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ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


by berlinHbf


中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


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外部リンク

カテゴリ:ベルリン都市探索(西)

  • 発掘の散歩術(22) - ブリッツ庭園のチューリップ -
    [ 2012-05-09 00:03 ]
  • 発掘の散歩術(21) - シェーネベルク自然公園を歩く -
    [ 2012-04-12 12:43 ]
  • クロイツベルクの行列ができるケバブ屋
    [ 2012-01-30 18:42 ]
  • 発掘の散歩術(18) - プレッツェンゼーの悲劇を忘れない -
    [ 2012-01-19 23:22 ]
  • 発掘の散歩術(17) -ヤギが闊歩する「都会の中のパラダイス」-
    [ 2011-12-02 17:23 ]
  • 記憶の鉄路をたどる(4) - ドイツ技術博物館の保存鉄道 -
    [ 2011-10-28 18:24 ]
  • 記憶の鉄路をたどる(3) - グライスドライエックの貨物駅跡(下) -
    [ 2011-09-18 21:15 ]
  • 記憶の鉄路をたどる(2) - グライスドライエックの貨物駅跡(上) -
    [ 2011-09-10 00:40 ]
  • ヴェディングのペーター・ベーレンス・ホールと友人たちとの再会
    [ 2011-08-17 23:44 ]
  • ベルリン最大の港、ヴェストハーフェン
    [ 2011-07-27 23:57 ]

発掘の散歩術(22) - ブリッツ庭園のチューリップ -

開花を控えたブリッツ庭園のチューリップ

4月半ばに入ってもなかなか気温が上がらない今年のベルリンだが、せっかくだから春らしいものを紹介したい。桜はそろそろ散ってしまったようだし、ほかに何があるだろう。そんなことをドイツ人の知人にふと漏らしたら、「ブリッツ庭園のチューリップはどう? 本当に素晴らしいから、一度行ってみるといいわ」と思いがけぬ一声。早速その数日後、ノイケルン地区の南側にあるブリッツ庭園を訪ねてみることにした。

Sバーンのヘルマンシュトラーセ駅からM44のバスに15分ほど揺られていると、右手に大きな風車 が見えてきた。メインの入り口から入場料を払って中に入る際、受付の人から「トゥリパーン(チューリップの博覧会の名前)は来週からよ」と教えられ、少しがっかりしてしまう。案内には「4月中旬~5月中旬の開催」と書かれていたが、まだ少し早かったようだ。でも、まずはチューリップの花壇を目指してみることにした。

ブリッツ庭園は、これまでご紹介してきたマルツァーンの世界庭園やシェーネベルク自然公園と同様、ベルリン市によって運営されているだけあって、樹木も花壇もきれいに整えられていた。とはいえ、90へクタールという広さゆえ、 チューリップ庭園までの距離感がつかめない。どのくらい歩くのだろうかと思っていたところ、近くに小さなホームを見付けた。そこで待つこと数分、狭い線路の向こうから汽笛を鳴らしながら、かわいらしいトロッコ列車がゴトゴトとやって来た。1985年の庭園創設時から走っている保存鉄道だ。約50分掛けて公園内を1周することができ(乗車券は3.50ユーロ。子どもは2ユーロ)、1駅だと1ユーロで乗車できる。大勢の家族連れに混じって乗ってみた。爽やかな向かい風を心地良く浴びているうちに、チューリップ庭園の近くまで連れて行ってくれた。

庭園内を約30分おきに走る保存鉄道。往年の貴重な車両も運行中

湖に面したカレンダー広場から北東の出口までずっと続くチューリップは、やはりまだ開花していないものが多かった。それでも種類によっては、黄色、オレンジ、赤、紫などの鮮やかな花の色合いを楽しませてくれたし、これだけの数のチューリップが一斉に開花したところを想像すると、それだけで心はときめく。奥の方に行くと、人の名札が埋め込まれた花壇のスペースがあった。個人や団体がスポンサーとなって、花壇の特定の一角を買うことができるのだそうだ(広さに応じて、100~1000ユーロまでのカテゴリーに分かれる)。 自分が名親(Pate)となって咲かせるチューリップは、さらに格別なものに違いない。

