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ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


by berlinHbf


中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


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レオシュ・ヤナーチェクの音楽 - ラトルの「シンフォニエッタ」 -

Leoš Janáček(1854-1928)

チェコのクラシック音楽というと普通真っ先に名前が上がるのはドヴォルザークとスメタナだが、私はヤナーチェクの音楽により強い愛着を感じる。チェコの片田舎のモラビア地方出身のヤナーチェクの音楽には、先の2人のような西欧的な洗練さは見られない。民族色が濃く、ある意味アクが強いというか、とにかく非常に個性的な音楽を書いた人だということは確かだ。それゆえ彼の音楽はメジャーにはなりにくいのかもしれないが、一度その魅力に取りつかれてしまうとなかなかそこから逃れられなくなる。

私は高校生の時にヤナーチェクのヴァイオリンソナタを初めて聴いて以来(ベルリン・フィルの安永徹さんが私の地元でこの曲を弾いたのだった)、その不思議な魅力を感じていたのだが、大学時代にオケで「シンフォニエッタ」を実際に演奏し、さらにその同時期プラハ国民劇場の来日公演でオペラ「イェヌーファ」の衝撃的な舞台に接したことによって、ヤナーチェクの音楽への思いは決定的なものとなった。

ベルリンに来てから、私のヤナーチェク体験はさらに広がった。なんといっても、日本ではまずめったに上演することのない彼の数々のユニークなオペラを、ほぼ全作品生で観ることができたのが大きかった。「イェヌーファ」「利口な女狐の物語」「マクロプロス事件」「カーチャ・カバノヴァ」「死者の家から」などなど、そのうちのいくつかは生涯忘れないであろう感動をもたらしてくれた。ピアノ曲もいいし、他には2曲の弦楽四重奏曲が別格のすばらしさだ。後者は両方とも晩年の作品なのだが、特に第2番「ないしょの手紙」は70歳を越えた老人の書いた音楽とは思えないほど、狂おしいまでの情熱に溢れている。強い酒を飲みながら聴くのに相応しい音楽、といったらちょっとキザだろうか^^;)。この「ないしょの手紙」をはじめ、ヤナーチェクの代表作の多くは、ある特定の女性からインスピレーションを受けて書かれているのが興味深い。

ヤナーチェクについて語りだすと止まらなくなるのでこの辺で一旦やめるとして^^;)、今週ラトルとベルリン・フィルがヤナーチェクの代表作のひとつ「シンフォニエッタ」を取り上げるというので、私はその初日を聴きに出かけた。


私がサイモン・ラトルに親しみを感じる理由の一つは、ベルリン・フィルの監督という超メジャーな立場にありながら、どちらかというとマイナーなヤナーチェクの音楽を比較的頻繁に取り上げてくれることである。一昨年はオペラ「イェヌーファ」を演奏会形式で取り上げたのだが、ベルリン・フィルがよくこの作品をやったと思う。

この「シンフォニエッタ」は彼の十八番の一曲らしく、若い頃から頻繁に取り組んでおり、バービンガム市響とはCDも出している。そういうわけで私の期待は膨らんだのだが、前半の2曲を終えて(すいませんがこちらの感想は省略します^^;)、ラトルが珍しく指揮棒を持たずに颯爽と冒頭のファンファーレを振り始めた瞬間から、私の期待は確信へと変わった。とにかく見ていて楽しくなってしまうほど、ラトルがこの曲へのめり込んでいるのがわかる。もちろん全曲暗譜。人は、自分が心から好きでしかも隅々まで把握しているものに取り組む時、こういう表情になるのかなあと思ったほどだった。3年前にチャールズ・マッケラスの指揮で聴いた時は、より巨視的なスケールで描いた演奏だったと記憶しているが(そちらもすばらしかった)、ラトルの演奏では細部へのこだわりも徹底しており、ヤナーチェク特有のあのしつこい動機が無限のニュアンスをたたえて響く。金管楽器の輝かしさ、木管の超絶技巧とおどけっぷり、モラビアの自然を感じさせる弦楽器の弱音等々。めったにやらない曲なのに、オケの反応のよさも光っていた。これほどの「シンフォニエッタ」は、もうそうそう聴けないかもしれない。一緒に聴いた友達と語りながら、感謝の気持ちいっぱいで帰途についた◎◎◎

