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ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


ベルリンガイドブック
「素顔のベルリン」増補改訂版
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本書は2009年10月発行「素顔のベルリン」の増補改訂版です。2013年に改めて新規取材を行い、データを更新。レストランやショッピング、コラムなどのページも増量し、より充実したガイドブックに生まれ変わりました。

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地球の歩き方シリーズ初、待望のベルリンガイドブック誕生!比類なき歴史を抱えつつ、明日へ向かって日々進化し続ける首都ベルリン。「ドイツで最もドイツらしくない」といわれるこの町の知られざる魅力を、現地在住著者が12のエリアにわけて徹底紹介。


現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

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カテゴリ:ベルリン文化生活( 74 )

マルティン・グロピウス・バウのテルアビブ美術館展

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ワシリー・カンディンスキー『ムルナウ、緑の家のある風景』(1909年)
© VG Bild-Kunst, Bonn 2015


2015年は、ドイツとイスラエルの国交樹立50周年という節目の年。これを記念して、ポツダム広場から近いマルティン・グロピウス・バウ(Martin-Gropius-Bau)でテルアビブ美術館展が開催されています。

西ドイツ(当時)とイスラエルとの間で国交が結ばれたのは、1965年5月12日のこと。第2次世界大戦中、ナチス・ドイツにより約600万のユダヤ人が犠牲になったホロコーストの記憶は、この両国の間に重く複雑なしこりを残しました。1932年に創設されたテルアビブ美術館は、特に20世紀の近現代の作品で充実したコレクションを誇りますが、今回展示される作品のうち約70点は、初めて欧州、またはベルリンで公開されるといいます。

同展では、絵画、彫刻、グラフィックアートの分野で重要な潮流を生み出した20世紀の作家の作品がテーマごとに展示されており、さらに、それに並行して現代イスラエルのビデオアートやインスタレーションが対峙して紹介されているのが特徴です。

「都市と田舎」と題された最初の部屋では、ポール・シニャックやワシリー・カンディンスキーらの牧歌的な風景画の傍らに、テルアビブの街中で撮られた映像作品が並んでいます。また、「混乱した惑星」という部屋には、抽象表現主義のマーク・ロスコやジャクソン・ポロック、シュルレアリスムのマックス・エルンストらの作品と並んで、「ガザ地区が地震により内陸部から隔てられ、もはや紛争のないリゾート地に変貌した」という架空のプロモーションビデオ「ガザ運河」が上映されるなど、現在のイスラエルの政治状況ゆえに人々が求めるユートピアへの憧れも感じられました。

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マルク・シャガール『孤独』(1933年)
© VG Bild-Kunst, Bonn 2015 / Photo Elad Sarig


奥の「ベルリン」という名の部屋には、マックス・リーバーマンの自画像、ルートヴィヒ・マイトナー、マックス・ペヒシュタインら、戦前ベルリンで活躍した表現主義の画家の作品が並びます。1933年から47年まで美術館の初代ディレクターを務めたカール・シュヴァルツはベルリン出身の美術史家で、それゆえドイツの表現主義のコレクションが多いのだそうです。そのほか、ピカソ、シャガール、ムンク、モネ、ジャコメッティといった著名な芸術家の作品も、展示の大きな目玉になっています。

この展覧会は、ベルリンとテルアビブ両都市のキュレーターによって構想されたとのこと。重く複雑な歴史背景を持つドイツとイスラエル。しかしまた、それゆえに両国の間には唯一無二の関係が育まれてきたと言えるのかもしれません。開催は6月21日まで。
Jahrhundertzeichen. Tel Aviv Museum of Art Visits Berlin: www.gropiusbau.de
ドイツニュースダイジェスト 6月5日)

by berlinHbf | 2015-06-08 10:18 | ベルリン文化生活 | Comments(0)

発掘の散歩術(55) - 演劇で体感する戦争と武器のグローバリズム -

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“Situation Rooms“の一場面より
© Ruhtriennale / Jörg Baumann