ブリッツ庭園は、丸1日いても十分に楽しめる。いくつもの丘があり、湖があり、種々の庭園やユニークな橋にも事欠かない。帰り際、羊が放し飼いされた場所を通ると、子羊の愛らしさに目が奪われ、なかなかその場から離れられなかった。

満開のチューリップの様子はお届けできなかったけれど、チューリップのシーズンは5月下旬までとのこと。機会があればぜひご自分の目で、チューリップのお花見を堪能していただきたい。
ドイツニュースダイジェスト 5月4日)


Information
ブリッツ庭園
Britzer Garten


1985年、西ドイツ政府主催の庭園博覧会に際して造られた庭園。当時、東ドイツと境を接した西ベルリンの南側の住民に新しい公園を提供するというのが目的だった。入場料は2ユーロ(春のチューリップ、5~6月のツツジ、8~10月のダリアなど、特別期間中は3ユーロ)。夏の野外コンサー トや花火などのお祭り行事も。

住所:Buckower Damm 146, 12349 Berlin
電話番号:(030)700 906 80
オープン:毎日9:00~日没
URL:www.britzer-garten.de


カフェ・アム・ゼー
Café am See


カレンダー広場のItalo-Bistroやヴァッサーシュピール広場のMilchbarなど、ブリッツ庭園では飲食の施設も充実している。中でも大きな湖に面したCafé am Seeは、まるで「風の谷のナウシカ」に出てくるような建物の外観が特徴。日祝日はビュッフェが用意され、ときどき白鳥も寄ってくる湖を眺めながらの食事・休憩は楽しい。

住所:Mohriner Allee 145, 12347 Berlin
電話番号:(030)703 60 87
営業:毎日10:00~
URL:www.tafelrunde-berlin.de/cafeamseee

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by berlinHbf | 2012-05-09 00:03 | ベルリン都市探索(西) | Trackback | Comments(0)

発掘の散歩術(21) - シェーネベルク自然公園を歩く -


新緑が美しく映えるようになった季節、今回はちょっとユニークな公園をご紹介してみたい。

ベルリンの南側のターミナル駅、ズュートクロイツ駅からSバーンで南に一駅、森に囲まれたプリースターヴェーク駅を降りると、てっぺんの赤錆びた昔の給水塔が目の前に立ちそびえる。地図を見ると、ズュートクロイツ駅を頂点に、Sバーンと長距離列車、それぞれが走る2本の線路に挟まれた細長の三角形状の敷地があるのがわかる。遠くからも目立つ給水塔だが、ここがシェーネベルク南地域自然公園という大きな公園になっていることは、最近まで知らなかった。

かつてのターンテーブルは今も稼働したのでびっくり

元々この敷地は鉄道の操車場だった。1952年、長年ベルリンの主要ターミナルだったアンハルター駅が廃止になると、その南側に位置する操車場も使命を終え、広大な土地は少しずつ自然に戻っていった。70年代後半に新しい貨物駅の建設計画が持ち上がると、環境運動に熱心な市民が猛反発し、開墾を食い止めた。多くの市民の努力の甲斐あって、やがて市から風景・自然保護地域に指定され、1999年に公園としてオープン。 2000年のハノーファー万博の公式プロジェクトに選ばれたことから、ベルリン以外でも知られる存在になったという。

自然公園内に保存されている1940年製の蒸気機関車

入り口で1ユーロの入場料を払って中に入る。天気のいい日曜日だけに家族連れが多かった。給水塔の下には蒸気機関車の大きな車庫が今も構えている。近くに戦前の蒸気機関車も保存されており、わくわくした気分になってきた。この日は中に入れなかったが、車庫の中では前衛アートの展示やダンスのパフォーマンスが行われることもあるという。よく見ると、周囲にはさまざまなオブジェが飾られている。この自然公園は芸術や文化、教育との結び付きも大事にしているそうだ。

