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ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


ベルリンガイドブック
「素顔のベルリン」増補改訂版
¥1,680
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(Amazon、全国各書店にて発売中)

本書は2009年10月発行「素顔のベルリン」の増補改訂版です。2013年に改めて新規取材を行い、データを更新。レストランやショッピング、コラムなどのページも増量し、より充実したガイドブックに生まれ変わりました。

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『街歩きのドイツ語 』
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豊富なビジュアルとドイツ語フレーズを楽しめる1冊。基本のあいさつ表現から、街にまつわるドイツ語豆知識まで、ガイドブックとともに旅に役立つ会話集です。




『素顔のベルリン 過去と未来が交錯する12のエリアガイド 』
¥1,575
ダイヤモンド社
(2009年発売)

地球の歩き方シリーズ初、待望のベルリンガイドブック誕生!比類なき歴史を抱えつつ、明日へ向かって日々進化し続ける首都ベルリン。「ドイツで最もドイツらしくない」といわれるこの町の知られざる魅力を、現地在住著者が12のエリアにわけて徹底紹介。


現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

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雪のモアビットを歩く

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数日前、ある友達の家に寄った帰り、せっかくだからと少し散歩しながら帰ることにしました。ティーアガルテンの北西に位置するモアビットという地区は、これまであまり紹介したことのないエリアです。U7のMierendorffplatzの駅から、Kaiserin-Augusta-Alleeを西に向かって歩きます。この辺はまだシャルロッテンブルク地区に属します。

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この日は久々に0度近くまで気温が上がったんですが、午後からはまた雪。シュプレー川につながる運河も完全に白銀の世界でした。川面は完全凍結したためか、ところどころで人が歩いた跡が見えますね。この橋を越えるとモアビットへ。

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モアビットは19世紀後半以降、労働者街として発展したエリアなので、その時代のの工業遺産が多く残っています。このLudwig-Loewe-Höfeというホーフは、かつてボール盤とフライス盤の工場だったそうですが、装飾も含め工業施設だった建物とは思えないほど立派です。内部は改装され、現在はこんなきれいなホールも中にあります(Loewe Saal)。

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私がまだ行ったことがない場所も含めこの辺には面白そうなものがたくさんあるのですが、ドイツの工業史の中でも重要な遺産はこれでしょうか。ペーター・ベーレンスによる設計、1909年に造られたAEG社のタービン工場です。

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この工場、横に回ってみるとその巨大さが実感できます。もともとは124メートルあったのが、1939年には247メートルまで拡張されたのだといいます。昨年紹介した(やはりAEG社の)シェーネヴァイデのケーブル工場と比較しても面白いかもしれません。

関連記事:
オーバーシュプレー・ケーブル工場でのコンサート (2009-11-16)

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Turmstraßeに入ると、急に賑やかになり、トルコやアラブ系の人や店も増えてきます。そうそう、テーゲル空港から市内に向かうバスTXLは、ここを通ります。ベルリンを訪れる人々の多くが、最初に目にする「街らしい街」といえるかもしれません。

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by berlinHbf | 2010-01-30 23:57 | ベルリン発掘(西) | Comments(0)

橋口譲二さんが案内するホテル・ボゴタ

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先日(昨年11月26日)、ベルリンの日独センターで写真家、橋口譲二さんの講演会が開かれました。1980年代から現在に至るまで、橋口さんが撮り続けてきた写真を紹介しながら、自身とベルリンの関わりについて語るという大変興味深いものでした。たまたま、同センターの関係者の方が私の著書を橋口さんにプレゼントしてくださったことから知り合う機会を得て、「あなたに案内したい場所がある。今度会えませんか?」と、思いがけない言葉を掛けてくださったのです。

その週末、橋口さんが連れて行ってくださったのは、クーダムから一歩入った通りにあるホテル・ボゴタ(Hotel Bogota)。橋口さんが20年近く定宿にされているというホテルです。中に入るとまず、簡素な外観からは想像がつかないほど重厚な内装に強い印象を受けました。時を重ねることでしか生まれない、歴史の厚みのようなものを感じたのです。

この建物が住居として建てられたのは1911年。20年代には政治家や芸術家が集う場となり、若き日のベニー・グッドマンが演奏した部屋は今も残されています。4階と5階は有名な女流写真家イヴァのアトリエ兼住居で、36年にはヘルムート・ニュートンが見習いとしてここにやって来ました(しかしナチスの台頭により、ユダヤ人のニュートンは亡命、イヴァは後に殺害されました)。