テロ、無差別攻撃、集団虐殺、難民、拉致、処刑……。今日も新聞やパソコンを開くと、このような言葉が見出しに並ぶニュースが飛び込んでくる。その度に陰鬱な気持ちになるが、紛争地域からの難民の受け入れをめぐる論議は、ドイツに住んでいるともはや他人事ではない。ある時は、遠い場所での事件やテロが連鎖し、「ベルリン中央駅でイスラム過激派がテロを計画」というニュースを目にして愕然とする。モノや情報の伝達だけでなく、憎悪の感情までもがあっという間に伝播するグローバルな世界にわれわれは生きている。

昨年12月末、友人に勧められてリミニ・プロトコルの“Situation Rooms“という演劇作品を観に行った。会場のHAU2の中に入ると、映画の撮影セットのようなものが置かれている。まず担当者からセット内の回り方の説明を受け、1人ひとりにiPadが渡された。一度に参加できる人数は20人まで。戦争をテーマにしたインスタレーションということは聞いていたが、一体何が起こるのかよく分からないまま、指定された部屋のドアを開けてみた。

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© Ruhtriennale / Jörg Baumann

そこは病院の手術室だった。iPadには「国境なき医師団」のあるドイツ人医師のインタビューと共に、まさに同じ場所で撮影された映像が流れている。それに従ってベッドの上に横になり、負傷した人々の映像を見る。私はこの医師がかつて経験した、アフリカのシエラレオネ共和国の内戦で負傷した市民の目線になったわけだ。そこに、やはりiPadを持った別の観客が入ってきて、医師の視線からベッド上の私を見下ろした……。

これでようやく分かった。“Situation Rooms“の演者はわれわれ観客なのだ。リミニ・プロトコルが取材した、住む場所も立場も異なる20人の部屋に入り、「住人」である彼らの体験に自分を「同化」させるのである。ある時はガザ地区との国境をパトロールする若いイスラエル兵になって監視塔に上り、またある時はパキスタンのテロリストの掃討を目的とするインド空軍の中尉のヘリコプターの中に入る。リビアからのボート難民の一家が住む部屋に紛れ込み、彼らと一緒にお茶(本物が用意されている)を飲んだかと思うと、9歳で兵士に駆り出されたコンゴ人青年の人生を追体験する……。

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© Ruhtriennale / Jörg Baumann

この作品の重要なテーマは、戦争の構造を形作る上で不可欠な「武器」である。1時間20分の行程の間、観客は時間差を置きながらある人を演じ、別の観客にバトンを渡していく。立場を変えることで、武器をめぐる様々な風景や状況が見えてくる。巨大軍需コンツェルンの社長の部屋にも入ったし、完成品がどこに運ばれるか知らされないまま、長年軍需産業の工場で働いたスイス人の作業工程も体験した。射撃の名手であるドイツ人警察官の「指導」を受け、地面に這いつくばって射撃の練習をするとは、よもや思わなかった。

セットの間を行き来する間に、ドイツが世界第3位の武器輸出国であるということや、「ドイツ銀行」が爆弾を製造するスペインのコンツェルンの重要なスポンサーであることなど、知られざる現実にも出会った。一市民である自分自身も、いつどこで戦争の加害者として巻き込まれるか分からない。ドイツ政府の武器輸出を糾弾する活動家が、こんなことを話していてドキリとした。「ドイツが模範とするのは日本です。なぜなら武器の輸出を全く行っていないから」。
ドイツニュースダイジェスト 2月6日)


Information
ヘッベル・アム・ウーファー 
Hebbel am Ufer(HAU)
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2003年、クロイツベルクの川沿いの大中小3つの劇場が統合して生まれた1つの劇場組織。2012年からベルギー人のアネミー・ファンアカラが芸術監督を務め、演劇やダンスなどのパフォーミングアーツで先進的なプロジェクトを実現している。リミニ・プロトコルは2004年以来ここを本拠地とし、数々の話題作を送り出してきた。

チケットオフィス:月~土15:00~公演の1時間前まで(公演のない日は15:00~19:00)
住所:Hallesches Ufer 32, 10963 Berlin(チケットオフィス)
電話番号:030-25900427
URL:www.hebbel-am-ufer.de


シチュエーション・ルームズ 
Situation Rooms
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複雑に入り組んだSituation Roomsのセットの模型