ここから北側に向かって歩いてみた。鉄道の操車場跡というと、だだっ広い空間を想像されるかもしれないが、意外にもこの自然公園にそういう場所はない。木がどこまでも生い茂り、細い遊歩道に 沿ってのみ歩けるようになっている。ベルリンのほかの多くの公園と違って、ここでは犬や自転車の持ち込みもバーベキューも禁止。「そのような余暇の楽しみは、隣接するHans-Baluschek公園でどうぞ」とHPにも書かれていたほどだ。ここはあくまで、貴重な植物や野鳥も生息する自然保護地域なのである。

一直線の遊歩道が続くシェーネベルク自然公園

だが、この遊歩道に沿って歩くのは楽しかった。突然前にトンネルが現れたり、手作りの展望台があったり、ユニークなベンチやオブジェが置かれていたり、遊びが利いているのだ。遊歩道の下には、今もかなりの数の線路がそのままの状態で敷かれている。周囲の風景は自然に還りつつあり、枕木には苔が生えているが、産業化の象徴でもある鉄道の線路との調和が、奇妙な美しさを醸し出してい た。

緑のシャワーを存分に浴びながら、自然と産業遺産、アートとの融合を楽しむ公園、と言えるだろうか。そのために最適な季節がやって来た。
ドイツニュースダイジェスト 4月6日)


Information
シェーネベルク南地域自然公園
Natur-Park Schöneberger Südgelände


シェーネベルク南側に位置する18ヘクタールの自然公園。入場料は1ユーロ(14歳未満は無料)。敷地内には多くの線路のほか、今も機能するターンテーブルなども保存されている。マルツァーンの世界庭園やブリッツ庭園と同じく、グリーン・ベルリン有限会社が管理しており、3つの公園に共通の年間パス(20ユーロ)もお得。

住所:Prellerweg 47-49, 12157 Berlin
電話番号:(030)700 906 24
開館:毎日9:00~日没まで
URL:www.suedgelaende.de


カフェ・パレズュート
Café Paresüd


自然公園内にあるカフェ(Sバーンのプリースターヴェーク駅からすぐ近く)。土日のみの営業だが、緑に囲まれた中で、ブランチ(日祝の11:00~14:00)や種々のケーキなどを楽しむことができる。小さな子連れにもやさしい。150人まで収容可能な建物は、結婚式や各イベント会場としてもレンタルしているとのこと。

住所:Prellerweg 47-49, 12157 Berlin
電話番号:0173 208 30 23
開館:4~10月の土日祝11:00~18:00
URL:www.paresued.de

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by berlinHbf | 2012-04-12 12:43 | ベルリン都市探索(西) | Trackback | Comments(2)

クロイツベルクの行列ができるケバブ屋

私の地元、横須賀・三浦のタウン紙「はまかぜ」に最近書いた記事を転載します。

日本のような流行の伝播がないドイツで、いわゆる「行列ができるお店」というのはまずお目にかかりません(もちろん従業員が少ないため仕方なく並ぶことはありますが・・・)。ただ、例外はあります。2012年の最初は、ベルリンでおそらくもっとも人気のあるケバブ屋さんをご紹介したいと思います。

串に刺した肉を回転させながら焼き、それをスライスして野菜と一緒にパンに挟んで食べるドネル・ケバブは、最近日本でも屋台で売られているそうなので、ご存知の方も多いと思います。元々はトルコの伝統的な料理ですが、パンに挟んで食べるようになったのは、1970年代のベルリンが最初だとか。戦後、西ベルリンに出稼ぎ労働者としてやって来たトルコ人が考案し、やがて世界中に広まりました。トルコ系移民が多いクロイツベルク地区を中心に、ベルリンには数えきれないほどのケバブのスタンドがあります。

時間帯によっては1時間近く並ぶことも

地下鉄メーリングダム駅を上がってすぐの「ムスタファズ・ゲミューゼケバブ」の前を通ると香ばしい匂いが鼻を突いてきます。店の前には昼も夜も常に長い行列ができているのですが、毎回並んでも食べたくなってしまう。そんなケバブ屋は他にそうそうありません。

何が違うのでしょうか。チキンや野菜が新鮮なのはもちろんですが、ここのお店はさらに油で炒めた野菜が盛り込まれているのがミソ。全体の味を決定付けるタレ、さらに締めのチーズとぎゅっとひと絞りのレモン汁。値段は日本円で約300円。これだけで一食分のボリュームがありますから、おいしい上にお得感もたっぷりです。