第2次大戦中は、ナチスがここに「帝国文化院」を移し、検閲活動などを行いました。多くの人事記録が残っていたことから、終戦直後は非ナチ化審議の舞台となり、指揮者フルトヴェングラーもここに呼ばれた1人です。戦後、いくつかのホテルが統合されてホテル・ボゴタが誕生したのが70年代。現在まで家族経営が続けられています。

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「この古い時計の前で朝食をとるのが好き」と語る橋口譲二さん

宿泊料は40ユーロからとリーズナブル。内装は部屋ごとにすべて異なり、リピーターが多いそう。「僕がとりわけ好きなのは朝の時間。部屋にコーヒーの香りがほのかに立ち込め、グレゴリア聖歌が聞こえてきます。朝食はシンプルながら、どこか厳粛な雰囲気があるんです」。

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フロアごとに誰でも自由に使えるスペースがあるのもこのホテルの特徴

ホテル・ボゴタを語る上で欠くことができないのが、ホテル内を彩るアートの数々。定期的に展覧会も開かれているほどで、吹き抜けのホールに飾られた日本人作家、大星純一さんの連作はひときわ鮮やかでした。

「このホテルは『文化』を本当に大切にしています。特に若い人たちに泊まって欲しいですね。ここで感じることは少なくないと思うし、何かに気付くきっかけになってもらえれば」と橋口さんは語っていました。
ドイツニュースダイジェスト 1月29日)

Hotel Bogota Berlin
Schlüterstr. 45
D-10707 Berlin
Tel. +49(0)30-881 50 01
Fax +49(0)30-883 58 87

追記:
大変残念ながら、ホテル・ボゴタは2013年12月をもって廃業となりました。

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by berlinHbf | 2010-01-27 17:30 | ベルリンの人々 | Comments(7)

Twitter始めました

つい最近、Twitterを始めました。Wikipediaによると、「ブログとチャットを足して2で割ったようなシステム」と説明されていますが、このツイッター、ブログやSNSなどに比べて、いまひとつその用途というかメリットがよくわからなかったんです。でも、友達などに勧められて、とりあえずブログと並行して使ってみることにしました。始めてみて(まだ2日も経っていないのですが)、なるほど、ブログともSNSとも一味違う、人と人とのゆるやかにしてリアルなつながりが形成されているのがじわじわと感じられてきました。よかったら、今後はこちらでもよろしくお願いします。

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by berlinHbf | 2010-01-26 10:58 | その他 | Comments(5)

九州・山陽紀行(3) - 念願の萩を訪ねる -

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ベルリンに戻ってからもうしばらく経つので、少々気が引けるのですが、12月末の旅行記の続きを書きたいと思います。自分の旅の記録としても留めておきたいので。

12月23日(水)は、早起きして博多発7時発の「ソニック3号」で出発。JR九州の列車はどれもデザインが楽しいがこれも例外ではなかった。本州に戻り、ほのかな潮風を感じながら、下関発8時56分の鈍行に乗る。

やがて日本海が見えてくると懐かしさが込み上げてきた。中学校を卒業した春休み、青春18切符を使い、日本海沿いのルートで長崎から稚内まで10日ほどかけて横断したことがあった。今振り返っても、日本列島の風土や気候の多様性を肌で感じる、かけがえのない機会だった。この線に乗るのはそれ以来だったが、風景といいひなびた家並みといい、ほとんど変わっていないようにさえ見える。当時と違うのは、時刻表から特急も急行も姿を消してしまったことで、翌日バスを利用したら、そちらの方が利用客は多かった。山陰本線はますます長大なローカル線になり果てているのだろうか。ただ、海に寄り添ったり離れたりを繰り返す車窓の魅力は本当に抗い難く、海に架かる虹が見られたのもよかった(冒頭の写真)。小串、長門市で乗り換え、東萩着12時3分。

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萩はぜひ訪れたい町だった。そう思うきっかけとなったのは、一昨年の一時帰国の際、山根寿代さんにお会いしたことである。山根さんの祖父正次は萩の出身で、明治期にベルリンに留学しており、森鴎外とも親交があった。さらにその父の考中は松下村塾の塾生。そういうルーツを持ち、90歳を越えてもかくしゃくとした寿代さんのお話を聞きているうちに、幕末以降多くの人材を生み出した萩にはぜひ行かなければと思っていた。

