ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005


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中村真人 (Masato)
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。


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現在のトップ画像は、ベルリン在住のイラストレーター、高田美穂子さんによるオリジナル作品です(詳しくはこちらより)

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コーミッシェ・オーパーの「ばらの騎士」新演出!

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Komische Operにて(4月3日)

ベルリンに3つあるオペラ劇場のひとつであるコーミッシェ・オーパーのプレミエ作品、リヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」の初日を先週日曜日に観ることができた。演出はこの劇場のインテンダントのアンドレアス・ホモキ、音楽監督はキリル・ペトレンコというベルリンではおなじみのコンビ。

「ばらの騎士」は私の大好きなオペラのひとつ。何しろオペラというものを生まれて初めて生で観たのが、かのカルロス・クライバー指揮ウィーン国立歌劇場の1994年の来日公演だっただけに、特別な思い入れがあるのだ。とんでもない贅沢な体験をしたと今でも思う。いきなり超弩級の舞台を観てしまったゆえに、その後「ばらの騎士」を観る時はいつでも、あの時の上演と比較してしまうという不幸(?)をも背負うことになってしまった。

この「ばらの騎士」が完成したのは1911年のこと。古きよきヨーロッパが終焉を迎え、第一次世界大戦を目前に控えた頃、リヒャルト・シュトラウスとホフマンスタールという2人の才人が、その150年前の宮廷華やかかりしウィーンを舞台に、過去へのノスタルジーを込めて作り上げた逸品だ。全体をつらぬくキーワードは、諦念、メランコリー、別れ、といったものになろうか(もしこのオペラに興味を持たれた方がいたら、玉木正之さんによるこちらのコラムがおすすめです)。

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さて、今回の舞台は白を基調とした簡素なもの。ステージの上がそのまま舞台なのではなく、舞台の上に巨大なボックス型の舞台装置があり、その中で演じられることになる。つまり、通常の舞台よりも狭いスペースの中で、歌手が歌い演じるわけで、室内劇(Kammerspiel)の雰囲気に近いと言ったらいいだろうか。ホモキがインタビューの中で語っていたが、今回の演出はこのオペラの「親密な会話コメディー」としての側面にこだわり、テキストを丁寧に読む作業を徹底させたらしい。それゆえ、劇場そのものが大きくないこともあって、通常は大編成のオーケストラもコントラバス4本と小さめの編成。しかし、「語り」が重要なこの作品においては、それが逆に功を奏したように思う。

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第1幕は時代背景に忠実ないわゆるロココ調。「意外にオーソドックスな演出なのかな」と思っていたら、2幕に入ると19世紀のサロン風の場所に舞台が移る。登場人物もその時代と思われる衣装を着ている中で、伯爵夫人のマルシャリンのみ最後まで同じスタイルの衣装で舞台に現れるのが印象的だった。

2幕の途中で、ゾフィーがオックス男爵との結婚を拒否し父親がキレる場面があるのだが、父親が机をどんとたたくその瞬間(だったか)に、舞台は傾いてしまう。3幕に入ると、舞台は一層傾いている。観ている側はそれにより、一つの時代が終わりに近付いていることを象徴的に実感させられる。

このことを示唆させるものは他にもあった。第3幕の前奏曲の最後、またオックス男爵が退場する場面で爆発音が鳴り響く。一瞬「花火か?」とも思ったがそうではなく、後でプログラムを読んで知ったところによると、第一次世界大戦の始まりを告げる大砲の音を表しているのだとか。「シュトラウスとホフマンスタールは、過去の時代と決別することの悲しみを描くことによって、同時に来るべき時の何かをも予感させた(ホモキ)」というのが、この演出の基本のコンセプトのようだ。

