ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


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本書は2009年10月発行「素顔のベルリン」の増補改訂版です。2013年に改めて新規取材を行い、データを更新。レストランやショッピング、コラムなどのページも増量し、より充実したガイドブックに生まれ変わりました。

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地球の歩き方シリーズ初、待望のベルリンガイドブック誕生!比類なき歴史を抱えつつ、明日へ向かって日々進化し続ける首都ベルリン。「ドイツで最もドイツらしくない」といわれるこの町の知られざる魅力を、現地在住著者が12のエリアにわけて徹底紹介。


現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

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大晦日のコンサート2題

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「アウシュヴィッツへの旅」は何とか年内に書き終えたかったんですが、どうやら無理そうなので、2007年の最後は大晦日らしい華やかなコンサートの話で締めくくりたいと思います。いずれの公演も、本番前のGP(ゲネプロ)を運よく聴けたので、その感想です(本公演のチケットはどちらも早々と完売でした)。

まずはお馴染みのベルリン・フィルのジルベスターコンサート。これは数時間後に日本でも衛星生中継されるので、楽しみにされている方も少なくないのでは。今年はボロディンとムソルグスキーというロシア・プログラム。コンサートはライブレコーディングされ、年明けに最速リリースされるだけあって(ジャケットはもう出来上がっています↑)、演奏も仕上がりの高さを感じさせました。有名な「だったん人の踊り」からベルリン・フィルの機能性を存分に見せ付けられます。ここでは何といっても、ソロ・オーボエのジョナサン・ケリーの歌い回しがすばらしい!ボロディンの交響曲第2番というのは初めて聴きましたが、情熱的な冒頭部分からぐわっと心をつかまれました。「展覧会の絵」は、圧巻といっていい出来だと思います。この2ヶ月近く何人かの客演指揮者の棒でベルリン・フィルを聴きましたが、自分の意図をオケの隅々まで浸透させることができるという意味では、やはりラトルは頭一つ抜き出ていると実感しました。「古城」のサックスソロなど、普通ならもっと朗々と歌わせるのでしょうが、彼の指揮の元では全体の響きのバランスが崩れることが決してありません。「キエフの門」での圧倒的なクライマックスに向けての音響設計も巧みでした。やはりロシアもので統一したアンコール曲も、大いに盛り上がることでしょうね。

Berliner Philharmoniker
Sir Simon Rattle

Alexander Borodin
Polowetzer Tänze aus der Oper Fürst Igor
Symphonie Nr. 2 h-Moll
Modest Mussorgsky
Vorspiel zur Oper Chowanschtschina
Bilder einer Ausstellung
(Orchesterfassung von Maurice Ravel)


さて、大晦日のコンサートの2本目はヤノフスキ指揮のベルリン放送響の第9です。日本と違ってドイツでは12月に第9を演奏する習慣がないので、この時期ベルリンで第9が聴けるのはこのヤノフスキとバレンボイム指揮のシュターツカペレぐらいなんです。びっくりしたのはテンポの速さ。細部まで磨かれた先ほどのラトルに比べると、ヤノフスキは曲全体の流れを重視しているというか、音楽が滞ることなくサクサク進んでいきます。それは少々そっけないほどでもあり、テンポが速いのでオケのアンサンブルは時々乱れますし、聴いていてもう少し響きの余韻が欲しかったり、メロディーにゆったり浸らせてくれてもと思わないでもありませんでした。でも、これはこれで充実した第9で、オケはドイツのオーケストラそのものという分厚い響きを出していました。先日のクリスマス・オラトリオに続いて、ベルリン放送合唱団のハーモニーがすばらしく、豪華歌手陣を集めたソロも傑出。個人的には何となく気の晴れない年末でしたが、ベートーヴェンの第9を聴くと新しい1年に希望を持とうという気になってくるから不思議です。


今年1年このブログにお付き合いいただき、どうもありがとうございました。
皆さん、どうぞよいお年をお迎えください。

Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin
Rundfunkchor Berlin
Marek Janowski
Camilla Nylund Sopran
Petra Lang Alt
Robert Gambill Tenor
Kwangchul Youn Baß