関連記事(山根寿代さんについて書いた記事一覧):
- ベルリンで出会った一枚の写真 - (2008-08)
- 祖父山根正次 -
- 森鴎外からの手紙 -
- ベルリンの恩師との再会 -
- 仕事、旅、そして人生 -

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江戸時代から区画が変わっていないという萩の城下町はしぶい趣があり、この町の1つのシンボルともいえる夏みかんが彩りを添える。これは明治初期、生活のすべを失った士族たちを救うため、全国ではじめて萩においてひろく栽培されるようになったのだという。

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日没までの限られた時間の中、観光客もまばらな城下町を歩いた。高杉晋作の生家や木戸孝允の旧宅(写真)、伝統とモダンが同居した萩博物館など。特に萩博物館は予想していたよりもずっと面白く、しかもボランティアらしき年配の2人の方が、展示物の背景などどについて一生懸命説明してくださるものだから、1時間足らずで閉館の時間がきてしまったのが本当に残念だった。自分の日本史の知識が乏しいため、彼らの説明を全て咀嚼できなかったのも悔しい。手始めに、司馬遼太郎の『世に棲む日日』でも読んでみようと思っている。

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この夜泊まったのは、萩一輪という宿。日本にいた時もそうそう食べたことのない、ふぐの刺身など海の幸を中心にいただき、温泉に入る。これぞ至福の時。

(つづく)

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by berlinHbf | 2010-01-23 18:01 | ニッポン再発見 | Comments(4)

読書の神が宿る空間

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厳しい寒さの日々が続いています。今日の昼間の気温はマイナス7度ぐらい。さすがに手袋なしで外を歩くのはつらいですね。たまに0度ぐらいの日があると、妙に暖かく感じられるまでになっています(笑)。

この気温ではさすがに街を散策する気分にはそうなれず、代わりにポツダム通りの国立図書館(シュタービ)によく足を運んでいます。今年は、まとまった時間がある時は図書館に行こうと、久々に国立図書館の年間券を買ったのです。年間券といっても、25ユーロ。これでベルリンにある2つの国立図書館がいくらでも利用できることを考えると安いものだと思います(パスポートと滞在許可証、住民票持参でその場で作ってもらえます)。

久々にここに来ましたが、やはりいいですね。読書の神が宿っているような荘厳な雰囲気はもちろんのこと、機能的な机や椅子、机ごとに用意されたランプやラップトップ用の電源、そういう小物まで含めて好きなのです。隣のフィルハーモニーと同じで、座る席ごとに違う風景が見えるので、(空いていれば)次はどこに座るかという楽しみもあります。ネットに関わる時間が増えるにつれ、情報収集も断片化しているというか、本を1冊じっくり読むということがここ最近ずいぶん少なくなっていました。今年は、図書館での静かな時間というのも大事にしたいと思っています。

冒頭の写真は、日本滞在中に買った新しいコンパクトデジカメRicohのGR DIGITAL IIIで撮ったものです。ズームの利かない単焦点レンズのカメラなので、そのことで最後まで悩みましたが、ベルリンへ戻る前日に「えいやっ」と決断して買いました(笑)。持った時に手になじむ感覚が気に入っていて、ファインダーを通して見える風景も心なしか今までとは違う感じです。ベルリン生活の頼れるパートナーになってくれそうな予感。

関連記事:
天使の降りた場所(3) - ベルリン国立図書館 - (2006-09-07)

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by berlinHbf | 2010-01-21 23:57 | ベルリン発掘(西) | Comments(4)

東京の向島を歩く

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前回、ミッテの朽ちたアパートのことを書きましたが、あれを見ていたら、年末に東京で出会ったある街並みを思い出しました。墨田川のほとりの向島というところです。

どうしてここを歩いてみたくなったかというと、比較的最近読んだ永井荷風の小説や随筆にこの辺りがよく出てくるから。12月末のある日、久々に会った高校時代の親友と、京成曳舟駅で降りてぶらぶらと歩いてみました。最初に行き着いたのが冒頭の鳩の街商店街。もともと第2次大戦直後に赤線地帯として発展した街だけあって、独特の風情が残っています。

