ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


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現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

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鉄橋の墓場 - 天使の降りた場所(14) -

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Yorckbrückenにて(10月12日)

この「天使の降りた場所」も、かれこれずいぶん長いシリーズになってきました。一体あといくつ書きたい場所があるのか数えてみたら、まだ8箇所もある。来月日本に帰るまでに何とか書き終えたいところですが、ちょっと微妙かもしれません。

さて今日は、西ベルリンに今も残る、ある特異な場所のことを書いてみたい。

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「ベルリン・天使の詩」で、こういうシーンがある。前回ご紹介したGleisdreieckのガード下に古い車が現れると、その運転手の記憶を通じて過去の追憶が始まる。ベルリンの現在の風景の合間に、戦争時の映像が効果的に挿入される。1986年当時、人々の戦争の記憶は今よりもずっと強いものだったに違いない。車の窓からの風景が移り変わる中で、わずか数秒だが、車が長い鉄橋の下をくぐるシーンがある。それが今回の舞台だ。

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クロイツベルクの西の端、SバーンのYorckstraßeの駅を降りると、約600メートルにも渡って鉄道の鉄橋が延々と続く通りが広がっている。その数はなんと30を越える。しかし、2本のSバーンと1本の長距離線を除いては現在もう使われていない。鉄橋の巨大な墓場のような、かなり異様な風景だ。

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この橋は通りの名前からYorckbrücken(Brückenは「橋」の複数形)と呼ばれている。とにかくここを歩いてみることにしよう。"3 JAHRE ICH LIEBE DICH (3 YEARS I LOVE YOU)"と落書きが書かれた橋から、ヨーク・ブリュッケンは始まる。

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これら無数の鉄橋は、ドイツの工業化発展の歴史と大きく関係がある。1838年、ベルリンのポツダム広場からポツダムまで開通したプロイセン最初の鉄道は、この橋の上を走った。そして19世紀後半、急激な工業発展の中で、この北側にポツダム駅、アンハルター駅という2つのターミナルを持った関係で、この付近には次々と線路が敷かれていった。貨物駅もできたので、鉄橋の数はどんどん増えていくことになる。

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もうすっかりさび付いているが、鉄橋とは思えないこの凝ったデザインの橋の支柱を眺めていると、19世紀後半のベルリンの勢いがしのばれる。

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しかし、この上を鉄道が通らなくなってから、かれこれ50年以上が経つ。よくもまあ、このままの状態でずっとほったらかしにされてきたものだと思う。

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すでに撤去された橋も、ごく一部だがある。

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橋の手前に今も残る廃墟は、鉄道が走っていた頃の詰所だろうか。

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この橋において最後にサビ止めの処理がなされたのは、1934年にさかのぼるという。

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そのようなサビだらけの橋が続く中、突如コンクリート製の新しい鉄橋が姿を現れるのでびっくりする。これはベルリン中央駅から南に延びる新線の線路。19世紀の橋の横に21世紀製の橋が平然と並ぶあたりがベルリンらしい^^;)。

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この下を走るバス(M19)の2階最前列からの眺めは、なかなか楽しい。

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この橋の骨組みをもって、600メートルに及ぶヨーク・ブリュッケンは終わる。

さて、前回と同じ問いかけになるが、この橋の廃墟はこれからどうなるのだろうか。

DB(ドイツ鉄道側)は橋の撤去をずっと主張していた。当然といえば当然の主張だろう。だが、共和国宮殿などの例を持ち出すまでもなく、こういう歴史ある建築物を壊そうとすると、ベルリンでは必ず反対する人が出てくる。ある人にとっては汚らしいだけの廃墟であっても、別の人にとっては「工業化時代の象徴」であり「西ベルリンのシンボルの一つ」というわけだ。Der Tagesspiegel紙は今年の3月、"Rostalgie in West-Berlin"のタイトルでこの橋のことを取り上げた。"Rost"とは「サビ」のこと。少し前にはやった「オスタルジー」ならぬ、「ロスタルジー」とシャレている。

この夏、ほぼ結論が出た。
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この橋の周辺は現在建設中のGleisdreieck公園の最南端にあたる。前回もご紹介したLoidlのプランによると、橋は改修され新しい公園にうまく組み込まれるようだ。この図でも確認できるように、緑地と緑地の間を結ぶ歩道橋として再利用されることになるのだろう。

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ヨーク・ブリュッケンの下を通る度に、これを壊してしまうのは忍びないような気がしていたので、よかったと思う。列車はもう走らないが、この橋が支え続けてきた記憶はこれからも受け継がれることになるのだから。

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by berlinHbf | 2006-10-22 02:20 | ベルリン天使の降りた場所 | Comments(6)
Commented by しゅり at 2006-10-22 11:08 x
マサトさん、こんにちは!
この橋の下ってもしかしてベルリンマラソンのコースですよね。
今年は私の住む富山ではベルリンマラソンの放送はなかったのですが
去年の放送の時に見てて、いくつもの橋の下を選手がくぐるので
いったいこれはどこなんだ????と
地図で調べていたらアンハルター駅の南のほうで
線路がいくつも書いてあったので納得してしまっていたのですが
線路として機能していないものだったのですね。
こういうものがあるって本当にベルリンらしい。
日本だととーっくの昔にあーっというまに壊されますよね。
しかし、整備されるとはいえきれいになる前に
旧アンハルター駅周辺は目に焼き付けないといけませんね。
Commented by mchn22lecker at 2006-10-22 20:53
こんにちは!
このシリーズいつも楽しみに見ています!

M19番のバスの2階席に乗るたびに、いつもヒヤヒヤしていました。
ちょうどこの通りは、バスがよくジャンプするので、いつかバスの天井と橋が衝突してしまうのではないかと・・・・・(笑
「橋がたくさんあるなぁ」とは思っていましたが、もう使われていない橋だったんですね!
歴史を支えてきた橋、公園への歩道橋としてまた活躍する日が来るのが楽しみです!
Commented by ぷりんつ・あるぶれひと at 2006-10-22 23:40 x
いや~、橋桁が神殿の柱風になっているなんて想像も出来ませんでした!

ここは昨年のベルリンマラソンではコースの一部でした。橋の下を中継車が通るたびに、電波状態が悪くなってました(笑)ベルリン天使の詩のロケ地でもあったのですね~♪
Commented by berlinHbf at 2006-10-23 09:08
>しゅりさん
>この橋の下ってもしかしてベルリンマラソンのコースですよね。
おっしゃる通りです!2年前に私の弟がこのマラソンに参加した時も、この橋の下で応援したので、よく覚えています。この長い橋の下を無数のランナーがくぐりぬける姿は、なかなか圧巻でしたよ。今年は野口さんが欠場してしまって残念でしたね。

>旧アンハルター駅周辺は目に焼き付けないといけませんね。
そうなんですよ。この周辺は戦前からの遺物が他にもたくさん転がっていそうなので、一度探検してみたいですね。
Commented by berlinHbf at 2006-10-23 09:19
>mchn22leckerさん
>このシリーズいつも楽しみに見ています!
なんだかマイナーな場所ばかりになってきましたが、読んでいただきありがとうございます。次回はさらに知られざる、でも歴史的にとても興味深い遺物を訪ねます。

M19は確かによくジャンプするかもしれないですね。
今度そのスリルを味わってみます(笑)
Commented by berlinHbf at 2006-10-23 09:23
>ぷりんつ・あるぶれひとさん
>橋桁が神殿の柱風になっているなんて
この橋げたは本当に立派ですよね。今でこそ廃墟ですが、風格さえ漂っていました。鉄道の黄金時代の遺物と言えるかもしれません。

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