Ludwig van Beethoven Sinfonie Nr. 9 d-Moll op. 125 mit Schlußchor über Schillers Ode »An die Freude«

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by berlinHbf | 2007-12-31 15:31 | ベルリン音楽日記 | Comments(2)

アウシュヴィッツへの旅(3) - ビルケナウの並木道 - 

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(前回のつづき)

ヨーロッパ中からのユダヤ人を運んできた貨物列車の線路は、ここで途切れる。これがRampeと呼ばれた停車場で、ユダヤ人の老若男女はここで降ろされ、労働力として使われるか、即座にガス室へ送られるかの選別がなされた。労働力として選ばれたのは、全体の約25%だけだったという。

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線路の両脇に、ガス室・焼却炉として使われた2つのクレマトリウム(Krematorium: 「火葬場」の意)がある。これらは1945年1月20日にSSが証拠隠滅のために爆破したと言われ、現在もそのままの状態で残されている。アウシュヴィッツがソ連軍によって解放されたのは、そのわずか1週間後の1月27日のことだった。

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こちらが第3クレマトリウム跡。前回の記事に対していただいたコメントにも関連することだが、ビルケナウが訪れる者の心を揺さぶるのは、そこが「ミュージアム」になっていないことではないだろうか。老朽化した建物を補強するというようなことは行っているかもしれないが、この中は基本的に1945年1月27日から時間の流れが止まっている。それゆえ重いのだ。

実はこの裏に、さらに第4、第5クレマトリウムと人骨が捨てられた「死の池」、死者から奪った遺品の倉庫群跡など、この世の果てのような場所があったらしいのだが、大雪で視界が悪く、また他に訪れる人が少なかったためか、私たちは気付かないで通り過ぎてしまった。おそらく、あえてそういう目立たない場所に作られたのだろうが。

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1943年以降女性収容所として使われたバラック。

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北側の多くのバラックはすでに破壊され、レンガ造りの煙突しか残されていない。

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B-Ⅱと言われる北側の区域を望む。

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「アウシュヴィッツ博物館案内」(中谷剛著)によると、「現在残っているポプラ並木はSSが収容者に苗木を植えさせたもので、60年を経て今ではみごとに枝を広げて高くそびえたっています」と第1収容所についての箇所で触れられている。ビルケナウのこの並木も、同じようにして植えられたものかもしれない。全てが「死」に直結するビルケナウ収容所の中で、ここだけ唯一「生」を感じさせた。

(つづく)

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by berlinHbf | 2007-12-30 16:47 | 欧州を感じる旅 | Comments(6)

アウシュヴィッツへの旅(2) - ビルケナウの空間感覚 - 

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Das Konzentrationslager Auschwitz-Birkenau (07.11.17)

クラクフから約2時間、友人の運転する車が止まったのは、オシフィエンチム駅を越えたところにあるアウシュヴィッツⅡ(ビルケナウ)の前だった。友人のヒロくんが言うには、最初ビルケナウにやって来たのは「全くの偶然」らしいのだが、こちらから回れてよかったと後から思った。

アウシュヴィッツには鉄道の線路を挟んでⅠとⅡの2つの収容所があり、1940年に最初に作られたⅠは現在国立のミュージアムになっている。ミュージアムの方はよくも悪くも観光地化されており、観光バスの流れが絶えることがない。団体ツアーによっては、時間節約のためミュージアムだけを見て次の目的地へ向かうこともあるのかもしれない。だが、人類史上類を見ない「殺人工場」アウシュヴィッツのはかり知れないスケールを実感するには、やはりビルケナウ(ブジェジンカ村)に来ることが必須なのだと思う。それにミュージアムを一巡するのは相当精神的に疲れるので、そういう意味でも最初にビルケナウを訪れるのは賢明かもしれない(特に冬の季節は)。

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通称「死の門」と言われる入り口の監視塔は戦後再建されたもの。ユダヤ人を乗せたヨーロッパ中からの列車は、この1本のレールを通って中へと入って行った。