現代社会の諸問題をテーマとする演劇集団「リミニ・プロトコルRimini Protokoll」のインタラクティブアート作品。2013年のルール・トリエンナーレで初公開された後、欧州各地に巡回している。3月12日(木)~29日(日)まで、ドレスデンの軍事史博物館にて上演される。1回の参加人数が限られており、予約が必須。第17回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞授賞作品。
URL:www.rimini-protokoll.de

by berlinHbf | 2015-02-14 10:28 | ベルリン文化生活 | Comments(1)

エネルギー問題をテーマにした展覧会

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連邦外務省で行われた展覧会より

ベルリン市中心部のジャンダルメンマルクト広場やフンボルト大学などから近い連邦外務省では、定期的に展覧会が開催されています。10月16日から約1カ月間、Lichthofと呼ばれる入り口のホールで、日本の新進作家から成るグループ「団DANS」が、エネルギー問題をテーマにした展覧会を行いました。

麻生和子氏がオーガナイザーを務め、計11人の作家がそれぞれの作品を披露した今回の展覧会のタイトルは、「Thinking of ENERGY - from the experience of FUKUSHIMA」。団DANSはその趣旨をこう説明しています。

「津波によって引き起こされた福島の原子力発電所の事故は、日本に住む人だけでなく、世界中の人々に問題を提起しました。特に日本に住んでいる私たちにとって、今人々が求めている豊かな社会を実現するのにエネルギーは不可欠で、安い原子力エネルギーには誘惑を感じます。そして、今も将来においても原子力エネルギーを使い続けることには問題があると、皆が十分気付いているにもかかわらず、私たちは日々の生活を何も問題がないかのように(気付かぬふりをして)過ごしています」

インスタレーション、彫刻、絵画、写真など多彩な表現手段の作品が並ぶ中、私はある映像に引き込まれました。人通りが皆無な福島県双葉町で、除染服を着た男性が自らビデオを回しながら語っています。彼が卒業したと思われる学校の前では、校歌を歌い始めました。それは、悲痛というものを越えた叫びのようでした。

この作品を作った太湯雅晴さんが説明してくれました。ビデオを回していた男性は双葉町に住んでいた大沼勇治さん。町の商店街の入り口に掲げられ、後に原発推進の象徴にもなった「原子力 明るい未来のエネルギー」の標語の作者です(小学6年だった当時、学校の宿題として作ったと言います)。太湯さんは、大沼さんを取材した映像と、その裏側のネオン管で作った標語とで作品を構成しました。

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原発推進の標語をテーマに作品を制作した太湯雅晴さん

「あの標語は、地元住民と電力会社との一種の『共犯関係』で成り立っていました。大沼さん自身、後悔の念が強いようです。ただ、私はこの作品によって何らかの意見や答えを示すつもりはありません。原子力発電所を中心としながらも、一歩引いた視点から、その周辺で何が起きたのか、大沼さんの個人的な視点と体験を通して提示したかった」と語ります。

明快な答えの見付けにくいエネルギー問題を、アートという形で問い掛けた連邦外務省での展覧会。太湯さんに話を伺っている横でも、地元の訪問者が作品の前で立ち止まっては見入っていました。http://dandans.jp
ドイツニュースダイジェスト 11月21日)
by berlinHbf | 2014-11-22 13:13 | ベルリン文化生活 | Comments(0)

60周年を迎えたアメリカ記念図書館

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1954年に完成したアメリカ記念図書館

ベルリンの大きな図書館といえば、長い歴史と膨大な蔵書を誇る2つの国立図書館が有名です。とはいえ、学生や研究者ならばともかく、一般の市民により親しまれているのは、それぞれの地区にある市立図書館の方でしょう。その中でも規模が大きいことで知られているのが、クロイツベルク地区にあるアメリカ記念図書館Amerika Gedenkbibliothek(通称AGB)です。今年60周年を迎えるAGBが、このたび改装工事を経てリニューアルオープンしました。


地下鉄U1のHallesches Tor駅前にあるAGBは、その名前が示す通り、そもそもはアメリカ合衆国からの「贈り物」。1948~49年に掛けて行われた、いわゆるベルリン空輸作戦が終わった後、アメリカは同盟関係にあった西ベルリンに新たな文化施設をプレゼントすることになりました。当時の市民からは、博物館や新フィルハーモニー建設の要望が強かったそうですが、結局「教育と言論の自由のシンボル」として、西ドイツ最大規模の公立図書館が建てられたのです。