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隅田川七福神のひとつ白鬚神社と向島百花園にも行きました。どちらも閑散としたけれど、正月の門松の準備も始まっていて、久々に年末の風物を感じましたね。

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夕方、東向島と向島の境周辺をもう少し歩いてみました。昔ながらの住宅街の向こうにそびえる、建設中の東京スカイツリーがインパクト大。一体どこまで伸びるんでしょう。

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向島5丁目の路地を歩いていたら、豆腐屋のラッパ(電子音だったと思いますが)が聞こえてきたのでびっくりしました。

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鳩の街商店街で見つけた昔ながらの喫茶店。

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そろそろ駅に戻ろうかというころ、遠くから甲高い声が聞こえてくるなあと思ったら、地元の子供たちが「マッチ1本火事のもと」の掛け声を上げて通り過ぎて行きました。こういうのがまだ残っているのかと、現代にいることを一瞬忘れました。

荷風が描いた昔の「玉の井」という街はもう少し北側にあったようで、今回は行けずに終わりましたが、機会があればまたこの辺りを歩いてみたいです。

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by berlinHbf | 2010-01-19 14:36 | ニッポン再発見 | Comments(7)

ミッテの朽ちたアパートから見えるもの

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Bergstr.にて(2009年12月7日)

先日ご紹介したミッテのゾフィーエン墓地を出て、墓地に面したベルク通りを歩いていたら、偶然こんな古めかしいアパートに出会いました。

関連記事:
石炭屋さん (2007-12-01)
古いアパートに浮かぶ文字 (2008-06-04)
家具屋という名のカフェ、石鹸屋という名の服屋 (2009-03-31)
肉屋という名の靴修理工房 (2009-04-01)

主に東地区に見られる、過去の痕跡が刻まれたアパートについては、これまでもこのブログで紹介してきました。初めて歩く通りで、こういう古いままのものを見つけると本当にうれしくなります。それだけ、今のベルリンでは数少なくなっているからです。

このアパートは、ベルナウアー通りのすぐ裏手に位置することがミソといえるでしょう。よく知られる通り、国境のベルナウアー通りに面したアパートは、壁建設後、東の政府が住民を強制的に立ち退かせた後、大部分を爆破させました。でも、ほんの少しだけそこから離れていたこのアパートは、何の因果によるものか生き延びた・・・。あれこれ思いをめぐらせていると、この古ぼけたアパートに奇妙な愛着が湧いてくるのです。

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近くに寄ってみましょう。Schuhとあるから、昔は靴屋か靴の修理工房だったのかな?

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"Beeile Bedienung"
急ぎの用事にも対応してくれたということでしょう。

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一番上の段は読み取りづらい。その下は、"Saubere Verarbeitung"(きれいな加工)ですね。それにしても、何とも味わい深い筆致。

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どうやら牛乳屋さんも、この中にあったようです。

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昨年11月末に、日独センターでの橋口譲二さんの講演会を聞きに行ったら、壁崩壊直後、プレンツラウアーベルクを歩き回って作ったという手書きの地図を見せてくれました。私にはそれがとても面白かった。少し長くなりますが、橋口さんの1992年の写真集「Berlin」(太田出版)から、該当する箇所を引用したいと思います。
プレンツラウアーベルクは街全体が古くて美しく、朽ち果てている感じだった。吹く風はコークスの匂いに混じって、コンクリートの粉末を運んでいた。人間の皮膚が剥けるように、コンクリートの壁が剥け、通りに面した壁にはコールタールで描かれた看板文字が、数十年の歳月が過ぎ去ったにもかかわらず新しく塗られたペンキの下からくっきりと浮かび上がっていた。食料品屋にタバコ屋、床屋と、壁に残された文字をたどるだけでも、19世紀の終わりから20世紀初めにかけてのベルリンの街角の賑わいを彷彿とさせてくれる。僕らはある時など写真を撮るのをやめて、壁に残された文字だけを頼りに昔の地図作りに没頭したりもした。牛乳屋さんだった所の壁には「ジャガイモの皮を持ってきてくれた人には薪を差し上げます」と書いてあった。当時ジャガイモの皮は牛のエサで、アパートの中庭で乳牛を飼っていたのだという。またワンブロックの中には床屋が3軒も4軒もあったので不思議に思っていると、道で会った老人が、昔は床屋が歯医者も兼ねていたのだと教えてくれた。(中略)