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アウシュヴィッツについてはもはやあまりに多くのことが語られてきたし、私が1日見て回っただけで伝えられることも限られている。そこで、せっかく写真という手段があるので、今回はビルケナウの空間のスケール感をお伝えできたらと思う。これが監視塔からの正面方向の眺め(西側にあたる)。ビルケナウ収容所の面積は約175ヘクタール(約53万坪)あり(東京ドームの約37個分だとか)、ピーク時の1944年8月には囚人の数は男女合わせて10万人に達したという。この向こう側に、あのガス室があった。

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こちらがその右側(方角では北になる)で、B-Ⅱと言われる区域になる。地平線が見えるほどの広さだ。ビルケナウにはかつて全部で300棟以上のバラックがあったというが、現在残っているのはそのうちの一部に過ぎない。

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B-Ⅱのいくつかのバラックに入ってみた。これはどうやら便所のようだ。こんな天気だったこともあり、寒さが一層身に沁みる。今回は友人と一緒だったのでよかったが、1人で回らなければならないとしたら精神的にも相当堪えただろうと思う。

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ふと上を見ると、ドイツ語で"Sauberkeit ist Gesundheit"(清潔は健康)という恐ろしい「標語」のようなものが書かれている。ちなみに、アウシュヴィッツ内の説明文は英語、ポーランド語、ヘブライ語で書かれており、ドイツ語は一切見られない。

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こちらが塔の左側(南側)。右手奥に見えるのがB-Ⅰと呼ばれる区域で、ビルケナウの強制収容所はそれまでここに住んでいた農民を追い出し、B-ⅠからB-Ⅱへと向かっていく形で建設された。もちろん強制労働によって。

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監視塔からガス室のある正面へ真っ直ぐに歩いて行くと、線路がここで途切れる。その向こうに先ほどの監視塔がかすかに見えるのがおわかりいただけるだろうか。監視塔からここまでの徒歩での所要時間は、何度か迂回したとはいえ約25分もかかっている。この途方もないスケールは、やはりあの場に身を置いてみないとわからないのかもしれない。

(つづく)

参考:
国立オシフィエンチム博物館日本語版パンフレット
「アウシュヴィッツ博物館案内」(中谷剛著)凱風社

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by berlinHbf | 2007-12-29 01:27 | 欧州を感じる旅 | Comments(6)

アウシュヴィッツへの旅(1) - Different trainsに乗って - 

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Große Hamburger Straßeで見つけた「つまずきの石」

11月にポーランドを旅した主目的は、クラクフに住む友人に会うことの他にもう一つ、そこから遠くないアウシュヴィッツを訪れることだった。アウシュヴィッツ訪問は、いつの頃からか自分の漠然とした願いになっていたのかもしれない。実は7年前のちょうど今頃、友達と初めてクラクフを訪れたときにもそのチャンスはあった。だが、日程的にやや厳しかったことの他に、せっかく町を案内してくれるポーランド人の知人に「アウシュヴィッツに行ってみたい」とはなかなか言い出せなかったのだ。

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前にも少し書いたように、ベルリンに長くいると、かつてここに住んでいたユダヤ人の存在に気付かされることが少なくない。例えば、住宅街の道に何気なく埋め込まれている「つまずきの石」によって(冒頭の写真。後で詳しく書きます)。今回クラクフに行く前、このブログではかつて多くのユダヤ人が強制収容所へと送られたベルリンの2つの場所を紹介した。グルーネヴァルト駅の17番線(写真)と橋の下の貨物駅(Putlitzbrücke)という2つの鉄道駅。

もし、鉄道という19世紀に人間が生み出した高度にシステマチックな輸送手段が存在しなかったら、ナチスによる計画的なホロコーストは実現不可能だったに違いない。そして、万単位の規模のユダヤ人を秘密裏のうちに運ぶために必要な鉄道や警察が、ベルリンにある総合司令部から組織化されていたという事実にぶつかる。これらを思うと、やはり鉄道を使った私のポーランド行きは、ベルリンからアウシュヴィッツへと強制輸送されたユダヤの人々をいくらかでも追憶する旅でありたいと思った。