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このお店は3年半前にも一度ブログで紹介していますが、ここ数年の人気沸騰ぶりはすさまじく、よほどの時間帯を除けば並ばないと買えないようになってしまいました。それでも、この前を通るとどうしても食べたくなってしまうときがあるんですよねぇ。

Mustafas Gemüse Kebab
Mehringdamm 32, 10961 Berlin
http://mustafas.de

関連記事:
メーリングダムの野菜ケバブ屋さん (2008-06-25)
メーリングダムの"Curry 36" (2006-05-09)

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by berlinHbf | 2012-01-30 18:42 | ベルリン都市探索(西) | Trackback | Comments(7)

発掘の散歩術(18) - プレッツェンゼーの悲劇を忘れない -

「プレッツェンゼー」には2つの顔がある。1つは、地名の由来になっている同名の湖。太陽が照る夏の日にここを訪れたことがあるが、西側の岸には人口の海水浴場もあり、誰もが上機嫌、パラダイスのような光景が広がっていた。もう1つは、運河をはさんで湖の西側に位置するプレッツェンゼー刑務所。ここはナチス時代、国内外の反体制派の人々を送り込んで処刑したという暗黒の歴史を持つ場所として知られる。

テーゲル空港からTXLバスで市内に向かう際、運河に沿って走る記憶をお持ちでないだろうか。プレッツェンゼー刑務所の記念館は、この運河沿いにある。昨年12月の暮れも押し迫った日の午後、私はGedenkstätte Plötzenseeのバス停に降り立った。

高い壁がそびえる記念館の入り口。この奥は現在も市の刑務所として使われている

運河側とは反対の方向に歩くこと数分、目の前に赤煉瓦を積み上げた高い壁がそびえ立ち、それが通りに沿ってずっと続いていた。遠くを見ると、工場の煙突からもくもくと煙が上がっている。どこか殺伐とした気配を漂わせる場所だが、それだけではない。1933年から45年までの間、この壁の向こうで2891もの人が絞首刑にされたのだ。

門をくぐると、そこは壁に囲まれた大きな中庭になっており、奥には「ヒトラー独裁の犠牲者に捧ぐ」と書かれた銘板が、その裏には2つの部屋からなる小屋が立っていた。最初の部屋に入り、私は思わず後ずさりした。手前にはいくつもの献花が置かれ、奥には2つの縦長の窓。その上には鉄製の竿が架けられ、5つの釣り鉤がぶら下がっている。ここが処刑室であることは明らかだった。

プレッツェンゼー記念館の処刑室

ここでの処刑は元々手斧で行われていたが、1936年にはヒトラーの命でギロチンに取って代わったという。死刑判決を受けた人々は、ここに面した大きな監房(現存せず)に収容された後、中庭の処刑室に運ばれた。

もう1つの部屋では、刑務所の歴史と犠牲になった人々に関する資料が展示されていた。私が特に見入ったのは、当時ドイツ最大のレジスタンスグループの1つだった「赤いオーケストラ」について。ドイツの軍事情報を通信やビラを通じてソ連に伝えようとした彼らは、42年夏ゲシュタポによって捕らえられ、プレッツェンゼーで死刑判決を受けた。現在この部屋に見られる釣り鉤の付いたギロチン台が設置されるようになったのは、彼らを一段と残酷な手法で殺すためであったという。私は映画『白バラの祈り』での理不尽な法廷のシーンを思い出し、また絞首刑に要した分秒まで几帳面に記された報告書を見て、その冷酷さに身が凍った。「赤いオーケストラ」のメンバーの死刑の日付は、私の父が生まれるちょうど前後の時期でもあった。そのことを連れてきた妻に伝えたら、一瞬間を置いて、声を上げた。「え、それってつい最近のことじゃないの!」。

大晦日のカウントダウンを控えて華やぐ中心部から、わずか20分ほどの距離だった。世界でいくつもの独裁政権が崩壊した2011年。私はそれらの出来事を思い返しながら、決して遠くない過去と現在とを重ね合わせようとした。
ドイツニュースダイジェスト 1月20日)