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広々とした図書館の内部

この図書館の良いところは、書架に並んでいる本を実際に手に取った上で借りられることでしょう(国立図書館では通常、事前に借りたい本を申請した後、書庫から本を出してもらう流れになっています)。蔵書のジャンルは、歴史や宗教、文学などの人文系から社会科学、語学書、旅行関係、児童書まで多岐に及ぶため、学生からシニア、家族連れまで幅広い利用者が集います。もう1つ特筆すべきは、楽譜やCD、DVDなどの充実ぶり。DVDコーナーでは、日本映画の作品もちらほら見掛けます。今回の改装によって内部の雰囲気が明るくなり、閲覧スペースも増えて、以前よりも利用しやすくなったという印象を受けました。館内はWiFi無料なので、パソコンを持って作業している人も多く見られます。

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以前音楽書や楽譜が置かれていた部屋は、新聞と雑誌のコーナーに生まれ変わった

ベルリン在住者であれば、外国人でも住民票とパスポートを持参すれば、その場で図書カードを作ることができ(年会費は大人10ユーロ、学割5ユーロ)、本やCDは28日間、DVDは14日間、一度に60までのメディアの貸し出しが可能。ベルリンの公共図書館のネットワーク(www.voebb.de)を通して、ほかの市立図書館を含めた、あらゆるメディアを検索できるのも便利です。今年9月1日からは、平日の開館時間も延長されました(月~金10:00~21:00、土10:00~19:00)。ある程度長くベルリンに住む予定の方ならば、利用価値の高い図書館として、ぜひお勧めしたいと思います。www.zlb.de
ドイツニュースダイジェスト 10月17日)

by berlinHbf | 2014-10-18 16:11 | ベルリン文化生活 | Comments(2)

シンポジウム「文化政策による中小都市の再生」

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ベルリン日独センターで行われたシンポジウムの様子

この夏、日本に一時帰国して改めて感じたのが、東京からそれほど離れていない中規模都市の疲弊具合でした。私の出身地の神奈川県横須賀市は、2013年の人口減少数が全国で最も多かったそうで、少年時代に過ごした街角で子どもの姿をほとんど見掛けなくなったのを寂しく感じました。人口減少や高齢化、大都市への人口集中がこのまま続くと、40年には全国の約30%、実に523の地方自治体が消滅する危険があるというショッキングな推計(日本創世会議)も出ており、これから本格的に準備が始まる20年の東京五輪・パラリンピックという国家的行事の陰で、非常に危惧すべき問題です。

9月4日にベルリン日独センターで行われた国際シンポジウム「文化政策による中小都市の再生――ドイツ・中欧と日本の対話」は、共通の問題を抱える日本とドイツ、中欧の各都市からのパネリストや参加者が集まり、「都市の再生のため文化に何ができるか」を議論する意義深い機会となりました。

前半の趣旨説明では、ニッセイ基礎研究所の吉本光宏氏による徳島県神山町の事例報告が大きな注目を集めました。吉本氏によると、古くから林業を主要産業としていた神山町では過疎化や高齢化が急速に進み、人口はかつての3分の1以下の6000人にまで落ち込みました。しかし、1999年にNPO法人主宰の「アーティスト・イン・レジデンス」が始まると、国内外からやって来たアーティストと彼らをサポートする地元の高齢者との間で創造的な気風が生まれます。町の情報発信のサイトを立ち上げたところ、神山への移住需要が顕在化し、古民家や空き店舗を利用した「ワーク・イン・レジデンス」という仕組みにより、今度は働き手や起業家を「逆指名」していきました。すると、商店街の再生が進み、神山町の自然や人の魅力に惹かれてIT企業までもが次々と神山へ進出・起業するようになったというのです。このような地域再生が行政組織ではなく、主に高齢者の住民から成るNPO法人によって推進されていることに驚きました。