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クラクフへ発つ前日、私はふとある音楽の存在を思い出した。アメリカ人作曲家でミニマル音楽の巨匠、スティーブ・ライヒの「ディファレント・トレインズ」という作品。ドイツ系ユダヤ人のライヒは、幼い頃両親が離婚し、大戦中父親が住むニューヨークと母親が住むロサンジェルスの間を乳母の女性と鉄道で何度も往復したという。「それはロマンチックな旅だったが、当時もし自分がヨーロッパにいたら、ユダヤ人として別の列車(Different trains)に乗っていたかもしれない」という想像力をもとに、戦前(アメリカ)、戦中(ヨーロッパ)、戦後(アメリカ)という3つの列車を「パラレルな関係に置き」、汽車の音を散りばめた弦楽四重奏の演奏に乗せて、それぞれの時代を生きた証言者の録音を取り込み作品を書き上げたのだった。私はこのCDのライナーノーツをリュックに入れた。

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この日はちょうどドイツ鉄道のスト中だったため、まず地域列車でコトブスまで行き、そこからクラクフ行きの特急に乗った。列車は、幾たびもプロイセンの領土紛争の的となったシュレジア地方をひた走る。レンガ造りの古い建物や廃屋なども目立ち、ヨーロッパの裏街道を行くかのようなひなびた雰囲気があった。この線がベルリンからアウシュヴィッツへの最短路線になるので、ユダヤ人をぎゅうぎゅうに詰め込んだ貨物車もかつてのこの上を通ったのだろうか?

多少ストの影響を受けたとはいえ、暖房の効いた全く快適な車内にいる私には、そんな過酷な状況を想像するのは不可能に近かった。それでも何度か、今までは漠然とCDで聞いていた「ディファレント・トレインズ」のライナーノーツをめくりながら、あのリズミカルな音楽とホロコーストの生還者たちが語るテキストを頭の中で再現しようとしてみた。

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約10時間かけてクラクフに着いた翌日、私たちは早起きして友人の運転する車でオシフィエンチムに向かった。クラクフは大雪で、その南東70キロのオシフィエンチムまで2時間近くかかっただろうか。「ディファレント・トレインズ」の終着駅は、アウシュヴィッツ収容所2号の「ビルケナウ」だった。

(つづく)

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by berlinHbf | 2007-12-27 13:45 | 欧州を感じる旅 | Comments(7)

イエス・キリスト教会で聴くバッハ

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ベルリン・フィルの録音会場として有名なダーレムにあるイエス・キリスト教会で、オルガンではなく、珍しくオケのコンサートが行われることを知り、「これは聞き逃せない」と思って聴いて来ました(22日)。

U3のThielplatz駅から歩いてすぐの場所にあるこの教会は、外観も内観もかなりモダンな印象を受けますが、1930年に建てられたというれっきとした戦前の建築です。クリスマス直前の今回のコンサートは、バロック・ヴァイオリン奏者でもあるアンドリュー・マンゼ指揮ベルリン・ドイツ響ソロメンバー主体の小編成オケでした。

全てバッハに関連した実に魅力的なプログラム!冒頭のSinfonia F-Durは初めての曲だと思って聴き始めたら、実はブランデンブルク協奏曲第1番ほぼそのままでした。あの曲はバッハが後にこのSinfoniaを改作・拡大したものなのだそうです。その後、マンツェ編曲の「フーガの技法」から1曲、フィナーレのスピード感がたまらないブランデンブルク協奏曲の第3番、そしてヴェーベルン編曲の「音楽の捧げもの」より「6声のフーガ」で前半終了。イエス・キリスト教会の響きも存分に楽しみました。残響は豊かですが、教会にありがちな「こもる」感じがここにはありません。まろやかでありながら、くっきりともしているのです。こういう音楽を聴くにはまさに理想的な環境という気がしました。中でもバスのあたたかい響きが印象に残っています。