プレンツラウアーベルクでの毎日は、本当に驚きと発見の毎日だった。そこにはツィレの画集の中に出てくるような酒場の人間模様や道行く人たちのただずまい、19世紀終わりから20世紀初めのベルリンが息づいていた。ノスタルジーではなく、紛れもない現実が僕の目の前にあった。

僕の心を騒がし、揺り動かしていたものの正体は、この街角を流れている時の澱みだった。2度に渡る世界大戦の戦火を逃れ、ベルリンが近代都市として成立した時そのままの姿を残し、長い歳月の中で自然に朽ち果ててきた建物を見ていると、僕はいとおしさを感じずにはいられなかった。

それと同時に、誰に邪魔されることなく自然に朽ち果ててきたプレンツラウアーベルクを歩いていると、本来街そのものが生命を得た時からそなえ持つ時間軸が存在することを僕は知った。

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by berlinHbf | 2010-01-17 14:48 | ベルリン発掘(境界) | Comments(7)

14日(木)の日経アートレビューのご案内

1月14日(木)の日本経済新聞朝刊の「アートレビュー」に、私がコーディネートをさせていただいた「ベルリンとグラフィティー」をテーマにした記事が掲載されます(執筆は河尻定記者。撮影は竹邨章カメラマン)。昨年11月末、今もベルリンに残る壁を見て回ったり、80年代「不法に」壁にペインティングした人々にインタビューをしたり、久々に車を運転したりと、寒く日が短い時期ということもあって、とても印象に残る仕事となりました。

毎月1回掲載されるこの「日経アートレビュー」では、新聞のこれからのレイアウトのあり方を追求していて、カメラマンから送られてきた写真をもとに、毎回新しいレイアウトを外部のディレクターと考えながら作っているのだそうです。今回のベルリンの記事もどういうデザインに仕上がっているのか、とても楽しみにしています。雑誌と違って、新聞はその日限りの発売ですので、興味のある方は明日ぜひお買い求めいただけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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by berlinHbf | 2010-01-12 23:57 | ベルリン文化生活 | Comments(8)

ミッテのゾフィーエン墓地を歩く

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12月初頭、「壁とベルリン」の最終回で触れた、ゾフィーエン墓地の中に初めて入った時のことを書いてみたいと思います。ベルナウアー通りの壁記録センターに行ったことのある人は多いと思いますが、真向かいのゾフィーエン墓地にまで足を延ばしたという方はあまりいないのではないでしょうか。というのもこの墓地、入り口がわかりにくい。記録センターの角のアッカー通りを200メートル以上歩いて、ようやく入り口が見えてきます。ベルク通りにあるメインエントランスは、さらにそこからぐるっと回らなければなりません。

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この墓地(正式にはFriedhof II der Sophiengemeinde)は、ゾフィーエンゲマインデ(教区)の墓地が拡張する過程で、1852年に造られたのだそうです。何の予備知識もないまま歩いていたら、音楽家の墓が多いことに気付きました。これは作曲家ヴァルター・コロ(1878-1940)の墓。パウル・リンケらと並んで、ベルリン・オペレッタの創始者と言われている人なのだそう。彼の孫にあたるのが、有名なテノール歌手のルネ・コロですね。

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その近くには、やはり作曲家アルベルト・ロルツィング(1801-1851)の墓も。日本ではあまり知られていない人だと思いますが、代表作の喜歌劇「ロシア皇帝と船大工」は、ドイツの歌劇場ではたまに演目に上がります。「ベルリン名誉墓」の印である赤いレンガも下に見えますね。

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その隣には、作曲家ヴィルヘルム・フリードリヒ・エルンスト・バッハ(1759-1845)という長い名前の人物の墓。名前の上には、デカデカと「ヨハン・ゼバスティアン・バッハ最後の孫」。へ~、でもこの人の存在はまったく知りませんでした。

音楽関係では他に、ピアノメーカーBechsteinの創業者カール・ベヒシュタイン(1826-1900)の墓もあるそうで、ゆっくり歩くといろいろ発見がありそうな墓地です。

