダイス、グルーネヴァルト湖

ところで、ツォー駅からX10番のバスに乗れば、クーダムを通って、狩りの館へと連れて行ってくれる。狩りに出向く選帝侯の気分が味わえるかも。
ドイツニュースダイジェスト 12月3日)


Information
グルーネヴァルト・狩りの宮殿
Jagdschloss Grunewald

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1階はルネサンス時代の装飾がよく保存され、2階は15~18世紀のドイツとオランダの絵画コレクションを展示(特にクラナッハが有名)。12月4、5日(11:00~19:00)は、宮殿の中庭でメルヘンチックなクリスマスマーケットが開催される。2011年4月から約2カ月間は、駐車場の拡張工事のため閉鎖される予定。

開館:4月~10月は月曜を除く10:00~18:00。
11月~3月は土日祝の11、13、15時のガイドツアーでのみ入場可。
住所: Hüttenweg 100, 14193 Berlin
TEL:(030)81 33 597
www.spsg.de


ブリュッケ美術館
Brücke-Museum

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グルーネヴァルトを訪れたら、ぜひ立ち寄りたい美術館。1905年に結成されたドイツ表現主義のグループ「ブリュッケ」に的を絞った世界唯一の美術館で、キルヒナー、ノルデ、ヘッケルなどの充実したコレクションをゆったりとしたスペースの中で鑑賞できる。「ブリュッケ」とその周辺にまで幅を広げた特別展も随時開催。

開館:火曜を除く11:00~17:00
住所:Bussardsteig 9, 14195 Berlin
TEL:(030)831 20 29
www.bruecke-museum.de

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by berlinHbf | 2010-12-09 12:20 | ベルリン発掘(西) | Comments(0)

テレージエンシュタット訪問記(2)

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「労働は人を自由にする」と書かれた門をくぐり抜けると、中庭があり、いくつもの監房や独房の建物が並んでいた。

前回書いたように、もともとこの小要塞は18世紀末に作られた。当初ここに投獄されたのは軍人の他、中欧や南東ヨーロッパの民俗解放戦線に携わった人々だったという。入り口でもらったパンフレットによると、ナチス・ドイツの占領後、1940年にこの小要塞にゲシュタポのプラハ本部の刑務所が造られ、同年6月14日に最初の囚人が送られてきた。チェコ人が多かったそうだが、それ以外にもソ連、ポーランド、ドイツ、旧ユーゴ、もちろんユダヤ人も。大多数は、ナチスに対する抵抗運動のかどで逮捕された人々だった。

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テレジンの小要塞は、パンフレットに番号と経路が記されているので、それに従って見学するのが一番よい。ところが、この17、18と番号が書かれた場所まで来て、一瞬立ちすくんでしまった。18は「死体保安所。ここに拷問死した囚人の遺体が置かれた」そうだ(いやだなあ・・・)。隣の17は地下道。すぐにでも引き返したくなる場所だったが、経路図を見ると、この地下道をくぐり抜けないと次の19に行けないようになっている。しかもこれがたいそうな距離で、ざっと400メートルはありそう。「まさか囚人の遺体を運ぶのに使われた地下道じゃないよな」と思いつつパンフレットを見ると、「元の要塞の一部。戦時中は利用されなかった」と書かれていた。とはいえ、細長く暗い(もちろん明かりはあるものの)地下道を延々と歩いて行くのはかなり気が滅入った。1人で来ていたら、もっと恐かったかもしれない。

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ようやく地下道をくぐり抜けたと思ったら、そこは処刑場跡・・・。「小要塞で死刑執行が始まったのは1943年。ここで、約250人の囚人が銃殺された。最大の処刑が行われたのは1945年5月2日で52人が処刑された。その大部分は、レジスタンス組織のメンバー」。

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この門をくぐると、再び小要塞の中に戻ることになる。これは通称「死の門」。囚人にとっては、処刑場へと導く門だったのだ。

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あまりゆっくり見て回る時間がない中、東側の突端部に行ってみる。中庭に監房が並ぶその奥は、やはり見せしめのための処刑場だった・・・。「1945年3月、38号監房から脱走を図り、失敗した3人の囚人のうち1人が、他に無作為に選び出された2人の男性と1人の女性と共に、中庭の先端部で見せしめのため処刑された。逃亡を試みた残る2人も逮捕され、第一中庭の独房近くで石たたきの刑で処刑された」。

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劣悪な居住条件の中、戦争末期にはチフスが広がり、多くの人が亡くなったという。ここが開放されたのは、1945年5月5日に看守が逃げ出した後、ソ連軍がやって来た5月8日のことだった。

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どこを歩いても、いまでも死の気配がすぐそばに感じられるテレジンの小要塞を一通り見終え、入り口に戻ってきた。決して長い時間ではなかったが、疲労感を感じる。ここは要塞全体が完全に隔離された刑務所だった。が、テレジンはこれでおしまいではなかった。

(つづく)

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by berlinHbf | 2010-12-05 23:30 | 欧州を感じる旅 | Comments(4)

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