関連サイト:
神山町の情報発信サイト「イン神山

その後のパネルディスカッションでは、同志社大の河島伸子氏が「文化は経済のお荷物ではなく、文化こそが経済を助け、動かす」という文化・創造経済の視点で語り、神戸大の藤野一夫氏は「特に日本の場合、国土の70%を占める森という資源を見直し、文化政策とエネルギー政策を結び付ける形で地域の自立性を養うべきだ。人々が当事者として判断し、問題を解決していく、強くしたたかなコミュニティーを作ることが、日本やドイツの小さな地域や町が生き残っていく上で重要ではないか」と力説しました。

この日のシンポジウムには東大や神戸大、同志社大、獨協大などの学生も多数参加。彼らはその後、ポーランドとの国境の町ゲルリッツに向かい、ツィッタウ・ゲルリッツ大学と共同のワークショップに取り組んだそうです。藤野氏が語るような「強くしたたかなコミュニティーを作る」ための芽がここから育つことを期待したいと思います。

by berlinHbf | 2014-09-19 20:25 | ベルリン文化生活 | Comments(3)

アイ・ウェイウェイの展覧会“EVIDENCE”

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マルティン・グロピウス・バウに並んだアイ・ウェイウェイの作品“Stools”
© Ai Weiwei


今、ベルリンでは中国の現代美術家アイ・ウェイウェイ(艾未未)の展覧会“EVIDENCE(証拠)”が開かれています。同氏の個展としては世界的に類を見ない規模である上、4月3日のオープニングからわずか2週間で訪問者数が6万人を超えるなど、話題性は十分。週末には長い行列ができると聞いていたので、平日の午後、会場のマルティン・グロピウス・バウに足を運んできました。

中へ入ると、いきなりインパクトのある展示が目に飛び込んできます。屋根付きの中庭に、6000脚もの木の椅子がぎっしりと敷き詰められています。これは、明の時代に実際に使われていたものだそうで、私はなんとなく中国という国の広大さを実感しました。

1957年北京に生まれたアイ・ウェイウェイは、中国政府へ批判の声を上げ続けていることで知られています。2008年の北京五輪では、「鳥の巣」と呼ばれる北京国家体育場の建設に携わりましたが、後に五輪の政治プロパガンダ性を批判し、開会式を欠席。彼は当局から繰り返し圧力を受けながらも、作品を生み出し続けています。

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アイ・ウェイウェイ氏
© Gao Yuan


18の部屋、3000㎡におよぶ展示の規模は壮観。いくつかの作品には、彼の歩んできた道が生々しい形で刻印されていました。ある部屋の真ん中には、「81」という名の仮設住宅のようなインスタレーションが置かれていました。11年4月、アイ・ウェイウェイは北京空港で当局により拘束されますが、これは彼が81日間の刑務所生活を送った独房を再現したインスタレーションなのです。内部には監視カメラが仕組まれ、彼が1日24時間監視下にあったことが暗示されています。

別の部屋には、ねじ曲がった鉄骨を使ったオブジェがいくつも置かれていました。08年の四川大地震では5000人以上の児童が校舎の下敷きとなって死亡しました。中国政府が被害の全貌を明らかにしなかったことに対し、アイ・ウェイウェイは自身のブログを通して独自の調査を試みましたが、やはり当局からの激しい妨害を受けることになります。彼は作品を通して犠牲者を追悼し、建築構造のずさんさとその背景にあるものを告発しているわけです。

さらに進むと、島の地形を再現したような大理石のオブジェに出会いました。これは、日中間の争いの焦点になっている尖閣諸島をモチーフにした作品。島の周りは海域を模した線によって仕切られ、そこを越えて足を踏み入れると、係員から注意されてしまいます。

随所で中国の伝統的な素材を用いながらも、作品には中国の今日の姿が浮かび上がり、観る者は表現の自由という問題に直面するでしょう。同展のパンフレットの言葉を借りるなら、この展覧会は中国と西側世界の対話を呼び掛ける作家自身からの“Flaschenpost(海に流された瓶入りの手紙)”と呼べるのかもしれません。今も中国政府の監視下にあるアイ・ウェイウェイ本人が、ベルリンでのオープニングに姿を現わすことはありませんでした。
開催は7月7日まで。www.berlinerfestspiele.de

by berlinHbf | 2014-05-15 18:19 | ベルリン文化生活 | Comments(0)