後半最初の「ダンバートン・オークス」は、ストラヴィンスキーが「バッハのブランデンブルク協奏曲スタイルの小コンチェルト」を意図して書いたという洒落た一品。そしてメインの組曲第4番は、トランペット3本が加わり、祝祭的なムードがいやがうえにも高まります。全体の大半の長さを占める序曲は、バッハが後にクリスマス用のカンタータに書き換えたらしく、このコンサートのメインとしてはぴったりなわけです。

音楽というのは聴く場所によって印象ががらっと変わるものですが、この晩はまさにその典型のようでした。マンゼ指揮のベルリン・ドイツ響とイエス・キリスト教会の響きに、完全にノックアウトされてしまいました^^)。

Andrew Manze
Solisten des Deutschen Symphonie-Orchesters Berlin

Johann Sebastian Bach: Sinfonia F-Dur
Johann Sebastian Bach: Contrapunctus XVIII aus der »Kunst der Fuge« (bearb. Andrew Manze)
Johann Sebastian Bach: Brandenburgisches Konzert Nr. 3 G-Dur
Bach / Webern: »Fuga a 6 voci« aus dem »Musikalischen Opfer«
Igor Strawinsky: »Dumbarton Oaks«
Johann Sebastian Bach: Orchestersuite Nr. 4 D-Dur

参考:
ベルリン・ダーレムのイエス・キリスト教会

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by berlinHbf | 2007-12-25 17:48 | ベルリン音楽日記 | Comments(4)

ドヴォルザークのレクイエムを聴く

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12月は宗教音楽のコンサートがとても多いのですが、めったに聴けないという意味で貴重な機会だったのが、ベルリン・フィルが演奏するドヴォルザークのレクイエムでした(7日)。「新世界」や「ドボコン」などと比較するまでもなく、この「ドボレク」は本当に演奏されることが稀で、ベルリン・フィルがこの作品を取り上げるのも実に44年ぶりだとか!しかしこれがすばらしく、充実の1時間40分でした。

ドヴォルザークのレクイエムはあの交響曲第8番やピアノ3重奏曲の「ドゥムキー」とほぼ同時期に書かれ、1891年にバーミンガムで初演されたことを見ると、この作曲家の円熟期の作品のひとつと見ていいのでしょう。全体は13部から成り、ヴェルディほど激烈な表現は見られないものの、ドラマチックな迫力は十分ですし、代わりにドヴォルザークならではと言うべきか、自然からそのまま零れ落ちてきたような瑞々しいメロディーが随所から聴こえて来ます。

何といっても、プラハ・フィルハーモニー合唱団が出色の出来でした。わざわざプラハから呼んで来ただけのことはあります。ドラマティックな部分では時にベルリン・フィルのトゥッティを突き抜けてくるほどの迫力でしたし、響きのバランスも最上。ところどころで聴かれる男声合唱のアカペラは、本当に息を飲むような静寂な時間でした。壮大なスケールのフーガが登場する第2部は特に圧巻で、それらに触発されたのか、ニコラ・ルイゾッティ(写真)のイタリアオペラを思わせるやや派手でドラマチックな音楽作りも、ここではプラスに作用していたように思います。聴けてよかったです。

Berliner Philharmoniker
Nicola Luisotti, Dirigent
Anja Harteros, Sopran
Nino Surguladze, Mezzosopran
Giuseppe Sabbatini, Tenor
Giacomo Prestia, Bariton
Prager Philharmonischer Chor
Lukáš Vasilek, Einstudierung

Antonín Dvořák
Requiem op. 89

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by berlinHbf | 2007-12-25 15:35 | ベルリン音楽日記 | Comments(2)

第4アドヴェントのプレンツラウアーベルクにて

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久々の好天となった第4アドヴェントの昨日の昼間、プレンツラウアーベルクを歩いていたら、クリスマスツリーをかかえて家路に着く人の姿をやたらと見かけました。

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みんなどこで買って行くのだろうと思って歩いていたら、壁公園(Mauerpark)の蚤の市の一角にクリスマスツリーの直営店を見つけました。

