ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


ベルリンガイドブック
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本書は2009年10月発行「素顔のベルリン」の増補改訂版です。2013年に改めて新規取材を行い、データを更新。レストランやショッピング、コラムなどのページも増量し、より充実したガイドブックに生まれ変わりました。

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現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

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ベルリンの小津安二郎体験

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ポツダム広場のKino Arsenal(2003年2月)

前回に続いて、2004年のベルリン国際映画祭について書いた文章の後半を掲載します。

--------------------------------------------------------------
去年(2003年)のベルリナーレでは、生誕100周年の小津安二郎の主要作品が取り上げられ、その後、彼の全作品が上演されるという回顧展もありました。恥ずかしいというか、面白いというか、私は黒澤映画も小津映画もベルリンに来て初めて観たのですが、数々の傑作群に触れていくにつけ、こんなすごい作品が戦後混乱期の日本で撮られていたのかと驚かずにはいられませんでした。

小津映画といえば、「晩春」「麦秋」「東京物語」といった戦後に撮られた作品群が一般には有名だと思います。私もこれをいい機会にほとんど全て観ましたが、他に何よりすばらしかったのが、「生まれてはみたけれど」という戦前(1932年)の無声映画。小津ファンの韓国人の友人に「とにかく面白いから」と言われて観たのですが、これが本当に面白いんです。子供の視点から見た、大人社会の違和感、矛盾というテーマを描いた作品なのですが、現代にも通じるメッセージを持っているし、何より心地よく笑える傑作です。ドイツ人にも大うけでした。無声映画ですが、ベルリンで無声映画が上演される時によく採られる方法で、ピアノの生伴奏付き。70年も昔の日本映画を未来都市のようなポツダム広場の映画館で、ドイツ人客と観るのは何となく不思議な気分でしたが、結局いいものは時代も国も超えて受け入れられるのだ、と思うと私はとてもいい気分になりました。

なぜこの映画について触れたかというと、私がもしずっと日本にいたら、おそらく観ないまま終わってしまったであろう可能性も高いからです。戦前の無声映画を普通の映画館で上演する機会などそうそうないでしょうし、もし機会があったとしても、お金を払って観に行く気になったかどうか。

私がこの映画を観るよう薦めてくれたのは、映画学を勉強している韓国人の女性でした。そして、黒澤明の映画を初めて通して観たのは、日本学を勉強しているドイツ人の友達の家ででした。つまり、私は日本人ではない彼らから、日本を「再発見」するきっかけをもらったのです。外国に住んでいると、日本がどんどん遠ざかっていくかというと、必ずしもそうではなく、このように日本を新たに見つめなおす機会を与えられるということが少なくありません。

それにしても、あの独特のローアングル、スローテンポの、純日本風とも言える美学に貫かれた小津の映画が、ドイツ人などに受けるのか?と思われる方もいるかもしれません。ところが、私が観た戦後の作品の上演会では、どれもほとんど大入りでした。それどころか、一番有名な「東京物語」と遺作の「秋刀魚の味」ではあまりに人が殺到し、私は結局切符が買えず、追加上演を待たなければならないほどでした。

ドイツ人(あるいは他の外国人と)見ていて面白いのは、どうしてここで笑うのか、など反応の仕方が明らかに日本人とは違うことがあることです。例えば、「彼岸花」だったかで、こういうシーンがありました。保守的で頑固な父親、自分の娘が結婚したいという相手を連れてきたが、当然受け入れない。ある日、ボーイフレンドがアパートで落ち込んでいる彼女を励ました後、「いろいろあるけれど、一緒にがんばろうよ」みたいなことを言って、最後に彼女の肩の上に手を置いて、去っていくというシーンでした。何ということのない場面ですが、ここでどっと笑いが起きたのです。私には全く「???」でした。終演後、日本人の知人を見かけたので、そのことについて話してみたら、「例えば、ドイツ人がそのような状況で彼女と別れるという時、抱きしめるか、キスをするのが普通で、肩に手を置くだけで帰っていくなんていうことはありえない。ドイツ人はそれでびっくりしたんじゃないかなあ。」とその人は言いました。
なるほど、そういうことなのかもしれません。それにしても、笑うところではないと思うのですが…

とはいえ、このような場面はごく例外で、ベルリンの観客は小津の映画を静かに見入っていたと思います。「東京暮色」という映画では、あのヴィム・ヴェンダース監督が観に訪れていました。「パリ、テキサス」や「ベルリン・天使の詩」などで知られるこのドイツ人監督は、小津映画の崇拝者としても知られ、「東京画」という小津にささげるドキュメンタリー映画を作っているほどです。

最初の話から大分飛んでしまいましたが、映画はやはりいいものです。今回は現在ベルリンで開催中の、この巨大なお祭りの話を中心に書いてみました。

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by berlinHbf | 2009-01-22 23:26 | ベルリン文化生活 | Comments(7)
Commented by miharu at 2009-01-23 18:11 x
私も小津作品、久々に見たくなりました。
カラー作品「お早う」も、子供の目からみたユーモアで、笑えますよ。
「生まれてはみたけれど」の20年後の作品。
Commented by berlinHbf at 2009-01-24 09:26
miharuさん
コメントありがとう!「お早う」も確か見たことあります。川沿いの土手近くの家が舞台だったような。小津さんは子供の描き方がうまいですよね。兄弟同士の会話も楽しい。
Commented by gramophon at 2009-01-26 18:19 x
1989年にも小津特集が西ベルリンの単独上映館でありました。その時も大入りの満員で、結局見られず、日本に戻ってから、衛星放送でやっと見ましたよ。

カラー映像は赤にこだわってアグファ社のフィルムを使ったとか、「小早川家の秋」なんか見ると、電卓がないから二人で算盤を弾いて検算したとか、当時の風俗がよく織り込まれてますね。
Commented by berlinHbf at 2009-01-29 23:12
gramophonさん
今週は多忙につき、更新とコメントへのお返事が滞ってしまいすみません。

小津映画は過去においてもベルリンで度々上映されていたのですね。それにしても、日本人もびっくりするほどの注目の高さです。ドイツ人が憧れる日本(人)像と合致するものがあるのでしょうか。
Commented by Til at 2009-02-05 16:23 x
>日本人ではない彼らから、日本を「再発見」するきっかけをもらったのです
私もです!
初めて黒澤明の作品を観たのは、ドイツ人夫が DVDを買ったからでした。

あのドイツで有名な『将軍』。子供のころ、なぜか両親に映画館に連れて行かれて観ました。
映画版でない連ドラものを観たのは、これまた夫が観ていたからでした。
子供のころのうっすらした記憶との再会。こんなことがドイツであるとは思いもしませんでした。
Commented by berlinHbf at 2009-02-08 07:08
Tilさん
>子供のころのうっすらした記憶との再会。
こういうことが異国で起こるというのは面白いことですよね。私の小津体験と重なるものがあります。
Commented by 春日 at 2014-04-24 18:35 x
こんにちは、ベルリン天使の詩いいですよね。さて、ご存知とは思いますが、日本語の起源、言霊百神というサイトと短歌一首をご紹介させて頂きます。

なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな

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