生誕100年 ヴィリー・ブラントの写真展

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ヴィリー・ブラント写真展のチラシより

先日、地下鉄の駅で印象的なモノクロ写真を使ったポスターを見掛けました。列車の食堂車の中で、中年の男性が通路を隔てて座る女性に渋い表情の眼差しを向けた瞬間をとらえたもの。報道写真というよりは、主演俳優と女優を映した映画のワンシーンのようだと思いました。

この男性は、かつて西ドイツの首相を務めたヴィリー・ブラント(1913~1992年)。1913年12月18日のブラント生誕100年を記念し、クロイツベルク地区にある社会民主党(SPD)本部、通称「ヴィリー・ブラント・ハウス」で行われた写真展に足を運んできました。

政党本部での展覧会というと、日本では馴染みがないかもしれませんが、ドイツの政党や政治家は美術品の収集に熱心ということが少なからずあり、特にこのSPD本部では定期的に展覧会が開催されています。

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ヴィリー・ブラント・ハウスのアトリウム

三角形のモダンな外観の建物の中に入ると、そこは天井ガラスで覆われた大きなアトリウムで、光がたっぷり差し込んでいます。写真展は2部に分かれ、1階は長年ブラントを撮り続けたポートレート写真家、コンラート・ルーフス・ミュラーの作品。暗闇を背景に、近距離からブラントの表情を捉えた写真が中心で、表情の豊かさと刻まれた深いしわが彼の歩んだ激動の道のりを物語っているようでした。

静的なミュラーの作品に対し、2階には、4人の報道写真家によって収められた躍動感溢れる写真が多く並びます。シュテルン誌の委嘱を受けてブラントを追い続けた彼らの写真は、西ベルリン市長時代から連邦首相、さらにその後まで、さながらブラントの政治家人生を一望できるボリュームがありました。モノポリーで遊び、家族と過ごす時間などを収めたプライベートショットでは、くつろいだ表情を見せています。本業の政治の方では1970年、初の東西ドイツ首脳会談のためにエアフルトを訪れた際の緊張感が印象に残りました。ほかにも、やはりドイツの首相として初めてイスラエルを訪問したときの様子、ベルリンの壁が崩壊した直後の感慨に満ちた表情、そして談話に応じる際、いつも左手に持っていたタバコに焦点を当てた写真等々。

それにしても感じたことは、あの冷戦時代、しかも相手に手の内を見せないことが美徳とされる政治の世界で、ブラントが見せた率直な表情は人間味があり、絵になる人だなということでした。そんなヴィリー・ブラントの写真展は2月1日まで開催されています。火~日曜の12:00~18:00オープン。入場は無料ですが、パスポートなどの身分証の提示が必要です。
www.willy-brandt-haus.de
ドイツニュースダイジェスト 1月17日)
by berlinHbf | 2014-01-17 10:30 | ベルリン文化生活 | Comments(0)

ブレヒトの「イエスマン」と「ノーマン」

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「イエスマン」の舞台から。魁人君が「特にハラハラした」と語るシーン ©Paul Green

現在、シャルロッテンブルク地区のシラー劇場で公演を行うベルリン国立歌劇場では、上演が極めて稀な作品に出会えることがあります。5月末、劇場横のヴェルクシュタットという小規模の会場で行われた「イエスマン」と「ノーマン」も、まさにそんな体験でした。

1930年、劇作家のベルトルト・ブレヒトは作曲家のクルト・ヴァイルと共同で、日本の能「谷行」をもとにした「イエスマン(Der Jasager)」を作ります。「教育オペラ」として構想されたこの作品は同年6月、ベルリン・ノイケルン地区のギムナジウムで上演されました。

ある教師が、生徒たちと共に危険な峰越えの旅をすることになります。生徒の中に母子家庭の少年がいて、母親の病気を治す薬を手に入れるため、同行を志願。しかし、山越えの途中で少年が病気で動けなくなると、教師は少年に「このような旅で病気になった者は、谷に投げ込まれなければならない」という習わしを説き、「イエス」か「ノー」かという究極の選択を迫るのです……。