Information
プレッツェンゼー記念館
Gedenkstätte Plötzensee


「赤いオーケストラ」同様、1944年7月20日の有名なヒトラー暗殺未遂事件(通称「ワルキューレ作戦」)に関わった89人もここで絞首刑にされた。最寄りのバス停Gedenkstätte Plötzenseeには、以前のようにTXLバスは停車せず、123番バスに乗る必要がある。バス停からは徒歩3分。入場無料。

住所: Hüttigpfad, 13627 Berlin
電話番号:(030)344 32 26
開館:(3~10月)毎日9:00~17:00 (11~2月)毎日9:00~16:00
URL:www.gedenkstaette-ploetzensee.de


プレッツェンゼー
Plötzensee


ヴェディング地区のレーベルゲ公園に面した全長1.7キロの湖。毎年6~8月にオープンする西岸の海水浴場(Freibad Plötzensee)は、水の清潔度も良好とのこと。天気の良い日には、日光浴など湖畔でくつろぐ人の姿が多く見られる。106番バスのSylter Str.が最寄りのバス停。

住所:Nordufer 24, 13351 Berlin
電話番号:(030) 4502 0533 (Freibad Plötzensee)

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by berlinHbf | 2012-01-19 23:22 | ベルリン都市探索(西) | Trackback | Comments(0)

発掘の散歩術(17) -ヤギが闊歩する「都会の中のパラダイス」-

ツィーゲンホーフの夏の様子。週末になると家族連れで賑わう

昨年夏のある日、シャルロッテンブルク宮殿の南側のダンケルマン通りを歩いていた時のこと。ごく普通の建物から中庭に抜ける道に、人の流れができていた。何だろうと思い、その流れに吸い寄せられるように中庭に抜け出ると、そのまぶしい光景に私は一瞬、自分が見ているものを疑った。

住宅街にあって、そこだけすっぽり大きな空間が生まれている。木々が茂り、小さな牧場で餌を食べているヤギたち。その奥には土を盛り上げて作ったすべり台が置かれ、子どもたちがきゃっきゃ言いながら滑り降りている。静かに佇んでいる老人の姿もちらほら。ベルリンの街を歩いていると、時々宝物を掘り当てた気分になることがあるが、この日がまさにそうだった。

行儀よく小屋に戻るツィーゲンホーフのヤギたち。それぞれに名前が付けられている

あれから1年、あの空間の秘密を知りたくてダンケルマン通りを再訪した。晩秋の平日ゆえ、広大な中庭は閑散としていたが、放し飼いにされたヤギの親子がいきなり私を迎えてくれた。たまたまここで出会った年配の女性、ドロテー・トルンパさんに話を伺うことができた。

この不思議な空間の名は、「ツィーゲンホーフ」。「ヤギの中庭」という意味だ。1970年代まで、ここには奥に至るまで古い住宅が密集していた。その多くは日当りが悪く、トイレも共同という状況にあったという。その後、市の再開発によって裏手のアパートは解体され、新しい建物が建つことが決まっていた。ところが、地域住民が大反対し、当時は住宅占拠運動も盛んだった場所柄、とうとう市の決定を覆してしまった。その後、住民が独自に木を植え、芝生を植え、ほどなくしてヤギ、ニワトリ、ガチョウといった動物が連れられて来た。いまやシャルロッテンブルク地区の公共の緑地であり、自主運営しているキーツの人々の努力の成果でもある。「子どもたちにとっては、自然の仕組みを学べる場所としても貴重です。日本の皆さんに紹介してもらえるのなら、『都会の中のパラダイス』と書いておいて(笑)」とトルンパさん。

親切にも、トルンパさんは通称クラウゼナー・キーツと呼ばれるこの界隈を案内してくれた。「このキーツのいいところは昔からの顔なじみの人が多いこと。1つの村という感じかしら。昔ここに住んでいた私の知人など、30年近く海外で暮らしていたのだけれど、最近また戻って来たんです。居心地がいいのよね」。