Berliner Philharmoniker
Sir Simon Rattle Dirigent

Antonín Dvořák
Symphonie Nr. 7 d-Moll op. 70
Thomas Adès
Tevót (Uraufführung)
Leoš Janáček
Sinfonietta op. 60

ラトル/ヤナーチェク:シンフォニエッタ/TOCE-13381ラトル/ヤナーチェク:シンフォニエッタ/TOCE-13381
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by berlinHbf | 2007-02-23 18:42 | ベルリン音楽日記 | Trackback(1) | Comments(6)
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Tracked from 徒然 at 2007-04-13 23:03
タイトル : ヤナーチェク 〜 シンフォニエッタ/タラス・ブーリバ
 チェコの音楽といえばドヴォルザークとスメタナが圧倒的に有名で、ヤナーチェクの影が薄い気もしますが、個人的には好きです。  で、このCDはヴァーツラフ・ノイマン指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏です...more
Commented by waldtaube at 2007-03-01 03:56 x
お久しぶりです(メールどうもありがとうございます)。ヤナーチェクと聞くと出てこないわけにはいきません。確かにドヴォルザーク・スメタナの西欧的洗練とは違いますが、土俗的という一言では片付けられない、近代性・鋭い知性が発散していて、聴いていてインスパイアされる音楽なんですね。バルトークにも同様の刺激があるわけですが、構成的にはヤナーチェクは更に西欧の古典的フォルムを逸脱している気がします。演奏も一筋縄ではいかないのか、チューリヒで演奏された「マクロプロス」(P.Jordan)と「女狐」(A.Fischer)はどちらも大成功とは言いがたい出来でした。5月にミラノで行われる「イェヌーファ」に食指が動いているところです。
Commented by berlinHbf at 2007-03-01 08:36
>waldtaubeさん
かなり思いを込めて書いたこの文章に反応してくださり(笑)、どうもありがとうございます。waldtaubeさんもやはりヤナーチェクがお好きでしたか!

>近代性・鋭い知性が発散していて、聴いていてインスパイアされる音楽
この言葉にすごく共感します。私にとっては、心の奥底にある何かが刺激される音楽でもあります。

スカラ座の「イェヌーファ」、私は行けるべくもありませんが、もし聴かれましたらぜひ感想をお聞かせください。
ベルリンでは2002年から04年ぐらいにかけて、ヤナーチェクの新演出が異常なまでに続いて当方は狂喜乱舞していたのですが、それ以降は再演もあまり見られない状況です。やはり集客がネックなのでしょうか・・・
Commented by チャーリー432 at 2007-04-13 22:54 x
はじめまして

ヤナーチェク、田舎っぽさが魅力かもしれませんね。

それと、ラトルは良い指揮者ですね。好きです。
Commented by berlinHbf at 2007-04-15 07:56
>チャーリー432さん
こちらこそはじめまして!
よかったらヤナーチェクの他の作品もぜひ聞いてみてください。
2曲ある弦楽四重奏などいいですよ~
確かに田舎っぽさもありますし、非常に独自な音楽を書いた人だと思います。
Commented by チャーリー432 at 2007-04-15 18:06 x
「内緒の手紙」とかですね!
今度聴いてみたいと思います。

ピアノ曲なら「草蔭の小径にて」を聴いたことがあります。

もっと有名になっても良いのではないかと思うのですが、、、
Commented by berlinHbf at 2007-04-16 06:50
>チャーリー432さん
>「内緒の手紙」とかですね!
そうです。もう1曲の「クロイツェル・ソナタ」もいいですよ。私もヤナーチェクの音楽はもっと広く聞かれるようになってほしいと願っているのですが、実際はなかなか・・・
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