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さらにずっと歩いて行くと、昔の壁の跡にぶつかります。ここから北駅(Nordbahnhof)方面への眺めが印象的でした。3年前、「時間の止まった場所」として紹介したこの周辺も、壁記録センターの拡張工事に加えて、左端に見えるビルの建設など、その風景は大きく変わりつつあります。

関連記事:
時間の止まった場所(1) - Nordbahnhof - (2006-04-28)
トラムの新路線M10に乗る(2) (2006-07-19)

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by berlinHbf | 2010-01-11 16:08 | ベルリン発掘(東) | Comments(4)

2009年のコンサートより(1) - ライプチヒの『聖パウロ』 -

2009年は例年に比べてコンサートに行く回数が少なかったですが、その中でも特に印象に残り、かつ書く機会を逸してきたものをここに留めておこうと思います。結果的にメンデルスゾーン生誕200年関連のものがいくつも入りました。

- マンゼ指揮ベルリン・ドイツ響(4月10日)
Andrew Manze
Stephen Hough Klavier

Johann Sebastian Bach: Orchestersuite Nr. 3 D-Dur (Bearbeitung: F. Mendelssohn & F. David)
Felix Mendelssohn Bartholdy: Konzert für Klavier und Orchester Nr. 1 g-Moll op. 25
Johann Sebastian Bach: Contrapunctus XVIII aus »Die Kunst der Fuge« (Bearbeitung: A. Manze)
Felix Mendelssohn Bartholdy: Symphonie Nr. 5 »Reformationssymphonie«

ピアノ協奏曲はシュテファン・ハフの流麗でおしゃれなまでに軽妙なタッチのピアノが聞きものでした。メインは『宗教改革』。マンゼはもともとバロックヴァイオリンの奏者ですが、学術肌の人とは一線を画すらしく、リハーサルからとても生き生きとしているのだそうです。指揮姿ははっきり言ってぶっきら棒なのに、不思議と聴く人にも彼の意図することがよく伝わってきます。4楽章のうねりと高揚感はすばらしかった。

このコンサートを忘れがたいものにさせたのは、その後目にしたある出来事でした。友達とポツダム広場のカフェで過ごし、そこを出た時、広場の交差点に人だかりができていました。真ん中には倒れた大型のバイクとヘルメットが・・・。後で知ったところによると、車とのこの衝突事故で、バイクに乗っていた方は亡くなったとのこと。メンデルスゾーンの音楽で味わった幸福感と目の前で起きた死のコントラストが、強烈な形で私に刻み込まれたのでした。

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- ブロムシュテット指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(6月18日)

Felix Mendelssohn Bartholdy zum 200. Geburtstag
Im Rahmen des Bachfestes

Gewandhausorchester
Dresdner Kammerchor
GewandhausChor
Herbert Blomstedt
Ehrendirigent des Gewandhausorchesters

Juliane Banse, Sopran
Ingeborg Danz, Alt
Christoph Genz, Tenor
René Pape, Bass

Felix Mendelssohn Bartholdy
Paulus op. 36

昨年最高の感動を味わったコンサートのひとつです。メンデルスゾーンの音楽の中でもとりわけ好きなオラトリオ『聖パウロ』が、このコンビの演奏で、しかも独唱にはユリアーネ・バンゼやルネ・パーペといった強力な顔ぶれとなれば、これはもうメンデルスゾーン・イヤーならではの企画。しかし、何より圧倒されたのは合唱でした。ゲヴァントハウスの合唱団に加え、合唱指揮者として名高いHans-Christoph Rademann率いるドレスデン室内合唱団の織り成すハーモニーの素晴らしさといったら!ほのかに光が差し込む静寂さからフーガを伴う劇的な歓喜の表現までバッハの影響が色濃く、同時にその音楽にはメンデルスゾーンならではの暖かさとやさしさが息づいていました。この作品、もう少し頻繁に取り上げられてもよいのではと思いますね。

(メンデルスゾーンの合唱曲を聞いてみたいという方には、Rademann指揮リアス室内合唱団の合唱作品集をおすすめします)

本の仕事で忙しい時期だったので、ホテルに戻ってからも結局明け方まで作業をしていましたが、わざわざライプチヒまで出向いて心からよかったと思えた演奏会。音楽に癒されました。

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by berlinHbf | 2010-01-10 15:16 | ベルリン音楽日記 | Comments(0)

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