幕が開くと、全員お面とピンク色の衣装をまとった若い男女が、諧謔味(かいぎゃくみ)のあるヴァイルの音楽に乗って現れ、30分程の短いオペラが始まりました(演奏はベルリン・シュターツカペレのメンバー)。

大人の歌手に混じって少年役を演じたのは、木下魁人(かいと)君(11歳)。国立歌劇場の合唱団に所属する日本人の両親を持つ魁人君は、現在ギムナジウムに通いながら、同歌劇場少年合唱団のメンバーとしても活躍中です。「トスカ」の羊飼いの少年役など、すでにいくつものオペラで舞台経験を重ねているだけに、歌唱ぶりは堂に入ったもの。難易度の高い20世紀のドイツ語オペラを暗譜で歌うだけでも大変なのに、弟子たちの肩の上を歩くアクロバティックなシーンまでこなし、谷に落とされる直前では緊迫した演技を見せました。

残酷な結末であることや、谷に落とされる理由が原作とブレヒト作とでは異なることから、初演を観た生徒たちの間で疑問や討論がわき起こり、ブレヒトはその後、結末を変更した「ノーマン(Der Neinsager)」を新たに作りました。彼は2作続けて上演されることを望んだものの、結局ヴァイルがそれに曲を付けることはありませんでした。

この日の舞台を興味深いものにしたのは、休憩の後、1990年になって東独出身の作曲家ライナー・ブレーデマイヤーがブレヒトの原作に曲を付けた「ノーマン」が上演されたことでした。こちらも魁人君が少年役を務め、話の展開はほぼ同じ。しかし最後、少年は新しい認識を示し、助けられるのです。

喝采に包まれた終演後、魁人君に感想を聞いてみました。「歌詞は自然に覚えられたけれど、最初の作品はボーイソプラノ、次はアルトと声の高さが違うので、続けて歌うのは大変でした。3月からリハーサルが始まり、今日が最後の舞台。終わってしまって寂しいです」。

ちなみに、「イエスマン」は1932年に日本でも初演されていますが、このとき少年役を歌ったのは、後に国民的歌手となる藤山一郎さんでした。
ドイツニュースダイジェスト 6月21日)
by berlinHbf | 2013-07-01 22:53 | ベルリン文化生活 | Comments(0)

末宗美香子個展“ Wenn ich Du wäre,... ”

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明日(3月22日)の夕、末宗美香子さんの個展のオープニングが行われるので、ご案内させていただきます。末宗さんとは、2010年ホテル・ボゴタのリヒトホーフで行われた最初の個展で知り合ったのですが、作品は好評を持って迎えられ、2012年に続いて今回が同じ場所での3回目の開催となります。

関連記事:
橋口譲二さんが案内するホテル・ボゴタ (2010-1-27)
ホテル・ボゴタの末宗美香子さん (2010-11-15)

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末宗さんから届けられた写真をご紹介します。これまでの2回は人物がテーマでしたが(といっても、一言で人間とはいえない独特のキャラクターなのです)、今回も人物がテーマでありながら顔に焦点が当てられているようです。展示される作品の大部分は、ベルリンに来てからこの1ヶ月ぐらいの間で集中的に描かれたもの。ベルリン滞在中にも人物観察などをする中でインスピレーションを受けたという末宗美香子さんの世界をぜひ観にお越しください。

Mikako Suemune Ausstellung
末宗美香子個展 “ Wenn ich Du wäre,... ”(もしも私があなただったら・・・)
Hotel Bogota Berlin
22. März 2013
Vernisagge 18:30~
http://info.mikakosuemune.com/
by berlinHbf | 2013-03-21 14:06 | ベルリン文化生活 | Comments(3)

発掘の散歩術(30) - 劇場で観るエーリッヒ・ケストナー -

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グリップス劇場版『点子ちゃんとアントン』のちらし(左)。原作の挿絵(右)との違いにもご注目

子どもが読んで楽しめ、大人が読んでも味わえる本というのがある。エーリッヒ・ケストナー(1899~1974)の小説はその代表格ではないだろうか。『エーミールと探偵たち』『ふたりのロッテ』『点子ちゃんとアントン』……。子どもがハラハラドキドキできるのはもちろん、大人になってから読むと、人生の経験を重ねた分感じられるペーソス(哀愁)や深みがあるのだ。