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本物のモミやトウヒの木を家庭に飾るドイツの習慣はずっと昔にさかのぼるのだろうと何となく思っていましたが、前回書いたようにこれは19世紀後半以降に浸透した、どちらかといえば比較的最近のことなのです。それ以前は、特にベルリンでは「ピラミッド」と呼ばれる模造品がポピュラーでした。(図版はhttp://www.zlb.de/projekte/advent/pyramide_bastelnより拝借)。

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この巨大なラッパのような道具でツリーを梱包します。

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「せーの」というおばさんの掛け声が聞こえてきそう。

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ツリーの値段は木の高さによって決められます。例えば、170cmの木が28.9ユーロ。最高丈の250cmだと42.5ユーロと結構いいお値段です。1回のクリスマスのために、ドイツの人たちはこれを毎年買っていくわけです。

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皆さん、どうぞ素敵なクリスマスを!(写真はシュパンダウのマーケットの様子)

Frohe Weihnachten!

忙しかった週が終わり一息ついたので、これからまた更新していきたいと思います。

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by berlinHbf | 2007-12-24 01:12 | ベルリンのいま | Comments(2)

クリスマスマーケットを彩った音色

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活気あふれる昔のクリスマスマーケットの様子。© 出典:Renate Steinchen 『Alt-Berliner Weihnacht』(Argon, 1994)より

クリスマスマーケットというと、いまではベルリン市内にいくつもあるが、その昔は一つしかなかった。18世紀半ばに現ミッテ地区南のペトリ広場からブライテ通りにかけて始まり、後に王宮広場前、現在ドームが建つルストガルテンへと延長されたクリスマスマーケットは、約200年もの間、例外の時期を除いては変わらぬ場所で12月の季節を彩った。
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19世紀から20世紀初頭にかけての時代に、ベルリンのクリスマスマーケットを歩いたら、どんな音が聞こえてきたのだろうか。ドイツのクリスマスマーケットは町ごとの特色が強いことで知られるが、ベルリンの市には2種類の「名物」ともいえる物売りたちがいた。一つは、その三角形状から「ピラミッド」とベルリンっ子が呼んだ、クリスマスツリーを模した木組みの装飾品を売る人々である。本物のツリーと違って何年も使えるうえ、ロウソクを何本も灯せることから、貧富を問わず家庭で好んで用いられた。本物のモミやトウヒの木が一般家庭を飾るようになるのは、テューリンゲンやハルツ地方から鉄道で大量に輸送することが可能となる19世紀後半以降のことだ。

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もう一つは、ヴァルトトイフェル(Waldteufel、直訳:「森の悪魔」)という名の、けたたましい騒音を生み出す器具を売る少年たちで、 “Waldteufel kooft(kauft)!”というベルリンなまりの甲高い掛け声があちらこちらから聞こえてきた。19世紀のクリスマスの風俗画を見ると、この2種類の物売りたちの姿が描かれていないことは、まずないと言ってもいい。

「なかでも私たち子どもの心をくすぐったのは、ヴァルトトイフェルでした。それはクリスマス市だけでなく街のあらゆる通りで鳴らされていて、ゴーゴーうなる音が聞こえてくると心が喜びで躍ります。そして、クリスマスが近いことを実感するのです。それだけでなく、クリスマス市で鳴り響くラッパや口笛の音は耳を麻痺させるほどでしたが、子どもにとっては喜ばしい音楽でした。そして屋台で売られる焼きたての揚げ菓子の匂いは、寒い冬の空気いっぱいに満たしました」(ナリ=ルーテンベルクという女性が書いた1840年代のベルリンの回想録より)

クリスマスマーケットはまた、あらゆる社会階層の人々が集う場でもあった。ちょうど王宮広場前に市が立っていたこともあり、王家の家族も民衆との接点を求めて、時折装飾品やお菓子を買いに訪れた。いまよりもずっと街の明かりが少なかった時代に、クリスマスマーケットの華やかさは特別だった。屋台のおもちゃやお菓子は庶民にはなかなか手が出なかったようだが、彼らはそれでも市に殺到し、見て回った。目抜き通りのウンター・デン・リンデンさえも、この時期は閑散としていたという。手回しオルガン、物売りたちの活気溢れる声、人々の笑い声などが渾然一体となって空間を満たし、時折、パロキアル教会やニコライ教会の鐘が夜空に祝祭的に鳴り響く。