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オーケストラは、この「ばらの騎士」を初めて演奏するとは思えないほど、きびきびと引き締まったものだった。劇が進むにつれお客さんもそれに気付き、第3幕の始まりでペトレンコが登場するとついにブラボーの嵐。私はカルロス・クライバーの時を思い出した。クライマックスでの3重奏以降はまさに圧巻。それまで早めのテンポでぐいぐい音楽を引っ張ってきたペトレンコが、ここに入ってぐっとテンポを落とすと、音楽はうねりを上げながら圧倒的な頂点に向けて高まっていく。しかし叫びすぎることは決してない。今回の上演全体に言えることだが、オケと歌との響きのバランスのよさは特筆に値するものだった。この大詰めのクライマックスにおいても、完全にひとつの音楽として聴こえてきたのは、音楽監督ペトレンコの手腕によるものだろう。最後はオクタヴィアンとゾフィーの愛の2重唱。通常はこの2人によるハッピーエンドで終わるのだが、ホモキ演出ではひとつの時の終わりの象徴であるマルシャリンにスポットが当てられる(ここではネタは明かしません)。深い余韻を味わいつつ幕。

11年前の東京文化会館で、幸運にも生で体験することのできたカルロス・クライバーの「ばらの騎士」は比類のない舞台だった。音楽的な充実度だけで見たら、あれほど完成度の高い上演に出会うことは一生ないかもしれない。しかしその体験が逆に、私の中でこのオペラを楽しむ範囲を狭めてしまったと言えなくもなかった。

先週日曜日の夜、終演後の熱狂的なカーテンコールの中で、私は11年前のその「呪縛」からついに開放されたのを感じた(と言ったら大げさだが・・)。ウィーンの時のように国際的に際立った名声のある歌手がいるわけではないし、もともとオケの実力が飛び抜けている劇場でもないのだが、この日の上演には「アンサンブルの勝利」とでも言いたくなるようなチームとしての一体感があって、同時にプレミエならではの「最後はどうなるんだろう」というドキドキ感も味わうことができた。ホモキのインタビューによると、コーミッシェのメンバーは丁寧にテキストを読み解く作業を続けながら、このプレミエまでに8週間の稽古を積んだという(スター揃いの劇場だと5週間が普通らしい)。舞台に目をやると、自分と数年しか歳が変わらない、「黒髭危機一髪」の人形に似た(「ドイツ音楽紀行」のフンメルさん談)親しみのある風貌のペトレンコが、満面の笑みを浮かべてオケのメンバーに盛んに拍手を送っている。「ばらの騎士」という約100年前の作品が、自分と同じ時代を生きる人たちによって新しく生まれ変わり、そのプレミエの場に立ち会えたということに、私は興奮と喜びを感じたのだと思う。

すばらしいオペラの舞台は今シーズンすでにいくつか出会ったが、プロダクションの鮮度を考えると、第一に挙げるべきはコーミッシェ・オーパーのこの「ばらの騎士」かもしれない。機会のある方には、強力におすすめしたい。

今後の上演予定:4月8日、16日、22日、30日、5月10日、21日。

Musikalische Leitung... Kirill Petrenko
Inszenierung... Andreas Homoki
Bühnenbild... Frank Philipp Schlößmann
Kostüm... Gideon Davey
Lichtgestaltung... Franck Evin
Chöre... Robert Heimann
Kinderchor... Christoph Rosiny

Die Feldmarschallin Fürstin Werdenberg... Geraldine McGreevy
Der Baron Ochs auf Lerchenau... Jens Larsen
Octavian... Stella Doufexis
Herr von Faninal... Klaus Kuttler
Sophie... Brigitte Geller
Jungfer Marianne Leitmetzerin... Miriam Meyer
Valzacchi... Christoph Späth
Annina... Caren van Oijen
Ein Polizeikommissar... Tobias Hagge