先日、私はこの歳で初めて岩波少年文庫版の『点子ちゃんとアントン』を読み、大変感動したのだが、そのことをツイッターにつぶやいたところ、翻訳した池田香代子さんご本人より「ケストナーは大人になってからのほうが効きますね」とのお返事をいただき、深く納得した。

この『点子ちゃん』が、子ども・青少年シアターの「グリップス劇場」にて演劇作品として上演されている。もともとベルリンが舞台の作品。ぜひ観てみたいと思ったのだが、完売でない日を探すのが困難で(ほぼ毎月公演が行われて いるにもかかわらず!)、結局2カ月近く待たなければならなかった。

ある土曜日の夕方、地下鉄U9のHansaplatz駅の北側出口を上がってすぐのところにあるグリップス劇場は、子どもたちの熱気で溢れていた。親に連れられた子だけでなく、学校の課外授業で来ている子もいるようだ。もちろんこの日も客席は超満員。

裕福な両親に隠れて、夜遅く街角でマッチ売りをする点子ちゃんと、母親思いの貧しい少年アントン、この2人の友情物語を、ケストナーはナチスが台頭する直前の1931年に書いた。さて、2011年に初演された劇では、どのように描かれているだろうか。

点子ちゃんは、こちらのイメージに近い、かわいらしくおてんばな女の子という感じ。「あれ?」と思ったのは、アントンの母親が病気で寝込んでいるのではなく、失業者という設定だったこと。それも、ロシアからの避難民で、滞在許可に問題を抱えている。そして、アントンと点子ちゃんはマッチ売りではなく、一緒にデポジットの空の瓶やペットボトルを集めている……。貧富の拡大に加え、移民の問題。これは今のベルリンの社会状況そのものではないか。

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終演後のカーテンコール。舞台と客席との距離が近いのがこの劇場の特徴

客席との間に段差のない舞台を俳優たちは走り回り、ときに歌い踊り、終演後は大喝采に包まれた。周りを見渡すと、子どもたちもその親も、いろいろな人種が混じっていたことに気付く。彼らが小さいときからこういう舞台に接することは、異質な他者に対する寛容性を自然と育むことになるのではないか。少なくともそう願いたいと思う。

もちろん、点子ちゃんがアントンを助けるという筋は変わるはずもない。この作品のエッセンスが演出にしっかり受け継がれていたことは、プログラムに引用されたケストナーの文章が伝える。

「生きていくのは、きびしく、むつかしい。もしも、うまくいっている人がうまくいっていない人に進んで手をさしのべなかったら、未来は暗いものになる」(池田香代子 訳。岩波少年文庫版より)
ドイツニュースダイジェスト 1月18日)


Information
グリップス劇場
Gripstheater


劇作家のフォルカー・ルートヴィヒによって、1969年に設立された子ども・青少年シアター。上演作品は自主制作にこだわっており、年間公演数は約300回。中でもベルリンの地下鉄の人間模様を描いた1986年初演の『Linie1』は大ヒット作として知られ、海外でも広く受け入れられた。チケットは基本的に電話予約のみで、上演1日前までに劇場の窓口で受け取るシステムになっている。

住所:Altonaer Str. 22, 10557 Berlin
電話番号:030-3974740
URL:www.grips-theater.de


フリードリヒ通り駅周辺
Bahnhof Friedrichstraße


『点子ちゃんとアントン』に登場する地名の多くは、フリードリヒ通り駅の周辺に見られる。例えば、点子ちゃんの豪邸は帝国議事堂河岸Reichstaguferのそば、アントンのボロアパートがあったアルティラリー通りは現在のトゥホルスキー通り。2人が「夜の仕事」に勤しむのは駅の北側のヴァイデンダム橋Weidendammbrückeといった具合。読後に作品の舞台をめぐるのも楽しいかも。

関連記事:
特選ベルリン街灯図鑑(5) 「ヴァイデンダム橋」(2007-11-15)
by berlinHbf | 2013-01-24 18:22 | ベルリン文化生活 | Comments(2)

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