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ベルリン最古のクリスマスマーケットがあった一帯は、第二次世界大戦後に区画が変わり、かつての名残はもう見られない。「ピラミッド」やヴァルトトイフェルの物売りたちがベルリンのクリスマスマーケットから消えて久しいが、今年も変わらず、人々はあの場に集う。
ドイツニュースダイジェスト 12月21日)

主な参考文献:
Gustav Sichelschmidt: Weihnachten im alten Berlin. (Rembrandt Verlag, Berlin, 1980)
Renate Steinchen: Alt-Berliner Weihnacht. (Argon, Berlin, 1994)

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by berlinHbf | 2007-12-22 16:51 | ベルリン音のある街 | Comments(0)

ウジェーヌ・アジェ回顧展

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今日は別のことを書こうと思っていたのですが、ゆっくり書く時間がないのと、でも寝る前に何か書きたいということでこの話題を選びました。いや、アジェという人についてはもっとゆっくり書きたいのですが、マルティン・グロピウスバウでのこのすばらしい回顧展がもうすぐ終わってしまうので(1月6日まで)、それだけでもまずお伝えしなければと思ったのです。

ウジェーヌ・アジェ(1857-1927)の生誕150年を記念したこの展覧会は、パリのBibliothèque nationale de Franceとの共催で、これだけの規模の回顧展はドイツでは初めてだそうです。大学時代に写真史の授業を取ったことがありアジェの名前は大分前から知っていましたが、今回初めて作品の全貌に触れ、パリをそして大都市をこんな風に写した人がいたのかと圧倒される思いでした。

パリといっても、エッフェル塔や凱旋門を写した写真はここには1枚もありません。では何が被写体になっているかというと、細い通り、薄暗い中庭、古いアパート、人の気配のない商店、室内や階段の装飾、荷車、郊外の自然、街角の物売りたちなど、いわば都市の「細部」をとらえた写真が大部分です。いずれもすばらしいのですが、特に世紀転換期の消え行く街並みを写した写真には吸い込まれそうになるほど引き付けられ、写真が持つ(絵画とは違う)本質的な価値というものについても考えさせられました。

最近この回顧展のカタログも購入し、寝る前にパラパラめくっては古きパリに思いを馳せるのが楽しみになっています。最初に書いた通り、来年1月6日までの開催なので、興味のある方はお早めにどうぞ。


今週は予定がかなり詰まっているため、更新とコメントへのお返事が滞りがちになるかもしれませんが、クリスマス直前の1週間もよかったらお付き合いください。

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by berlinHbf | 2007-12-18 23:57 | ベルリン文化生活 | Comments(2)

ポツダム広場の第3アドヴェント

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Arkaden am Potsdamer Platz (07.12.15)

第3アドヴェントの今日は、ポツダム広場のショッピングモール「アルカーデン」の様子をお届けしましょう。ここのクリスマス用のデコレーションは、特にゴージャスな感じがします。

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モールの中ほどに、多くの人が足を止めて見入っているアトラクションがあります。見ての通り、雪の町を再現した鉄道模型のレイアウトなんですが、これがなかなか童心に帰らせてくれるのです。

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山間の駅に列車が到着。

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蒸気機関車が本当に煙を巻き上げながら音を立てて走る様は、雰囲気たっぷりです。ところで、右端に見える小さな列車にご注目を。

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時々、1両編成の「サンタ列車」が目の前を小走りに過ぎて行きます^^)。

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アドヴェント期間中の日曜日は、普段と違い多くのお店が営業していてショッピングを楽しめるようになっています。クリスマス本番がいよいよ近づいてきました。

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by berlinHbf | 2007-12-16 12:46 | ベルリンのいま | Comments(8)

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