一方で、シャルロッテンブルクという地区からすると少し意外だが、決して裕福なエリアではない。ベルリン市がまとめた社会的状況の統計によると、全434の対象区域のうち、306位だという。「裕福な人もいれば貧しい人もいる。いろいろな人が程よく混ざり合って住んでいるのも、このキーツの良さだと思うの。東のプレンツラウアー・ベルク地区など、いつの間にか裕福な人ばかりになってしまったでしょう」。そういえば、20世紀初頭、ベルリンの庶民を愛情込めて描いた画家ハインリヒ・ツィレが住んでいたのもこの界隈だった。

19世紀末、ハインリヒ・ツィレが撮った写真。煙突の右隣の建物が、ゾフィー・シャルロッテン通りの彼のアパート

気が付くと、「ブロート・ガルテン」というオーガニックパン屋の前に着いていた。このクラウゼナー・キーツは、2020年までに環境保護のモデル地区になることを目指しているそうだ。
ドイツニュースダイジェスト 12月2日)


Information
ツィーゲンホーフ
Ziegenhof


シャルロッテンブルクの住宅街にある6000㎡の緑地。この夏、子ヤギが誕生し、現在5匹に。「昨年までは区から補助金が出ていたのですが、不況の影響でカットされてしまいました。今はこの農園で作っているハチミツや絵はがきなどを販売して、それを運営費に充てています」とトルンパさん。日中はいつでも中に入れる。

住所:Danckelmannstr. 16, 14059 Berlin
電話番号:(030)3256 577
URL:www.klausenerplatz-kiez.de


ブロート・ガルテン
Brotgarten


1978年創業のベルリン最古のオーガニックパン屋の1つ。ブランデンブルク州の農園の全粒粉を自家製の製粉機で毎日ひいてパンを作っている。種類豊富なパンやケーキをその場で食べられるほか、平日の14時までは隣のビストロで食事もできる。地域住民の集いの場でもあり、このキーツに関するパンフレットも置かれている。

営業:月〜金7:00〜18:30、土7:00〜14:00、日7:00〜15:00
住所:Seelingstr. 30, 14059 Berlin
電話番号:(030)322 8880
URL:www.brotgarten.de

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by berlinHbf | 2011-12-02 17:23 | ベルリン都市探索(西) | Trackback | Comments(0)

記憶の鉄路をたどる(4) - ドイツ技術博物館の保存鉄道 -

ベルリンの乗り物の歩みを一望」で紹介したドイツ技術博物館の車庫の一般公開を見た後、同博物館の保存鉄道というのに乗る機会がありました。これがなかなか楽しい体験だったのでご紹介したいと思います。17時半の閉館の少し前、車庫の横に行ってみると、小さなホームの横にディーゼル機関車に率いられた古めかしい客車が横たわっていました。車庫から博物館まで1,2キロぐらい(?)、かつて終着駅アンハルター駅に向かう線路はほとんど全て撤去されましたが、その一部が保存されていたのでした。

技術博物館の保存鉄道の存在は知っていましたが、こんなところが発着点になっていたとは。ちょっとわくわくした気分になってくると、やがて列車は静かに動き出しました。

クロイツベルクの見慣れた風景が、古い客車のボックス席に揺られていると、時代が一気にさかのぼった気分になります。博物館のHPの記事によると、この客車は1937年にブレスラウ(現ポーランドのヴロツワフ)で製造されたものだとか。すごくゆったりしていて、普段乗るSバーンとは気分も全然違います。

鉄橋の墓場 - 天使の降りた場所(14) -」で以前書いたヨーク橋を越えると、最近公園に生まれ変わったばかりのグライスドライエックの操車場跡に差し掛かります。私がここを散策してから約3年、随分きれいに整備されたものです。

雨で歩く人などほとんどいないのに、ちゃんと踏切係の人も立っていました。「記憶の鉄路をたどる(3) - グライスドライエックの貨物駅跡(下) -」で私がうろうろしたのはこの辺りでしょう。また改めて散策に訪れたいと思いました。