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by berlinHbf | 2006-04-06 01:35 | ベルリン音楽日記 | Comments(10)
Commented by akberlin at 2006-04-06 19:44
ん~♪やっぱり見に行ってみたくなりました。
Commented by hummel_hummel at 2006-04-06 20:35
このホモキ演出良さそうですね。ペトレンコ指揮のR.シュトラウスも充実となると、これは観たいです!
マサトさんはクライバーの日本公演も聴かれたんですね(チケット高くなかったですか?)もう11年前の話になりますか。。
リンク&TBありがとうございました。
Commented by ねむこ at 2006-04-06 23:41 x
かなり気になっていたばらの騎士、やっぱり行こうかなあ~と検討中です。
私も実は11年前、東京文化会館でクライバー、ウィーン国立歌劇場公演を見ているのです。(一番安い席でしたけれど)
Commented by berlinHbf at 2006-04-07 09:25
>akberlinさん
ぜひぜひ!ズボン役(女性歌手が男性に扮すること)も出てくるので、宝塚とかがお好きだったら、なおさら楽しめますよ。音楽もすばらしいですし。
Commented by berlinHbf at 2006-04-07 09:35
>フンメルさん
>マサトさんはクライバーの日本公演も聴かれたんですね(チケット高く>なかったですか?)
一番安い席を求めて、その半年前に東京文化会館に徹夜して並んだのです(音楽のチケットでここまでやったのはこの時だけです)。そんなこんなで翌日何とかチケットは買えましたよ。一番安い席ではありませんでしたが・・
とにかくすごいフィーバーでした。
Commented by berlinHbf at 2006-04-07 09:51
>ねむこさん
はじめまして。あの時のクライバーを体験されていたのですか!
一番安い席だったとのことですが、ひょっとしてあの長い行列に一緒に並んでいた、なんてこともあったりして・・

このコミッシェの「ばらの騎士」ですが、クライバー以降に聴いた中では、最も満足できるものでした。機会があったらぜひ体験してみてください!
Commented by 楕円球 at 2006-04-10 13:40 x
フランス帰りです。

さて、クライバー、生でご覧になったのですね。うちでは母が2列目ど真ん中で見てきました。おかげでチケット獲得の電話をかけさせられて・・・(苦笑)。自分も見ておけばよかったです。クライバーが死んで、「これからはビフォー・クライバーとアフター・クライバーに区別される」(クライバーを生で見たことのある人とない人で区別される)と言われましたね。

でも、その歴史的名演のくびきを逃れる体験ができたことは素晴らしいと思います。
Commented by berlinHbf at 2006-04-11 16:15
>楕円球さん
フランスにご出張中だったのですね。お帰りなさい!
>うちでは母が2列目ど真ん中で見てきました
そうだったのですか!開演前、オケピットの前に行き、ウィーンフィルの人たちが楽器を鳴らしているのを見ているだけで心がときめいたのを思い出します。クライバーのスコアと指揮棒も目の前にありましたし。こんな前で聴ける人たちをうらやましく思ったものです。私の席は最上階だったものの、一番目の列だったので、クライバーの指揮はよく見ることができました。

ウン万円払って観たクライバーの「ばら」は極上の体験でしたが、10ユーロちょっとでコミッシェの新演出が観られるのもすばらしいことだとこの前思いました。
Commented by 焼きそうせいじ at 2006-04-29 07:00 x
この素晴らしい報告を読んで、私も5月にベルリンに行く際に見ようと思ったのですが…全席売り切れ!コーミッシェ・オーパーでこんなことってあるんでしょうか。ちなみに、前に紹介してくださった「地下鉄1号線」も同じく売り切れです。ベルリンの音楽・演劇は供給過剰とも言われますが、やはり良いものに人は集まりますね。どちらも大スターが出ているわけでもないのに。
Commented by berlinHbf at 2006-04-30 06:15
>焼きそうせいじさん
何と売り切れですか!これはコミッシェでは、かなり珍しいことだと思います。ただ、当日チケットが出てくることもありますから、Abendkasseに並ばれてみてはいかがでしょう。「地下鉄1号線」は、先日ついに観て来ましたが、焼きそうせいじさんが以前おっしゃっていたように、「あの時代の雰囲気をそのままパッキングしたような作品」でしたよ。実は明日30日で、1986年のプレミエからちょうど20周年を迎えるそうです。ベルリン発のミュージカルでこれだけのロングランは他にないでしょう。いつかぜひご覧になってください。

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