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ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


by berlinHbf

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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


ベルリンガイドブック
「素顔のベルリン」増補改訂版
¥1,680
ダイヤモンド社
(Amazon、全国各書店にて発売中)

本書は2009年10月発行「素顔のベルリン」の増補改訂版です。2013年に改めて新規取材を行い、データを更新。レストランやショッピング、コラムなどのページも増量し、より充実したガイドブックに生まれ変わりました。

Amazonにてネット購入ができます。



『街歩きのドイツ語 』
¥1,575
三修社

豊富なビジュアルとドイツ語フレーズを楽しめる1冊。基本のあいさつ表現から、街にまつわるドイツ語豆知識まで、ガイドブックとともに旅に役立つ会話集です。




『素顔のベルリン 過去と未来が交錯する12のエリアガイド 』
¥1,575
ダイヤモンド社
(2009年発売)

地球の歩き方シリーズ初、待望のベルリンガイドブック誕生!比類なき歴史を抱えつつ、明日へ向かって日々進化し続ける首都ベルリン。「ドイツで最もドイツらしくない」といわれるこの町の知られざる魅力を、現地在住著者が12のエリアにわけて徹底紹介。


現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

ベルリン更新情報
2013/02/20 up

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クロイツベルク時空散歩(7) - 国境の三角農園(下) -

クロイツベルク時空散歩(7) - 国境の三角農園(下) -_e0038811_207213.jpg
(前回のつづき)

クロイツベルクの三角農園の話の最後として、今回はこの場所の前に立つ「一本の木」に関連したお話をしたいと思う。その木とは、前回と前々回の冒頭の写真に写っているあの大きな木のことである。

あるとき、メヒティルトさんが私に話してくれた。この木は戦前からここに立っているのだと。木の寿命からしたら、それはとりたてて特別のことではないかもしれない。だが、このベルリンで、しかも戦争の被害がとりわけ著しかったこの一帯で生き残り、戦後は壁がすぐ隣に建ったにも関わらず切り倒されることなく立ち続けたというのは、やはりそれなりにすごいことなのである。

クロイツベルク時空散歩(7) - 国境の三角農園(下) -_e0038811_20224362.jpg
しかしこの木が戦前からのものだとどういう根拠でいえるのか、メヒティルさんからお借りした貴重な資料をもって以下に示したい。これはいつか一度紹介した1954年のこの界隈の空中写真である。「あるユダヤ人女性の記憶」で出てきたミヒャエル教会広場(M.Pl)は完全に壊滅し、写真右手「クロイツベルク子供農園」(Kinder)は戦争によって空き地となった場所から後に生まれたことが見て取れる。画面中央のやや上、私がMと印を付けたのがこの周囲で唯一生き残ったメヒティルトさんの生家なのだが、そのすぐ上を見ていただきたい。画面下から左上のシュプレー川まで半円形状に延びるエンゲルダム(この線に沿って後に壁が築かれることになる)をはさんで、矢印(↑)で指したのがあの三角地帯だ。この写真のサイズでは確認しづらいけれど、確かにあの木が立っている。

クロイツベルク時空散歩(7) - 国境の三角農園(下) -_e0038811_208238.jpg
時代は第二次世界大戦前へと飛ぶ。今年の4月初頭、「あなたに一度見せたかった写真がようやく出てきた!」と言ってメヒティルトさんは2枚の写真を私に見せてくれた。それは、1930年代に彼女の親が撮影したというあの三角地帯の貴重な写真だった!あるジュースメーカーの車の前で2人の男が談笑している。のどかな昼下がりに撮った写真だろうか。ここから戦争の影を感じ取ることは難しい。画面右には、当時まだ細身のあの木が写っている。

クロイツベルク時空散歩(7) - 国境の三角農園(下) -_e0038811_2083448.jpg
全く同じ場所からもう1枚。おそらくこちらの写真の方が時代が後で、この頃すでに戦争が始まっていたのではないかとメヒティルトさんは推測する。中央に写っているのが彼女の父親、ルドルフさんである。このサイズでは確認しづらいが、彼はこちらに向かってにっこり微笑んでいる。あの木だけでなく、この後過酷な運命を迎える背後のアパートもよく見ていただきたい。

クロイツベルク時空散歩(7) - 国境の三角農園(下) -_e0038811_2084580.jpg
その写真から約70年後(!)の2005年、メヒティルトさんはご主人のルートヴィヒさんとこの三角地帯を訪れた。父親が写った写真を意識して、彼女は夫をあの木の横に立たせて同じアングルで写真を撮った。一人のトルコ人が作った野菜農園を背景に、さらにその後ろには戦災を免れた2軒のアパートが見える。私には、この一連の写真ほどベルリンという街をよく伝えているものはそうないように思われる。

クロイツベルクの三角地帯のことを取り上げるにあたって、私は3月から4月にかけて、何度もあの場所を訪れた。周囲の木が緑を芽吹かせるようになっても、件の木は冬の姿のままだった。ひょっとしてそろそろ寿命なのでは、私はそんなことまで思いをめぐらせた。

クロイツベルク時空散歩(7) - 国境の三角農園(下) -_e0038811_2091435.jpg
しかし、4月の末に再び訪れたら、あの木は大地にしっかり根を張り新緑を咲かせていた!うれしかった。そのたくましい生命力は、まさにベルリンそのもののような木だと私は思った。

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by berlinHbf | 2007-06-10 18:07 | ベルリン発掘(境界) | Comments(6)
Commented by しゅり at 2007-06-11 04:59 x
こんにちは、マサトさん。
上記のマサトさんの文章。
なんだか言葉になりませんが
翻弄された歴史の中で生命の息吹を見せる木。
ジーンときました・・・。
Commented by berlinHbf at 2007-06-11 07:29
>しゅりさん
ありがとうございます。この木にはなんだかいとおしさを感じてしまいます。このシリーズも次回で最後です。
Commented by 及部 和良・千鶴子 at 2007-06-11 07:32 x
中村 様
11日間のベルリンの旅を終えて、無事日本に帰国いたしました。
5月31日 ブランデンブルグ門で 中村様と初対面し、ご案内いただき
ながら大通りを東に進み、マルクス・エンゲルス像の前を通って、
ニコライ教会近くのシュプレー河畔のドイツビールレストランでの
昼食を楽しく思い出しております。ご親切に色々教えていただいた
ベルリン情報を頼りに、充実した旅行となりました。心より御礼申し
あげます。この旅行記は、追々私のブログでご紹介させていただき
ますので ご笑覧下さい。ありがとうございました。
とりあえず御礼まで。
Commented by berlinHbf at 2007-06-11 07:58
>及部さま
先日はこちらこそありがとうございました。充実したベルリン滞在になったようでうれしく思います。ブログでの旅行話の更新を楽しみにしております。
Commented by Ken at 2007-06-12 01:08 x
歴史を経た建物もそうだけど、やはり木のような
イキモノは、やはり僕たちに語るところ、ありますよね。
町内の長老という感じ。
そんな語りを聞ける耳、(目も?)うらやましいなあ。
マサトさんの耳で聞いたベルリンの話、今後もよろしくです。

ところで種類は何の木でしょう??
Commented by berlinHbf at 2007-06-13 07:54
>Kenさん
ご感想ありがとうございます。
そうですね、この木は何かをわれわれに語りかけてきますね。といっても、それはすぐれた歴史の語り部(メヒティルトさん)あってのことだったと思います。この木の種類は、わかりません・・・ご存知の方がいたら教えていただきたいです。

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