発車して10分も経たない頃でしょうか、博物館の手前で列車は停車しました。これにておしまいです。

周辺には蒸気機関車のターンテーブルなど、貴重な産業遺産が錆び付きながらも保存されていました。

博物館の裏口から中に入って、展示物を横目に出口へ向かいます。できればこの先にあったかつての大終着駅、アンハルター駅まで乗っていたかったけれど、あとは想像で。往年のベルリンをほのかに感じられた旅でした。

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by berlinHbf | 2011-10-28 18:24 | ベルリン都市探索(西) | Trackback | Comments(5)

記憶の鉄路をたどる(3) - グライスドライエックの貨物駅跡(下) -

Gleisdreieck(2008-08-17)

前回のつづき)
工事中のグライスドライエックの敷地内を西に向かって歩いて行くと、やがて現役の線路に行き着いた。ここからは夕暮れ時のポツダム広場のビル群がよく見渡せた。

これは中央駅から南に行く列車が通る幹線。ちょうどSüdkreuz方面から来た列車が、かなりのスピードで駆け抜けて行った。

大分暗くなってきたので、Möckernstr.側の出口に戻ろうとした。途中横切ったこの2本の線路は、あまり廃線という風には見えない。

この線路の行方が気になって、自転車を置いて北側へ歩いてみた。すると…

昔の貨物駅らしきものの跡が見えてきた。建物には明かりも付いており、今にも向こうから列車がやって来そうな気配がある。

ビーチバレーのコートを横目に広大な敷地から出た。この日の探訪から3年経った今日、まさか先ほどのレールの上を特別列車に乗って走ることになるとは思わなかった(この模様は改めて別の機会に)。

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by berlinHbf | 2011-09-18 21:15 | ベルリン都市探索(西) | Trackback | Comments(0)

記憶の鉄路をたどる(2) - グライスドライエックの貨物駅跡(上) -

Gleisdreieck(2008-08-17)

先週末、建設中だったグライスドライエックの公園の一部がオープンするという新聞記事を目にした。グライスドライエックは地下鉄U1とU2の駅名にもなっているが、ポツダム広場の南側に位置するかつて貨物駅だった広大な敷地(以前、以下の記事でご紹介しています)。このニュースを読んで、3年ほど前の夏にあの敷地内を探索したことを思い出し、ここにアップしたいと思う。

関連記事:
天使の降りた場所(12) - 都心の中の無人地帯 - (2006-10-16)
100年の重みに耐えた橋 - 天使の降りた場所(13) - (2006-10-18)

ベルリンの中心部に残る空き地として、ここはもっとも気になる場所だった。Möckernstr.側の入り口から中に入ると、ビーチバレーのコートがあり(今はもうないかもしれない)、柵を越えて自転車でその奥へと初めて入ってみた。

北はラントヴェーア運河、南はモヌメンテン通りまで35ヘクタールの敷地に、アンハルター貨物駅(東)とポツダム貨物駅(西)の2つの大きな操車場があった。私がいるのはアンハルター側。1952年まで、ここに鉄道が走っていた。

あちこちで工事の様子が伺える。さすがにこんな場所に来る物好きはそういないが、犬を連れて散歩している人を見かけた。この向こうには旧アンハルター駅がある。つまり、アンハルターを出た列車は必ずここを通っていたことになる。

さらに南側に歩くと、昔の詰所のような建物の跡が見えてきた。

その先には、以前「100年の重みに耐えた橋 - 天使の降りた場所(13) -」で紹介した鉄橋がいくつも延びていた。この上を鉄道が走ることはもうないが、この橋は一種の文化財として公園に組み込まれることになっている。いつかこの上を歩くのが楽しみだ。

(つづく)

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by berlinHbf | 2011-09-10 00:40 | ベルリン都市探索(西) | Trackback | Comments(5)

ヴェディングのペーター・ベーレンス・ホールと友人たちとの再会

Peter-Behrens-Halle in Wedding (2011-08-02)

先日ご紹介した世界遺産のファーグス工場。ヴァルター・グロピウスはこの建築の設計に際して、ベルリン・モアビットにあるAEG社のタービン工場(ペーター・ベーレンス設計)から大きな影響を受けたことで知られています。このタービン工場とほぼ同時期の設計で、デザインもよく似た、やはりAGB社の製造組み立て工場(AEG-Montagehalle)が、ヴェディング地区のGustav-Meyer-Alleeにあります。先日、初めて昼間の内部の様子を見ることができたので、ここでご紹介しましょう。

この日の夕方、2人の友人に久々に再会しました。奥はベルリン工科大学(TU Berlin)で構造工学を研究している増渕基くん(以前この記事などでご紹介しています)。特に橋の構造には大変詳しく、最近共訳で「Footbridges―構造・デザイン・歴史」(鹿島出版会)という本も出版しているほど。専門書ゆえに高価なのは難ですが、非常に意欲的で、かつヴィジュアル的にも美しい本です。

手前は建築家の光嶋裕介くん。彼のことは2007年にここここなどで紹介しています(久々に見直してみて懐かしくなりました)。彼は2008年に日本に帰り、建築事務所を設立したのですが、最近は内田樹氏の道場「凱風館」の設計を手がけるなど、すっかり有名人になった感があります。あの「ほぼ日刊イトイ新聞」でも連載(『みんなの家。建築家一年生の初仕事』)が始まり、これがまた非常にスリリングなので、ぜひお読みください。裕介くんがベルリンに来るのは、完全帰国以来初めてとのことで、いろいろな話で盛り上がりました。

1980年代まではドイツの大手電機メーカーAEGの大型機械、タービン、電車部品等の製造組立工場だったこのホール。現在はベルリン工科大学土木工学科の実験棟として使われています。増渕さんの仕事場ということで、中を案内してもらいました。レンガ壁の外観はさすがに重々しい感じがするのですが、内部のこの明るさには驚きました。さすがモダンの先駆けになった革命的な建築だけのことはあります。

ホール周辺に何本も見える引き込み線は、この工場ができる前ここにあった家畜市場時代のものだそう。敷地内は大変広く、大学キャンパスだけでなく、多くの企業のオフィスにもなっています。

増渕さんにもらった資料によると、大学の単独の実験棟としてはおそらく世界最大規模(幅33m、奥行き180m、高さ24m)とのこと。現在はベーレンスに敬意を表してPeter-Behrens-Halleと呼ばれ、国の文化遺産に指定されています。友人との再会でたくさんの刺激をもらった午後のひと時でした!

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by berlinHbf | 2011-08-17 23:44 | ベルリン都市探索(西) | Trackback | Comments(5)

ベルリン最大の港、ヴェストハーフェン

Westhafen (2011.07.25)

一体どこの街の港と思われるかもしれませんが、れっきとしたベルリンの中心部です。ティーアガルテン地区のモアビットにあるヴェストハーフェン。地下鉄U9のWesthafen駅を降りて、人気のない運河の方を歩いて行くとこの風景が見えてきます。

それにしても、7月末とは思えない天気ですよね^^;)。

水路の要衝にあるヴェストハーフェンは、実はベルリンで最大の港。すぐそばに貨物駅があることからもわかるように、船で運ばれてきた物資がここから陸路を通して運ばれてゆきます。

20世紀初頭に造られたレンガの倉庫が並び、これらがベルリンの中心部の中でも異色の風景を形作っています。

ここにはちょっとした用があって来たのでした。中央やや左手に見える建物(昔の穀物貯蔵庫)の中に、ベルリン国立図書館の新聞アーカイブがあります。国立図書館の2つの本館は中心部ですが、どういうわけか新聞部門はこんな辺鄙な場所にあるのです。ここには1740年のベルリン最古の新聞から現在に至るまでドイツを中心とした様々な新聞が収められています。ここに来るのはかれこれ7年ぶりでしたが、戦前の新聞をマイクロフィルムで眺める作業は、なかなか楽しいものでした。

1つ上の写真の眺めから後ろを振り返ると、引き込み線の上に小さな電気機関車と貨物が寂しそうに横たわっていました。線路の状態からすると、この上を走ることはもうないのでしょう。

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by berlinHbf | 2011-07-27 23:57 | ベルリン都市探索(西) | Trackback | Comments(4)

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